Huaweiは、中国国内市場向けの新型ノートパソコンQingyun L540を発表したが、これに搭載されている「Kirin 9006C」と名付けられたチップが、全く新しい5nmチップであることが判明した。
情報によると、このKirin 9006Cには、4つのCortex A77コアと4つのCortex A55コアが含まれる。Cortex A77コアモジュールは、シングルコアが最大3.13GHzで動作し、残りのコアは2.54GHzで動作する。一方、Cortex A55複合コアは最大2.05GHzのクロック周波数で動作する。このSoCは、Mali-G78 MP22統合GPUも搭載している。
Huweiはこの秋、新しい7nmプロセッサーを搭載した最初のデバイスであるMate 60スマートフォンを発表した。Kirin 9000SはQualcommやMediaTekの最新チップには及ばないが、それでもSMICが自由に使えるハードウェアで製造するとは誰も予想していなかった。
Huaweiは、Kirin 9006Cが米国の制裁にもかかわらず実現した、新たなマイルストーンと位置付けている。さらに、同社はこのチップセットを今後さらに多くのデバイスに搭載する可能性がある。製造をどこに依頼したのかは不明だが、恐らくSMICだろう。とすれば、古い設計ではやっていけない他の中国企業のためにチップを製造することもできる。
SMICが5nmの壁を突破する可能性があることは、まったく驚くべきことではない。業界の根強い噂によると、SMICは米国の制裁によって課された制限をさらに超えようとしているという。「SMICはDUVによる5nmプロセスを準備しており、フォトマスクの使用量はさらに増えると予想される」と半導体業界の専門家は最近The Elecに語っている。
匿名の情報なのでその正確性は不明だが、DUVリソグラフィのみに依存するSMICの5nm技術が言及されたのはこれが初めてではない。SMICは2020年後半に7nm以降の製造プロセスについて一時言及し、2022年9月には業界専門家がSMICの5nmへの意欲をさらに強調している。どちらのコメントも、SMICがかなり以前からDUVのみの5nmノードに取り組んできたことを示している。この技術はもう完成しているかもしれないが、まだ独自の確証はない。
SMICは、5nmプロセッサーの製造に使用できる可能性のあるチップ製造ツールを保有している。ASML Twinscan NXT:2000iの解像度は38nm以下であり、ダブルパターニングリソグラフィ技術を用いた7nmクラスの量産には十分である。しかし、5nmクラスのプロセス技術では、より微細な解像度が必要となる。チップメーカーは、トリプルパターニング、あるいはクアドラプル・パターニングを使用して製造することができる。このリソグラフィ技術では、複雑なパターンを複数の単純なパターンに分割し、それらを順次プリントすることで、より高い精度とディテールを実現する。マルチパターニングは、歩留まりやウェーハ1枚当たりのチップ数に影響するトリッキーなプロセスであるため、チップコストへの影響から、通常は制限されてきた。
SMICが5nmクラスの技術でチップの量産を開始したかどうかは定かではない。一般的に米中間の緊張、特にHuaweiとSMICに対する抑制を考えると、両社が実際の技術力を完全に開示する可能性は低い。一方では、米国の取り締まりにもかかわらず、5nmクラスのチップを生産することは格調高いことであり、他方では、HuaweiもSMICも、パートナーやツール・サプライヤー(あるいは設備や実際のチップの入手方法)が米国やその同盟国に発見されることを望んでいない。
だが特に、これがオリジナルのKirin 9000と大きな違いがないことは特筆に値するだろう。これにより、Huaweiは実質的に2020年の時点に戻ることになる。オリジナルのKirin 9000はTSMCによって製造されていたのだ。
現在のような緊張が高まる前は、TSMCは中国のハイエンド・チップ・ニーズのほとんどを供給していた。TSMCは台湾にあるとはいえ、米国の技術に依存しており、ワシントンの輸出規制を遵守しなければならない。中国政府は国内チップ製造に再注力することで技術禁輸に対応したが、米国は2022年に極端紫外線(EUV)リソグラフィ装置の販売を制限し、中国が世代の古い深紫外リソグラフィ(DUV)技術のみを利用できるようにしたことで、中国の足かせはさらに大きくなった。そんな中での5nmチップの実現は驚くべき事だろう。
とはいえ、こうした進歩にもかかわらず、中国のハイテク部門はまだ危機を脱していない。5nmでチップを製造するためにDUVハードウェアを使用することは、複雑で高価なプロセスであると言われており、このハードウェアでさえいつまでも利用できるわけではない。米国は最近、中国へのリソグラフィー販売を停止する計画を加速させるようオランダ政府に圧力をかけた。その結果、オランダに本社を置くASMLは、市場をリードするDUV装置を2023年末までしか中国に販売できないことになった。
中国は独自にEUVリソグラフィ装置に変わる粒子加速器を使った半導体製造装置を開発しているとも言われている。中国がいつ3nmチップに進出できるかは不明だが、その歩みを止めるのは難しいかもしれない。
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