Appleが、先日発売した「Mac Studio」にて初搭載した「M1 Ultra」チップだが、このチップを実現するために用いられたUltra Fusionテクノロジーについて、製造を担っているTSMCが初めて明らかにした。
Tom`s Hardware : TSMC Clarifies Apple’s UltraFusion Chip-to-Chip Interconnect
- 4月26日に開催された「International Symposium on 3D IC and Heterogeneous Integration」にてTSMCが同社のInFO_LIテクノロジーについて解説
- AppleのM1 Ultraチップで用いられた「Ultra Fusionテクノロジー」はTSMCのInFO_LIパッケージング方式で実現
2022年4月26日に開催されたシンポジウム「International Symposium on 3D IC and Heterogeneous Integration」において、TSMCは同社のInFO_LIテクノロジーについて解説を行っており、その中で最近、Appleが同社のInFO_LIパッケージング方式を使用して、Ultra Fusionチップ間インターコネクトを実現しM1 Ultraプロセッサを製造していることを明らかにした。AppleはInFO_LIテクノロジーを使用した最初の企業となる。
Appleが今年初めに20コアのM1 Ultraプロセッサを発表したとき、Ultra Fusionによる2.5TB/sもの転送速度を実現するプロセッサ間インターコネクトで世界に衝撃を与えたが、同時にこれはどのようなパッケージング技術を使用しているのか、様々な憶測を呼んだ。ただし、AppleはTSMCにチップの製造を委託しているため、TSMCのパッケージング技術のいずれかを使用したと考えるのが妥当だった。
M1 Ultraが登場した当時は、AppleはTSMCのCoWoS-S (chip-on-wafer-on-substrate with silicon interposer) 2.5Dインターポーザーベースのパッケージングを選択したという話も出た。実際、これはかなり多くの企業で使われている実績ある技術であるため、可能性の面でもあり得る話と思われたが、今回これが正しくなかった事が明らかになった形だ。International Symposium on 3D IC and Heterogeneous IntegrationでTSMCの行ったデモンストレーションで用いられたプレゼンテーション資料によると、Appleはローカルシリコンインターコネクト(LSI)と再配線層(RDL)を持つInFO(Integrated Fan-Out)を使っているという。下記に示したスライドは、半導体パッケージングエンジニアリングの専門家であるTom Wassick氏によって再掲載されたものだ。
AppleのUltra Fusionチップ間インターコネクトは、1つのM1 Maxと別のM1 Maxプロセッサを接続してM1 Ultraを構築するパッシブシリコンブリッジを使用するが、このようなブリッジを実装する方法はいくつか存在する。
InFO_LIでは、大規模でコストのかかるインターポーザーの代わりに、複数のダイの下に局所的なシリコンインターコネクトを使用する。これは、IntelのEmib(組み込みダイ相互接続ブリッジ)と非常によく似たコンセプトである。
これに対してCoWoS-Sは高価なインターポーザを使うので、よほど「広い」インターコネクトが必要でない限り(マルチチップレット+HBMメモリ統合に必要)、InFOはコスト面から好ましい技術である。一方、AppleはHBMメモリを使わず、インターポーザより大きなダイを2つ以上統合する必要がないため、M1 UltraではInFOで十分だったと言うことだ。
ちなみに、以前AppleがInFO_LIではなくCoWoS-Sを使うかもしれないと考えられていた理由の1つは、前者が商業利用の準備ができていたのに対し、後者は2021年第1四半期に認定が完了することになっていたためだ。Appleは2021年第2四半期か第3四半期にM1 ProとM1 Maxの採用を開始したばかりだったので、同社が重要な設計の1つに真新しいパッケージング技術を使用するかどうかは不透明だったというのがある。結果的にAppleは全く新しい技術をいち早く導入する事で成功を収めたというわけだ。
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