中国の半導体製造は、米国の輸出規制により、技術的に10年は遅れる可能性も報じられている。だがそんな中、中国最大のチップメーカーであるSMICは昨年、7nmのプロセッサをリリースして周囲を驚かせた。そして現在、同社が5nmチップの製造を目指しており、そのための半導体生産ラインを上海に建造中である事が、Financial Timesによって報じられている。
加えて、SMICは7nmプロセスの生産能力も増強している事も、関係者の話から明らかになった。
中国のテクノロジー大手に対する措置は、Donald Trump氏が大統領在職当時、Huaweiのような企業が政府の企業リストに追加されたことで始まった。中国政府の解決策は、国産チップ製造に全力を注ぐことだった。現在のBiden政権は、中国がチップ製造用の最新リソグラフィ機械にアクセスすることを制限することで、さらに締め付けを強化した。
SMICは、Huaweiの子会社であるHiSiliconが設計した新しい5nmチップをリリースしようとしていると言われている。これらのチップは、上海の2つの新工場で生産される予定だ。この計画に詳しい2人の関係者によると、SMICは米国製とオランダ製の既存の設備を使う事で、これを実現しようとしているようで、今のところ裏から新たな設備の導入はないようだ。このチップは、まずフラッグシップスマートフォンに搭載される予定だが、SMICは5nmがうまくいけば、これを更に拡大し、サーバーチップやAIアクセラレーターを5nmで生産することで、NVIDIA依存の現状から脱却し、Huawei独自設計のAIチップ「Ascend 920」の製造も視野に入れていると、上記の関係者は述べている。リソグラフィ技術企業と同様、NVIDIAはAIアクセラレータの大半を中国に輸出することを禁じられている。
現在中国のチップファウンドリーは、深紫外リソグラフィ(DUV)装置でしのいでいる。昨年末までは、中国の企業はASMLのような企業からDUVリソグラフィ装置を購入することが可能だった。7nmプロセスよりも小さなノード用に設計された、より高度な極端紫外線リソグラフィ(EUV)装置については、既に輸入が禁止されていた。そうした現状にもかかわらず、SMICは2023年にKirin 9000Sを製造することに成功した。9000Sは、台湾のTSMCが製造したチップほど高性能ではなかったが、中国の国産Arm設計にとっては大きな飛躍だった。
ただし、問題もないわけではない。情報筋がFinancial Timesに語ったところによると、SMICは5nmノードでTSMCより40~50%高い料金を請求する必要があるという。更に設備が最適でないため、SMICのリソグラフィーの回避策を使った5nmチップの歩留まりは、TSMCのおよそ3分の1である。
「米国とその同盟国が先端チップ製造装置の輸出規制を強化したことで、SMICは生産拡大に向けてより大きな障害に直面している」と同社に近い人物はFinancial Timesに語っている。
Source
- Financial Times: China close to shipping 5 nm chips, despite Western curbs
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