オープンソースの命令セット・アーキテクチャ(ISA)として設計された「RISC-V」は、Arm社独自のISAに対抗するもので、スマートフォンから高度なAIプロセッサーまで、さまざまなハイテク機器に採用されている。RISC-Vはカリフォルニア大学バークレー校の革新的な研究室から生まれ、その開発はスイスの非営利団体の保護下に置かれ、オープンソースとしての性質を維持している。
オープンソースということは、ライセンスを遵守する範囲であれば自由に使用できるものだが、Reutersの報道によると、一部の米国議員は中国企業に対してRISC-Vを規制すべきと考えているようだ。
「CCP(中国共産党)はRISC-Vを悪用して、チップ設計に必要な知的財産の米国支配を回避しようとしている。米国人は、米国の輸出管理法を低下させるようなPRCの技術移転戦略を支援すべきではない」と、下院外交委員会のMichael McCaul委員長は声明を発表した。McCaul氏は、”米国の輸出管理法を低下させるのに役立つ技術移転戦略”であるとして、輸出規則を変更するよう求めた。
Marco Rubio上院議員は、「中国共産党は、われわれの制裁をかわし、チップ産業を成長させるために、オープンソースのチップアーキテクチャを開発している」と、厳しく非難している。
Rubio上院議員とMark Warner上院議員は、米ハイテク企業と中国企業とのRISC-V技術提携を制限するよう米政府に要請した。彼らは、中国がこの共同技術を軍事的・戦略的優位のために悪用する可能性を恐れており、国家安全保障を脅かしていると主張している。
RISC-Vの認知度や重要性は日に日に増しており、数多くの東西両方の企業がこの技術の開発を進めている。中国のハイテク企業であるHuaweiは、RISC-Vを自社のチップ開発の基礎と位置づけており、一方、米国では、QualcommやGoogleといったハイテク大手がRISC-Vの可能性に賭けている。それもこれも、Armの一強を打ち破るためだ。
そうした中、今回の米国議員による制裁の提案はハイテク業界内で懸念を呼ぶものである。この制約が実施されれば、米中間のオープンな技術標準に関する協力関係が危うくなる可能性がある。これは、チップ独立を目指す中国の野心に難題をもたらし、より優れた安価なチップを求める世界市場の勢いを削ぐことにもなりかねない。
潜在的な制限の大きさは、RISC-Vを使用している新興企業SiFive社のJack Kang氏の声明における「とてつもない悲劇」との言葉が的を射ているだろう。「インターネットでの活動を禁止されるようなものだ。テクノロジー、リーダーシップ、イノベーション、企業や雇用の創出という点で、大きな過ちとなるだろう」。彼はこのような制限を、インターネットのデジタル世界から米国のハイテク企業を締め出すことと同じだと考えている。その影響は単なるビジネス指標にとどまらず、世界の技術革新とリーダーシップにより大きな影響を及ぼすことを示唆している。
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