人々は、正常な血圧について誤解している

アメリカ心臓協会の2023年の報告によると、驚くことに、20歳以上のアメリカ人の約半数、つまり1億2200万人以上が高血圧であることが判明した。また、今は正常な数値でも、年齢とともに上昇する可能性が高く、65歳以上のアメリカ人の4分の3以上が高血圧であると言われている。

高血圧は、高血圧症とも呼ばれ、心臓病や脳卒中の主な危険因子とされている。

私たちの調査によると、ほとんどの人は血圧の正常値または健康域を知らないことが判明した。これは深刻な懸念材料だ。

私たちはヘルスコミュニケーションの専門家であり、心臓専門医でもある。今回の調査は、米国居住者の全国代表サンプルであるUnderstanding America Studyを通じて募集された。

2023年1月に発表された我々の新しい研究では、64%が血圧の数値について理解していると自信を見せているが、実際に正常な血圧や健康な血圧が何であるかを知っているのは39%に過ぎないことが判明した。

間違った自信、致命的な結果

このような誤った自信は、高血圧の治療を受けることを妨げる可能性があるため、有害となる。高血圧が正常だと思うなら、わざわざ医師に相談する必要はないだろう。

このような過信の原因のひとつは、診察室にある。一般的には、看護師が血圧計を持って来て、上腕部に装着して測定する。看護師は結果を発表し、カフをはずし、医師のために記録することがある。

医師が到着すると、血圧の測定結果について一言も触れずに、他の事柄に移ることがよくある。これは、医師が、あなたがどのように感じているか、なぜそこにいるのかということに集中したいからだと思われる。しかし、その結果、たとえ血圧が正常でなくても、血圧は正常だと考えて診察室を出てしまうかも知れない。

アメリカ人の約70％は一生のうちに高血圧になるといわれている。しかも、高血圧の患者さんのうち、血圧をコントロールできているのは4人に1人だ。また、高血圧は通常、自覚症状がないため、知らないうちに高血圧になっていることがある。

心臓発作や脳卒中のリスクを下げるには、自分の血圧の数値を理解することが重要だ。特に、心臓病、腎臓病、糖尿病などの疾患をお持ちの患者さんには、このことが言える。

数値の意味

血圧は、2つの数値で報告されます。最初の数値は収縮期血圧で、心臓が鼓動しているときの動脈の圧力を測定する。2つ目の数値は拡張期血圧で、心臓の鼓動と鼓動の間にある動脈の圧力を測定する。

正常な、あるいは健康な血圧は、成人の場合、120/80mmHg（水銀柱）未満だ。これは初期の血圧計に由来する単位で、血圧が水銀柱をどこまで押し上げることができるかを見るものだ。ほとんどの患者さんにとって、血圧は低ければ低いほどよい傾向にある。

高血圧の低い段階であるステージ1高血圧は、130/80から始まる。高血圧の中でもより深刻な段階であるステージ2の高血圧は、140/90から始まる。収縮期血圧が20ミリ、拡張期血圧が10ミリ上昇するごとに、心臓発作や脳卒中で死亡する可能性が2倍になるため、どちらの数値も非常に重要だ。

血圧の分類とその意味

血圧の数値を理解し、どの範囲が正常か、あるいは正常でないかを知ることは、心臓の健康にとって非常に重要だ。

血圧を健康に保つための10のヒント

間違った認識をしないために、医師の診察のたびに血圧について尋ね、その数値の意味を確認しよう。もし、あなたの血圧が正常または健康な範囲を超えているなら、アメリカ心臓協会は次の10のヒントを推奨している。

医師と相談する血圧が高い場合は、血圧を下げるための方法や、家庭でできる血圧の管理方法について医師に相談しよう。

心臓によい食事をする：野菜、果物、全粒穀物、低脂肪乳製品、皮なしの鶏肉と魚、ナッツ類、豆類、オリーブオイルはすべて心臓に良いものだ。赤身の肉、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、超加工食品は心臓に良くない。
血圧を上昇させる塩分を控える：「アメリカ人のための食生活指針」では、ナトリウムの摂取量を1日2,300ミリグラム（ティースプーン1杯分）以下にすることを推奨しているが、米国食品医薬品局の報告によると、平均的なアメリカ人は1日に約3,400ミリグラムを摂取しており、推奨量のおよそ50％も多く摂取していることになる。たとえ食事に塩を加えていなくても、超加工食品から過剰に摂取している可能性がある。缶詰のチキンヌードルスープ1杯には680ミリグラムのナトリウムが含まれている。マクドナルドのビッグマック1個には、1,010ミリグラムのナトリウムが含まれている。
アルコールの使用を制限する：ビールでもワインでも蒸留酒でも、アルコールは血圧を上昇させる。お酒は飲まない方が良いが、飲む場合は「アメリカ人のための食事ガイドライン」で推奨されている制限を守ろう。女性の場合、1日にせいぜい1杯。男性なら、せいぜい1日2杯までだ。1杯とは、ビール340グラム、ワイン110グラムのことだ。
もっと体を動かす：週に2時間半ほど体を動かすだけで、血圧を下げることができる。例えば、週に5日、30分のウォーキングをすることだ。また、水泳、ウェイトリフティング、ヨガ、ダンスなど、運動量を増やすのも良いだろう。
健康的な体重を維持する：体重を数㎏減らすだけでも、太り気味の人の高血圧を管理するのに役立つ。健康的な減量方法については、主治医に相談しよう。
血圧に悪いストレスを管理する：ストレス解消が必ず血圧を下げるとは限らないが、ストレスレベルを下げることは気分転換につながる。Mayo Clinicでは、ストレスを管理する方法として、時には断ることを覚える、家族や友人と過ごす、瞑想する、などの方法を推奨している。
タバコ、ベイプ、またはその両方を吸っている方：今すぐやめる。どちらも心臓や血管に悪い影響を与え、高血圧の原因となる。タバコをやめると、心臓病のリスクがタバコを吸わない人とほぼ同じレベルまで下がる可能性がある。そして、禁煙のメリットはすぐにでも始まる。最近の研究では、わずか12週間後に禁煙した人は、まだ喫煙していたときよりも血圧が低くなっていることが判明した。米国疾病対策予防センター（Centers for Disease Control and Prevention）では、禁煙を支援するプログラムや薬物療法について推奨している。
薬を服用する：これは、ステージ2の高血圧の人によく勧められるが、心臓病、腎臓病、糖尿病を併発している人など、ステージ1の高血圧の人にも勧められることがある。ほとんどの患者さんは、血圧を正常または健康なレベルまで下げるために、2～3種類の薬を必要とする。最近のメタ分析では、薬物療法によって収縮期血圧を5mmHg下げると、ベースラインの血圧や心血管疾患の診断歴にかかわらず、主要な心血管イベントのリスクが約10％減少することが示されている。
家庭で血圧を記録する：米国心臓協会では、上腕に装着する自動で有効なカフ式モニターを推奨している。長期間にわたる測定値の記録は、必要に応じて医師が治療を調整するのに役立つ。

高血圧はサイレントキラーだ。積極的に行動し、自分の数値を知ることは、命を救うことに繋がる。

本記事は、Wändi Bruine de Bruin氏、Mark Huffman氏によって執筆され、The Conversationに掲載された記事「Many Americans wrongly assume they understand what normal blood pressure is – and that false confidence can be deadly」について、Creative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、翻訳・転載しています。