毎秒156兆フレームの撮影が可能な世界最速の超高速カメラが開発される

masapoco
投稿日 2024年3月27日 12:48
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カナダのINRS Énergie Matériaux Télécommunications Research Centreのエンジニアが、毎秒156兆3000億フレーム(fps)という驚異的なスピードで撮影できる世界最速の超高速科学カメラを開発した。SCARF (swept-coded aperture real-time femtophotography)と名付けられたこの研究用カメラは、現在実用化されている最先端の科学用センサーでも捉えられない微小事象を研究する上で、ブレークスルーをもたらす可能性がある。

一般的なスマートフォンに搭載されているスローモーションカメラは、通常数百fpsで動作している。プロの映画用カメラでは、より滑らかな効果を得るために数千フレームを使用することもある。しかし、ナノスケールで何が起こっているかを見たいのであれば、1秒間に数十億、あるいは数兆レベルのフレーム数が撮影出来る必要がある。

SCARFは、フェムト秒(1秒の1兆分の1)の領域で起こる出来事を捉えることができると報告されている。実際に、半導体の吸収や金属合金の減磁のような超高速現象の撮影に成功している。この研究は、衝撃波力学やより効果的な医薬品の開発など、さまざまな分野で新たなフロンティアを開く可能性がある。

今回の偉業の達成は、2014年に開発した圧縮超高速写真(Compressed Ultrafast Photography: CUP)と呼ばれる技術をベースにしている。次の段階はT-CUP(Trillion-frame-per-second Compressed Ultrafast Photography)と呼ばれ、その言葉通り、最大10兆fpsの撮影が可能だった。そして2020年、研究チームは圧縮超高速分光撮影(Compressed Ultrafast Spectral Photograph: CUSP)と呼ばれるバージョンで70兆fpsまで向上させた。

そして今回、研究チームはさらに倍以上の156.3兆フレーム/秒という驚異的な記録を打ち立てた。SCARFは、従来の技術では見ることができないほど高速で起こる事象を捉えることができる。これには、物質や生きた細胞内を移動する衝撃波のようなものも含まれる。

SCARFは、まず「チャープ」された超短パルスのレーザー光を発射し、撮像される事象や物体を通過させることで機能する。光を虹に見立てると、まず赤の波長が事象をとらえ、続いてオレンジ、黄色、そして紫へとスペクトルを下っていく。事象は非常に速く起こっているため、それぞれの連続する「色」が到達する頃には異なって見え、パルスは信じられないほど短時間で変化する全体を捉えることができる。

この光パルスはその後、集光、反射、回折、エンコードするコンポーネントの試練を経て、最終的に電荷結合素子(CCD)カメラのセンサーに到達する。そして、コンピュータによって最終的な画像に再構成できるデータに変換される。

これは科学研究目的のカメラなので、我々一般人がSCARFシステムで撮影された高速ビデオを見ることはないだろうが、研究者たちは、新しい超高速現象を捉えることは、物理学、生物学、化学、材料科学、工学などの分野の改善に役立つと述べている。


論文

参考文献

研究の要旨

シングルショット・リアルタイム・フェムトフォトグラフィは、超高速ダイナミクスをその発生時間中にイメージングするために不可欠である。従来のマルチショットアプローチよりも優れているにもかかわらず、既存の技術では、配置された光電子デバイスによるイメージング速度の制限やデータ品質の劣化に直面し、適用範囲や取得精度の課題に直面しています。また、センシングモデルによる取得可能な情報の制限にも阻まれている。ここでは、掃引符号化開口リアルタイムフェムトフォトグラフィ(SCARF)を開発することにより、これらの課題を克服する。このコンピューテーショナル・イメージング・モダリティは、超高速イベントの記録中に、静的コード化アパーチャの全光学的超高速掃引を可能にし、最大156.3THzのフルシーケンス・エンコーディングをCCDカメラの各画素にもたらす。SCARFのシングルショット超高速イメージング能力を、反射モードと透過モードの両方で、調整可能なフレームレートと空間スケールで実証する。SCARFを用いて、半導体の超高速吸収と金属合金の超高速減磁を画像化した。



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