市場調査会社Omdiaの最新分析によると、AI特需による高帯域幅メモリ(HBM)需要が後押しし、SK hynixは2023年第3四半期にDRAMセクターで35%の市場シェアを達成したとのことだ。AI時代におけるHBMの重要性が高まる中、SK hynixとしてはその波に上手く乗り、同社の市場シェア新記録を達成している。
OmdiaのシニアリサーチャーであるJung Sung-kong氏は、2023年11月23日にソウルの江南区COEXコンベンションセンターで開催されたOmdia Korea Conference 2023で、「AI成長から大きな恩恵を受ける業界の一つがDRAMである」と述べ、DRAM業界の今後の大きな変化を予測している。
Jung氏は、生成AIの影響によりAIサーバーの割合が増加しており、中長期的にAI需要が続くと予想されると指摘した。DRAMのAI学習における役割の増大も、需要の増加につながっている。特に、AIメモリの主要な焦点となっているHBMの成長が顕著である。
データセンターのGPUは、AIモデルのトレーニングやその他の関連タスクに使用され、これまで以上に多くのVRAMを必要としている。例えば、AMDの2020年のRadeon Instinct MI100は32GBのHBM2を搭載し、2021年のMI200は64GBのHBM2eを搭載していた。同社の最新のMI300Xは192GBのHBM3を搭載し、NVIDIAのH200も141GBのHBM3Eを搭載している。
DRAM市場の年間成長率は、今年から2027年まで21%と予測されているが、上記の通りAIアクセラレータとして使われる主要製品には全てHBMが用いられており、HBM市場は52%と急上昇すると予想されている。HBMのDRAM市場収益に占めるシェアは、今年10%を超え、2027年には20%に近づくとされている。
Jung氏は、「主要なグローバルIT企業がHBMを求めて列をなしている。HBMメーカーが来年の生産能力を2倍以上に増やす計画であっても、52週に及ぶバックオーダーの需要を満たすには不十分であるようだ」と述べている。
HBMは標準製品の5〜7倍の価格であり、交換サイクルも1〜2年と短い。SK hynixのDRAM市場シェアも、HBMの影響で増加した。Jung氏は、「Omdiaの調査によると、SK hynixの第3四半期の市場シェアは35%で、同社設立以来最高であった」と述べている。
SK hynixの躍進はHBMに大きく依存している。SK hynixは4月時点でHBM市場の50%を占めていたが、HBM市場はそれ以降も成長しており、SK hynixの市場シェアもさらに拡大している可能性がある。
SK hynixの業界での位置は不明だが、長らく1位だったSamsungを蹴落とした事はニュースになっていないことから考えづらく、SK hynixは2位に付けていると考えられる。
HBMの需要は今後も供給を上回り続けると予想される。さらに、来年からDRAM企業はHBMのようなプレミアム製品に焦点を当てる可能性が高まり、コンシューマ向け製品は優先度が低下するかもしれない。このシフトによって、供給量が低下したDRAM製品の値上げも予想される。
高需要製品に焦点を当てることでコスト競争力を獲得し、ビジネス競争力を高めるという業界の慣行も変化すると予想される。HBMはプレミアム製品であり、その生産収率(総生産量の中の良品の割合)を容易に上げることは難しいため、市場での供給を拡大するためには品質を確保することが重要である。
Jung氏は、「HBM市場に参入できるのは限られた企業だけであり、今後のアップサイクルでは、技術力を持つ数少ない企業が利益を独占し続けることになるだろう」と結論づけている。これにより、技術的に進んだ企業が継続的に利益を独占するというシフトが生じるとされている。
Sources
- Business Korea: SK hynix Achieves Record 35% Market Share in DRAM in Q3
- via Tom’s Hardware: Memory maker SK hynix booms during AI frenzy — now controls 35% of the DRAM market
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