Huaweiが国産の7nmプロセッサを搭載したスマートフォンを発表した事は、アメリカにとって完全に不意打ちだった。長年の技術輸出規制の後、中国にはこうした先進的なチップを国内で製造する設備がないと考えられていたからだ。規制当局がアメリカの半導体支配が何を意味するのかを理解しようと奔走する中、TSMCの元幹部は、このアプローチが絶望的であるとの考えを示している。元TSMC副社長Burn J. Lin氏によれば、中国SMICは既に保有しているASMLの露光装置を用いて、さらに高度なチップを製造する事が可能だという。
米国とその同盟国は、米国の技術に基づく高度な部品が軍事目的に利用される可能性があるとの懸念を理由に、数年前から中国のテクノロジー企業を追及してきた。2020年、政府はキャンペーンを強化し、大手チップメーカーのTSMCが中国と協力することを阻止した。このため、当初は中国のハイテク・セクターは打撃を受けたが、現在は回復基調にある。
液浸リソグラフィの初期の研究で業界では有名なLin氏は、中国が欧米の半導体技術にアクセスするのを制限しようとしても無意味だと言う。台湾の国立清華大学での貴重なインタビューで、Lin氏は、中国は7nmを超えるために必要なものをすでに持っていると述べた。より強力なリソグラフィ装置を導入しなくても、SMICは5nmのチップを大規模に製造できるはずだ、とBloombergは報じている。
中国のSMICは、ASMLのNXT:2000iを使用して、Huawei Mate 60 Pro向けに7nmのKirin 9000Sを製造した。
NXT:2000iの特徴である解像度(≦38nm)は、7nmクラスのシングルパターン・リソグラフィ量産には十分である。しかし、5nmクラスのプロセス技術となると、より微細な解像度が必要となる。これは、複雑なパターンを複数の単純なパターンに分割し、それらを順次プリントするリソグラフィ技術で、半導体製造においてより高い精度とディテールを実現する。マルチパターニングの使用は、歩留まりやウェハー1枚当たりのチップ量に影響する厄介なプロセスであるため、一般的に経済的な理由からその使用は制限されている。
SMICは製造精度を向上させるため、装置を改良し、リソグラフィのパターニングを変更した。米国は以前、世界で最も高性能な半導体を製造するTSMCで使用されている極端紫外線リソグラフィ装置の販売を禁止していた。この禁止措置は現在DUVにも拡大されているが、ASMLは年末までに既存の注文には対応する。
貿易制限の後、中国は台湾を侵略し、TSMCを支配下に置くという度重なる脅しを実行に移すのではないかと懸念されていた。しかしLin氏は、技術封鎖は中国国内のチップ産業に大きなチャンスをもたらしたと主張する。中国共産党は半導体製造を強化するために “国家全体戦略”を採用しており、これによりSMICやYMTCのような企業がチップ製造の巨人になる可能性がある。彼らはすでに、先進的なマイクロプロセッサーに対する中国のニーズを満たす道を歩んでいる。
「米国が本当にすべきことは、中国の進歩を制限しようとするのではなく、チップ設計のリーダーシップを維持することに集中することです」とLin氏は言う。現在、米国の規制当局は貿易制裁が失敗したかどうかをめぐって議論している。中国を封じ込める努力を強めたいという意見もあるが、Lin氏の意見を信じるなら、中国は欧米の機器を必要としなくなるまで国内技術の進歩を続けるだろう。
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