Huaweiは今でこそ米国政府の輸出規制により最新の半導体技術にアクセス出来ずにいるが、2020年当時はそういったこともなく、TSMCのN5(5nmクラス)プロセス技術を使用し、自社で設計したスマートフォン向けチップを製造する事が出来ていた。
「HiSilicon Kirin 9000」と呼ばれたこれは、153億個のトランジスタを搭載したスマートフォン用アプリケーションプロセッサであり、相応の性能を誇る物だった。だがその後、米国政府の規制によってTSMCの製造に頼ることが出来なくなったHuaweiは、その後中国国内の企業と協力し、2023年には、Kirin 9000の中国製造バージョンである「Kirin 9000S」の開発に成功した事を発表している。これはSMICの第2世代7nmクラスプロセス技術を使用して製造された。Huaweiはこの新たなチップがKirin 9000と同レベルの物になると主張していたが果たしてその主張は正しい物なのか?Nanoreview.netが行った結果では、この主張はどうやら誇張に過ぎないことが明らかになっている。
新しいHuawei HiSilicon Kirin 9000Sプロセッサは、一般的なCPUワークロードにおいては先代モデルに追いつき、時にはそれを上回ることができるが、パワー効率とグラフィックスワークロードの面では、3年以上前のKirin 9000よりも大幅に劣っているようだ。とはいえ、それは当然のことだろう。5nmプロセッサを7nm プロセッサが上回ることためには、パワー効率とコストを犠牲する必要があるからだ。
Nanoreview.netは、AnTuTu 10、Geekbench 6、3DMark Wild Life、および多数のモバイルゲームを含む一般的なベンチマークで、元のKirin 9000とKirin 9000Sの両方をテストした。HuaweiのHiSilicon Kirin 9000Sは、AnTuTu 10で元のKirin 9000と同様の総合スコア(約90万ポイント)を示したが、GPUパフォーマンスでは先代モデルよりも33%劣っていた。
だが驚くべきことに、クロック数が低くコア数が同じにもかかわらず、Kirin 9000SはシングルスレッドのGeekbench 6ワークロードでは4%速く、マルチスレッドのGeekbench 6ワークロードで17%速かった。Kirin 9000は、3DMark Wild LifeでKirin 9000Sよりも20%速い。これは、759MHzで動作する24クラスタのArm Mali-G78(1536ストリームプロセッサ)と同等の速度のGPUを構築できなかったためである可能性が高い。
SMICの第2世代7nm技術は、TSMCのN5生産ノードよりも劣るため、Kirin 9000SはKirin 9000よりも明らかに効率が低い。したがって、新しいSoCを搭載したスマートフォンは、より大容量のバッテリーを搭載しない限り、バッテリー寿命が短くなると予想される。
新しいHiSilicon Kirin 9000Sは、元となったプロセッサよりも明らかに遅いが、スマートフォン用のSoCとしては悪いものではない。最終的にはHuaweiが2020年の製品を上回るチップを開発するかもしれないが、Apple、MediaTek、Qualcommなどの競合他社の製品と同じ土俵に立つには何年もかかるだろう。
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