ジェルネイル用UVライトがDNAにダメージを与え細胞の突然変異を引き起こす可能性が明らかに

masapoco
投稿日 2023年1月19日 12:24
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ネイルサロンなどで顧客が紫色の光が出る機械に指先を入れているのをご覧になったことがあるだろうか?

筆者はあまり爪の装飾には詳しくないが、これはジェル状の樹脂を硬化させるためにUVライトを照射している光景で、これによってジェルネイルという、ネイルの装飾を形成するのだ。ジェルネイルは、2000年代後半から一般的になり、多くのネイルサロンで取り入れられている。

ジェルネイルは、従来のマニキュアと比べ、乾くのも早く、傷や汚れに強く、落とすまで輝きを失わない事から女性に支持されている。このジェルポリッシュを硬化させるのに、UVライトが用いられているのだが、その際に与える皮膚への影響について行われた研究はいままでなかった。今回、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者グループは、ある美人コンテストの出場者が珍しいタイプの皮膚がんと診断されたという記事を読んで、この装置を研究することにし、興味深い結果を報告している。

ネイルサロンでは一般的に、ジェルネイルに使用する薬剤を硬化させるために、特定の波長の紫外線(340~395nm)を使用する。日焼けマシーンでは、発がん性があることが研究で証明されている別の波長の紫外線(280-400nm)を使用しているが、ネイルドライヤーで使用されている波長については、あまり研究が進んでいないのが現状だ。

今回、ヒトとマウスの細胞を組み合わせて、20分間紫外線ネイルドライヤーを当てると、シャーレの中の細胞の30%が死滅することが判明した。また、20分の照射を3回続けると、照射した細胞の65~70%が死滅したのだ。残った細胞には、ミトコンドリアとDNAの損傷が見られ、さらに皮膚がん患者に見られるような突然変異も確認されたという。

「我々の実験結果とこれまでの証拠は、UVマニキュア乾燥機から放射される放射線が手の癌を引き起こす可能性を強く示唆しており、UVマニキュア乾燥機は、日焼けベッドと同様に、早期発症の皮膚癌のリスクを高める可能性があります。そのような研究が完了し、その後一般市民に知らせるには、少なくとも10年はかかると思われる」と、研究者らは、科学誌『Nature Communications』に発表した研究論文に記している。とはいえ、この研究結果から、これらのマニキュア乾燥機の慢性的な使用がヒトの細胞にダメージを与えることは明らかである。

この研究の筆頭著者であるMaria Zhivagui氏は、以前は自分もジェルネイルを愛用していたが、この結果を見て、その使用を中止したという。

「博士課程に在籍していたとき、普通のマニキュアより長持ちするジェルネイルについて耳にするようになりました。特に、実験室では身だしなみを整えるために手袋をつけたり外したりすることが多いので、ジェルネイルを試してみたいと思いました。というわけで、数年前から定期的にジェルネイルをするようになりました。ジェルネイルの乾燥装置が発する放射線が細胞死に影響を与え、たった20分の施術でも実際に細胞を変異させることを目の当たりにして、私は驚きました。これは非常に憂慮すべきことだと思い、使用を中止することにしました。」と、Zhivagui氏は述べている。

これまで、UVネイル乾燥機は安全であるとして販売されていたが、その健康リスクについてはほとんど研究されていないのが現実だ。製品テスト会社に雇われた研究者たちは、「公衆が警戒すべき理由」はないと回答しており、一回のネイルペイントで使用される紫外線の量は、全体から見れば些細なものだと彼らは主張していた。だが、事例研究だけでは因果関係を証明することはできない。そろそろ独立した疫学研究が必要な時期だろう。

ここで、UVドライヤーを避けるようにというアドバイスがあるだろうが、そう単純でもない。ジェルネイルが業界標準になったのは、やはりマニキュアと比較したその利便性だろう。ジェルネイルは、マニキュアのように1日やそこらで剥げることがないのだ。

今回の結果が端緒となり、更なる研究が進むことが期待される。その間は、顧客がリスクと利益を比較検討することになる。

なお、歯の詰め物を治すのに使われる道具や一部の脱毛治療など、同じスペクトルの紫外線を使う消費者製品は他にもあるが、研究者は、定期的な使用と、ネイルドライヤーが完全に化粧品であるという性質が、それとは異なると指摘している。


論文

参考文献

研究の要旨

UVマニキュア用ドライヤーは、一般的に紫外線Aを照射しており、近年、長期間の使用により皮膚がんの発症リスクが高まることが報告されている。しかし、UV-マニキュアドライヤーから発せられる放射線が哺乳類の細胞に与える影響については、これまで実験的に明らかにされたことはない。我々は、紫外線マニキュア乾燥機による照射が、8-oxo-7,8-dihydroguanine障害とミトコンドリア機能障害と一致する高レベルの活性酸素種を引き起こすことを示す。体細胞突然変異の解析から、照射試料では線量依存的にC:G>A:T置換が増加し、これまで活性酸素に起因するとされてきた突然変異誘発パターンに類似していることが明らかになった。以上のことから、本研究は、紫外線マニキュア乾燥機から放出される放射線が、マウス初代胚性線維芽細胞、ヒト包皮線維芽細胞、ヒト表皮角化細胞のゲノムにDNA損傷と永久的変異を刻むことを実証している。



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