一人で過ごすことは、多くの人に恐怖を誘発するものであり、それは理解できることだ。しかし同時に、孤独と寂しさの違いも誤解されがちである。
私は心理学者として、孤独(人と関わらずに一人で過ごす時間)について研究している。この研究を始めたのは10年以上前ですが、それまでは、若者の一人の時間に関する調査結果では、一人でいると気分が落ち込むことが多いということが指摘されていた。
ソーシャルメディアやテレビ、音楽などで、私たちは一般的に、幸福とは興奮や熱狂、活力であるとイメージしている。そのような観点から、孤独(solitude)はしばしば寂しさ(loneliness)と誤解される。
心理学では、研究者は寂しさを、私たちが望むような社会的なつながりや人間関係がない、あるいは得られないときに経験する苦痛な感覚と定義している。だが孤独は違う。
孤独の定義は人それぞれかも知れないが、興味深いのは、多くの人にとって、孤独であることは必ずしも周囲に誰もいないことを意味しないということだ。賑やかなカフェでお茶を飲んだり、公園で本を読んだり、多くの人が公共の場で孤独を感じることができるのだ。私の研究によると、自分のために時間を使うことは、日々の気分に良い影響を与える可能性があるようだ。
仕事でトラブルがあったり、思い通りにいかなかったり、無理をしすぎて肩身の狭い思いをしたことがある人は少なくないだろう。そんなとき、自分のための時間、つまり孤独な時間を持つことを学ぶことで、こうした気持ちに対処できるかもしれないということが分かった。
孤独から何を得ることができるのだろうか
私は一連の実験で、学部生を部屋に招き、静かに自分自身と向き合ってもらった。ある研究では、学生たちのリュックや機器を取り上げて、考えごとをするように指示した。
たった15分、一人になっただけで、参加者が感じていた不安や興奮といった強い感情が低下することが判明した。つまり、孤独は人の興奮レベルを下げる作用があり、イライラしたり、興奮したり、怒ったりするような場面で有効であると結論づけた。
多くの人は、内向的な人だけが孤独を楽しむことができると考えるかも知れない。しかし、内向的な人は一人でいることを好むかもしれないのは事実だが、孤独から恩恵を受けることができるのは彼らだけではない。
世界中の18,000人以上の成人を対象とした調査では、半数以上が休息のために取り組む重要な活動の1つとして「1人になる事」に投票している。そのため、あなたが外向的な人であっても、これを気にせず、1人の時間をとって気持ちを落ち着かせることが出来る。
自分の考えと向き合うことは、難しいことだ
一人で過ごすことの難しさは、時に退屈で寂しくなってしまうことにある。
多くの人は、座って考え事をするのは難しく、何かすることがあったほうがいいと考えている。しかし、無理に何もしないで座っていると、一人の時間が楽しくなくなることがある。そこで、一人の時間には、何かアクティビティがあったほうがいいかも知れない。
私の研究では、参加者に何もしないか、何百本ものゴルフ鉛筆を箱に分類することに時間を費やすかを選択させた。10分間一人になってもらうと、ほとんどの参加者が鉛筆の仕分けを選んだ。このような活動は、ほとんどの人がつまらないと思うだろうと思っていた。しかし、退屈な作業を選択するのは、精神的空間を占める他人がいないときに忙しくしていたいという欲求からきているのだ。
だから、もしあなたが一人の時間があるたびにデバイスでスクロールしていることに気づいたら、これはよくあることなのだ。自分に厳しくしないで欲しい。多くの人は、ストレスや退屈に対処するためにスクロールする。また、スーパーに買い物に行ったり、洗濯をしたりと、日常の家事をするために一人で過ごすのが好きな人もいる。これは有効な孤独の時間だ。
一人で楽しく活動する
しかし、興味深いことに、映画館やレストランでの食事など、一人で楽しむことを敬遠する人が少なくない。これは、友人や親しい人と一緒にするものというイメージが強いため、一人で行動することで、判断力や気後れしてしまうからかも知れない。一人旅も、特に女性にとっては不安な行動のひとつだ。
しかし、1人になることの重要な利点は、冷静さを見つける機会であり、何をするか、どうするかを自由に選択できることだ。
私は孤独を研究する中で、1人でいる時間の中でこうした楽しいアクティビティに挑戦し、むしろ解放される経験をした。他の女性も同じような経験をしており、特に旅行先で、力を得て解放された気分になったそうだ。
孤独への恐怖を克服するためには、その利点を認識し、孤独を「起こるもの」ではなく「前向きな選択」としてとらえる必要がある。一人旅はちょっとハードルが高いかも知れないが、忙しいスケジュールの合間を縫って、少量の孤独を味わうことは、あなたにとって必要なことかも知れない。
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