コーヒーカスを抑えて、より濃度の高いコーヒーを淹れる科学的な方法が見つかる

masapoco
投稿日 2023年12月7日 15:12
espresso

新しい研究によると、コーヒー豆を挽く前に少量の水を加えることで、コーヒーかすの飛散を抑え、クリーンに淹れる事、そして無駄なくコーヒー豆を利用する事が可能になる事が分かった。これは水分を加えることで静電気が発生しにくくなる事を利用しており、まさに目から鱗が落ちる発見と言える。

「コーヒーかすに何らかの電気的蓄積が生じるという考えは、かなり古くからあります。工業規模の焙煎所を見たことがなくても、コーヒーの粉が飛び散ってあちこちに付着しているのは分かると思います。この論文の素晴らしいところは、そのメカニズムを理解するために、確かな科学、確かなデータを投入していることです」と、UC Davis Coffee Centerの創設ディレクターであり、この研究には関与していないWilliam Ristenpart氏はがThe Washington Post紙に語っている。

静電気とは、物体間のプラスとマイナスの電荷の不均衡のことである。静電気は、表面に静電気を蓄積させるプロセスである摩擦帯電から発生する。コーヒー豆を丸ごと挽くと、豆は急速なスピードで電子を交換する。このため、豆の粒子は塊となって集まってしまう。その結果、静電気が豆をグラインダーに付着させる。

ではこの静電気を抑えるにはどうすればいいだろうか?新たな研究では、豆を挽く前に霧吹きで豆全体に水をかけることで、これを大幅に抑えることができると報告している。

コーヒーかすと火山灰

オレゴン大学のコーヒー化学者で、この研究のリーダーの一人であるChristopher Hendon氏は、自身の研究室で定期的にコーヒーアワーを開催している。火山学者のJosh Méndez Harper氏はこれに何気なく参加していたが、ある日、Hendon氏と他の参加者がコーヒーを挽いている間に電気がどのように蓄積されるかについて話しているのを聞いたが、Méndez Harper氏はそれを聞いてひらめきを得た。それは、彼が火山灰について研究していたことと似ていたのだ。Méndez Harper氏とHendon氏、そしてその他のチームは、火山の研究に使われている技術をコーヒーに応用することにした。

彼らが発見したのは、水分によってコーヒーかすの帯電量が変わるということだ。水分含有量の多いコーヒー豆や粗挽きのコーヒー豆からは、静電気が発生しにくかった。また、乾燥しにくい焙煎度の浅いコーヒー豆からは、より多くのプラス電荷が発生したが、全体としてはダークローストよりも少ない電荷しか発生しなかった。

「コーヒー豆を挽くのであれば、挽く前に少量の水をコーヒー豆に加えることで、コーヒーを淹れるときに、よりアクセスしやすくなります」と、Hendon氏はThe Washington Post誌に語る。要するに、同じコーヒー豆から、無駄なく、より多くのコーヒー粉を得ることが出来るのだ。

さらに、静電気が少ないほど、塊も少なくなる。そのため、コーヒーを淹れるとき、水がすべてのコーヒーかすに均等に行き渡り、一杯のコーヒーの濃度が10%ほど高くなるという。

コーヒーはビッグビジネスである。同じ原料からより高い風味濃度を抽出する方法があれば、これはコーヒー業界にとって革命的な発見と言えるだろう。

Hendon氏は声明の中で、「同じ乾燥コーヒーの質量で10%~15%濃度を上げることは、コスト削減と品質向上に大きな意味を持ちます」と説明した。


論文

参考文献

研究の要旨

粒状材料は、摩擦や破砕によって生じる摩擦帯電(triboelectrification)と破砕帯電(fractoelectrification)により、それぞれ表面電荷を蓄積する。これらのプロセスはコーヒーの粉砕中に発生し、熱狂的および工業的な長さのスケールの両方でコーヒー生産に影響を与える。市販の焙煎コーヒーを入手し、自家焙煎することで、焙煎色と挽き目の粗さが帯電に影響することがわかった。さらに、内部の残留水分が帯電に及ぼす影響を明らかにし、水分が帯電の大きさと極性の両方を調整できると結論づけた。技術的な応用の可能性に加え、外部からの水の添加によって、挽いたコーヒーの表面帯電と凝集が同時に抑制され、エスプレッソ形式でのフローダイナミクスが著しく異なることが実証された。



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