エスプレッソがアルツハイマー病の原因物質を破壊する可能性が示される

masapoco
投稿日
2023年7月20日 15:01
espresso

エスプレッソに含まれる成分(カフェインを含む)がアルツハイマー病の発症を予防する可能性があることが、新たな研究で明らかになった。

エスプレッソは、細かく挽いたコーヒー豆を高圧の湯で抽出したもので、有名なところではスターバックス・コーヒーのドリンクのベースになっていたり、カフェラテや、エスプレッソ・マティーニを含むその他のドリンクのベースとなっている。

既に多くの研究で、コーヒーの摂取による様々な健康効果が報告されており、その中にはパーキンソン病とアルツハイマー病について予防効果があることが報告されているが、今回、イタリアのヴェローナ大学で研究している研究者たちは、エスプレッソに含まれる化合物のどれかがアルツハイマー病の発症に影響を与えるかどうかを実験した。

専門家たちは、アルツハイマー病を発症させるプロセスを解明中であるが、様々な研究が示唆していることは、脳内のタウタンパク質による関与を指摘している。

タウタンパク質は脳の構造を安定させる働きがある。しかし、このタウ蛋白質は糸状または線維状に固まり、記憶に関与する脳領域に蓄積することがあるのだ。

そうなると、線維が脳の神経細胞間のコミュニケーションを妨げ、アルツハイマー病の症状である記憶喪失、判断力の低下、徘徊、性格の変化などを引き起こす。

タウタンパク質の蓄積を関連づける知見や、血液検査や髄液分析によってタウタンパク質を特定できる検査があるにもかかわらず、アルツハイマー病に関連するタウタンパク質のもつれを解消する決定的な方法はまだ見つかっていない。

今回の研究は、この解決の道筋を示す物かも知れない。

研究者らは、エスプレッソを抽出し、エスプレッソからカフェイン、トリゴネリン、ゲニステイン、テオブロミンという化合物を分離した。その抽出物をタウタンパク質の短縮型と一緒に実験室で40時間培養した。

実験の結果、カフェイン、ゲニステイン、エスプレッソ抽出物の濃度が高くなるにつれて、タウ線維は短くなり、より大きな「もつれ」を形成しないことがわかった。

この短くなった線維は、ヒトの細胞には無毒であることがわかった。

コーヒーに含まれるカフェインやゲニステインなどの化合物の多くは、血液と脳の間のバリアを通過し、保護作用をもたらすことができるため、エスプレッソを飲むだけでこの研究で見られたものと同様の効果が得られる可能性があると研究チームは述べている。

ニュースリリースによれば、実験に使用されたすべての化合物の中で、「完全なエキスが最も劇的な結果を示しました」とのことだ。

さらなる研究が必要だが、この予備的な試験管内の発見が、アルツハイマー病を含む神経変性疾患に対する他の生物活性化合物を見つけるか、設計する道を開く可能性があると述べている。


論文

参考文献

研究の要旨

エスプレッソコーヒーは世界で最も飲まれている飲料の一つである。最近の研究では、アルツハイマー病などの神経変性疾患に対するコーヒー飲料の保護活性が報告されている。アルツハイマー病は、タウオパチーと呼ばれる疾患群に属し、微小管関連タンパク質であるタウの線維状凝集体における神経細胞内蓄積を特徴とする。本研究では、エスプレッソコーヒー抽出物の分子組成をNMRで解析し、その主成分を同定した。そして、コーヒー抽出物全体、カフェイン、ゲニステインが、タウの繰り返し領域の凝集、凝縮、播種活性を阻止する生物学的特性を持つことを、in vitroおよびin cell実験で証明した。また、あらかじめ形成されたタウ線維に結合できる一連のコーヒー化合物も同定した。これらの結果は、エスプレッソコーヒーの神経保護能に関する洞察を深めるとともに、タウの単量体あるいは線維化形態を標的とした治療法を設計するための分子足場候補を示唆するものである。



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