TSMCは2022年第4四半期の決算説明会において、同社の最先端プロセスの今後の見通しについて、CEOのC. C. Wei氏がより詳細な説明を行っている。
まずWei氏は、N3のHVM(High Volume Manufacturing)を予定通り開始したことを明らかにし、これまでのところ歩留まりは良好であると述べている。しかし、今年の後半には、需要が供給を上回ると予想している。というのも、他のPC業界の予測と同じように、今年はスタートが遅く、後半に盛り上がってくるような気がするとのことだ。そうなると、2023年の同社のウェハ収益に占めるN3の貢献度は一桁にとどまる。しかし、HPCやスマートフォン向けをターゲットにした生産は、後半に本格化するという。
まだ始まったばかりだが、Wei氏はN3がN5よりも利益を生むと予想しているという。以前Wei氏は、数年後にすべての資金が集まれば、N3は1兆5000億円以上の価値になると予想していると語っていた。
今のところ、この最先端プロセスの顧客は、TSMCの過去の事例から見るに、Appleだけだろうと予想される。したがって、AnandTechが指摘するように、少なくとも短期的には、AppleのビジネスがN3の採用を測る唯一の方法となる。Appleは、9月に予定されているiPhone 15に搭載する次期SoC「A17」に活用すると見られている。また、M2 ProとMaxにN3を採用すると思われていたが、それは実現しなかった。理由は不明だが、TSMCからの遅延が原因だった可能性がある。
今後、N3はTSMCにとって金のなる木になるはずだ。N5が2020年に立ち上げられたときよりも、今年はそこから多くの収入を得られると予想しているという。1桁のパーセンテージでも、数千億円だ。まずはベースラインであるN3製品からスタートし、N3Eへと迅速に移行していくことになる。N3Eノードは、密度はそれほど高くないが、設計はよりシンプルである。N3では25層のEUVを使用するが、N3Eでは19層しか用いない。そのため、生産が容易で、顧客にとって安価になる。TSMCの3nmプロセスは、当初はAppleだけが採用することになりそうだが、今年の後半にN3Eが稼働すれば、AMD、Intel、Qualcommなどの顧客が採用する事が予想される。
N3 (N5比較) | N3E (N5比較) | |
---|---|---|
消費電力 | -25~-30% | -34% |
パフォーマンス | +10~+15% | +18% |
面積 削減率(%) ロジック密度 | 0.58倍 -42% 1.7倍 | 0.625倍 -37.5% 1.6倍 |
SRAMセル サイズ | 0.0199µm² (N5比で-5%) | 0.021µm²(N5と同じ) |
大量 生産 | 2022年後半 | 2023 年下半期 |
TSMCはこれら需要に対応するため、今年320億ドルから360億ドルの設備投資を行う予定とのことだ。この巨額の投資の70%以上は、7nm以下の先端ノードに費やされることになる。2nmのNano Sheet Gate All Around(GAA)トランジスタに移行するのは2025年頃と予想されており、N3が当面の間、同社の主要な先端ノードになるだろう。
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