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Huaweiの自社製新チップは米中間のハイテク情勢にどのような影響を及ぼすか

最近発表された中国Huaweiのスマートフォン「Mate 60 Pro」は、政治、経済、技術の各分野に渡る議論の渦を巻き起こした。それは、このデバイスに使われている技術が中国国内で開発された物に外ならず、半導体技術で急成長を見せる中国の実力を示すもので、業界関係者は米中技術冷戦の最中に重要なマイルストーンとなる物であると主張する者もいる。

Huaweiは2020年に米国からブラックリストに掲載され、米国の最先端チップ技術へのアクセスを事実上禁止されて以来、秘密裏に様々な開発を行ってきたと見られる。先日も、チップ製造のために半導体工場の建造に多額の資金を投入していることが報じられている。

今回同社が発売した「Mate 60 Pro」は、既存のリソースを利用し、チップは中国の大手ファウンドリーであるSemiconductor Manufacturing International Corp(SMIC)によって製造されている。

カナダを拠点とする半導体調査会社TechInsightsによると、これは中国のファウンドリーにとって重要な進歩であり、「中国製設計・製造のマイルストーン」となることが期待されている。しかし、HuaweiもSMICもこの進展については珍しく大げさに主張することもなく、沈黙を保っている。

民族主義的感情の高まり

今回の発表とその核となるチップは、中国のハイテク産業にとって分岐点となる可能性がある。しかし、アナリストは、これを中国の決定的勝利と解釈するのは時期尚早だと注意を促している。

中国国内では、Mate 60 Proは愛国的な熱狂をもって迎えられている。ネットユーザーはこのスマートフォンを、米国の制裁に直面する中国の技術的な回復力の象徴として称賛している。この熱狂は単なるデジタルなものではなく、消費者の行動にも影響を与えている。Mate 60 Proの6,999元(約140,000円)という小売価格にもかかわらず、売上は順調な伸びを見せており、SMICと関連企業の株価は急騰し、香港では過去1週間で約5%の上昇を記録した。

政府の沈黙と業界の憶測

中国の国営メディアは、米国の規制に対する勝利としてこのスマートフォンの誕生を宣伝しているが、Huaweiも北京政府も、技術的な詳細の開示には慎重である。デバイスの内部を論じるいくつかの分解記事は、不思議なことに中国のソーシャルメディア・プラットフォームから削除されている。

TechInsightsのDan Hutcheson副会長は、このデバイスの成功が、中国のハイテク産業に対する「現在よりもさらに大きな制限」を引き起こす可能性があると警告している。現在、中国は次世代チップ製造に不可欠な、オランダのサプライヤーASMLの先進的な極端紫外線(EUV)リソグラフィツールの入手を禁止されている。

新しいチップは、中国における「現在よりもさらに大きな制限」を引き起こす可能性がある。この見解は、調査機関Gavekal Dragonomicsのアナリスト、Tilly Zhang氏も同様で、同氏は、このチップは米国を貶めるものではあるが、”現在の技術水準からはまだ数年遅れている”と述べている。

Kirin 9000sはSMICの新しい7nm技術を採用した最初のプロセッサーであるが、世界の最先端ファウンドリは、早ければ今年中にもiPhone 15 Proにて3nmチップをリリースすると見られている。現在の基準で言えば、AndroidとiOSの世界の最新チップは現在4nmプロセスだ。Androidも早ければ2024年第1四半期に新チップを搭載した新端末が発売される可能性が高い。

北京がこの技術的飛躍を祝う一方で、ワシントンは情報収集に躍起だ。SCMPの報道によると、Jake Sullivan米国家安全保障顧問は最近、この件に関してワシントンの沈黙を破り、米政府はフHuaweiの新型チップの「正確な構成」を理解することを切望していると述べたという。

Sullivan氏はホワイトハウスでのブリーフィングで、米国は技術制限を国家安全保障上の理由のみによって課すという方針を維持すべきであり、商業的分離という広範な問題については考慮すべきではないと主張した。

米国はまた、制裁の効果について、国内での対立に取り組まなければならないかもしれない。QualcommやNVIDIAのような米国企業は、厳格な規制が米国の商業的利益を損なう一方で、技術的自立を目指す中国に不用意に力を与えてきたと主張し、制裁の縮小を主張するかもしれない。

地政学的な大きな意味合い

Mate 60 Proの登場は、地政学的に重要な意味を持つ。TF International SecuritiesのアナリストMing-Chi Kuo氏は、Huaweiは発売から1年以内に少なくとも1,200万台を販売する可能性があり、Appleの次期iPhone 15の推定販売台数9,000万台には遠く及ばないと見ている。Mate 60 Proは、HuaweiがAppleやSamsungとしのぎを削っていた黄金時代に戻ることはないだろうが、紛れもなく爪痕を残す物だ。

ただし、もちろんこれにより影響を受ける企業もある。それがQualcommだ。米国からの貿易制裁にもかかわらず、Huaweiは依然としてQualcommの最大顧客の1社であり、2022年には2,300万~2,500万ユニット、2023年には4,000万~4,200万ユニットを購入している。Kuo氏によれば、Huaweiは2024年にKiring製チップセットを完全に採用すると言われており、Qualcommの来年の出荷台数は約5,000万~6,000万台減少し、2024年全体の収益源に大きな打撃を与えることになる。

試算ではあるが、これらの出荷の1つ1つがSnapdragon 8 Gen 3として、SoCあたりのコストが180ドルであると仮定すると、Qualcommは来年108億ドルの収益を失う可能性がある。Huaweiが来年、Kirin 9000Sをより多くの中国ブランドに提供する意向があるかどうかは不明だが、もし提供するのであれば、Qualcommの自社製品よりも低価格になる可能性が高い。

減少するチップセットの売上に対抗するため、Qualcommは早ければ2023年第4四半期にも、この地域での強力な市場シェアを維持するために価格競争を開始する可能性が高いとKuo氏は報告しているが、それは年間利益を犠牲にすることになる。

専門家は、ワシントンは慎重に行動しなければならないと指摘している。一歩間違えれば、技術制裁の実効性が損なわれるだけでなく、世界のハイテク政治の複雑な網の目の中で、対中政策の見直しが必要になるかもしれない。

世界が注目する中、HuaweiのMate 60 Proはスマートフォン以上の存在となった。それはシンボルであり、声明であり、そしておそらく激化し続ける米中ハイテク戦争で何が起こるかの前触れになるものであるかも知れない。


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