米国と中国の間で進行中の技術的な対立において、チップ技術の覇権争いが重要な焦点となっている。高度なマイクロチップの製造は、経済的・軍事的な優位性を確保するために不可欠であり、そのためワシントンは、中国が重要なマイクロチップ設計ツールにアクセスするのをコントロールしようとしている。
Joe Biden米大統領は昨年10月、中国による米国製ハイエンド・コンピューター・チップへのアクセスを明確に遮断することを決定し、かなり大胆な一歩を踏み出した。AI技術の輸出に関する法律も強化されたが、これが逆に中国企業が規則を回避するための独自チップ開発を生み出している。
そしてここにまた、シリコンバレーのベテラン・ソフトウェア幹部が設立した中国の新興企業、SEIDAと言う新たな挑戦者が現れた。
Reutersによると、SEIDAのCEOであるLiguo “Recoo” Zhang氏と他の3人の中国出身の同僚は、OPC(Optical Proximity Correction)技術の海外独占を打破することを目指し、Siemens AGの米国部門であるSiemens EDAを去ったとのことだ。
OPCツールは、人工知能や量子コンピューティングのような新技術に不可欠な先進チップの設計に欠かせない。SEIDAの大胆な売り込みは、中国軍との関係が疑われる中国の大手マイクロチップ・メーカー、Semiconductor Manufacturing International Corp(SMIC)など、中国の有力投資家を惹きつけた。
規制をかいくぐるために進化するビジネス
「海外の独占を打破する」というSEIDAの目的は、太平洋の両側から監視の目を向けられ、規制の遵守や知的財産権侵害の可能性について疑問を投げかけられている。
同社の最高執行責任者(COO)であるPeilun “Allen” Chang氏はReutersの電子メールに対し、同社の事業計画は継続的に進化していると述べるとともに、米国の規制がZhang氏らがSiemens EDAを退職するきっかけとなったことを明らかにした。
さらにSEIDAは、知的財産権の侵害を避けるための厳格な審査プロセスを重視し、米国と中国の両方の規則を遵守していると主張している。OPC技術が複雑であることから、SEIDAがSiemens EDAや他の企業の専有知識を利用しているかどうかは現時点では確認できないが、SEIDAやその幹部が不正行為で非難されることはない。
中国のチップへの野心
米中両国がチップ技術の覇権を争う中、原材料、設計、組み立てにまたがるこの産業の相互関連性は、冷戦時代とは異なり、ワシントンが中国を経済的に孤立させるという難題を突きつけている。
Reutersによると、チップ設計技術では米国が依然としてリードしているものの、製造はアジア、特に韓国と台湾で行われている。最近承認された CHIPSおよび科学法は、530億ドルを割り当て、国内のチップ生産を促進することを目的としている。
中国もまた、「千の才能」のようなプログラムや多額の政府投資を通じて、先進的なチップを積極的に推進している。専門家によれば、SEIDAの例は、中国企業が海外で得た専門知識を活用して国内産業を強化するもうひとつの例だという。
しかし、中国外務省の報道官はそうではないとし、中国の技術進歩は “窃盗や強盗の結果”ではなく、”中国人の創意工夫と努力の結果”であると強調した。
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