Bloombergの報道によると、米国政府当局者は、オランダの関係者とともに、同国で生産されるほぼすべての露光装置の中国国内企業への販売を禁止するよう働きかけているとのことだ。このアメリカの働きかけが成功した場合、世界的な半導体生産国になるための中国の計画「メイド・イン・チャイナ2025」に大きな打撃を与えることになる。
EUV露光装置に続いてDUV露光装置も規制する模様
ASMLは、あらゆるチップを作るために使われる露光装置の世界最大のメーカーだ。特に極端紫外線(EUV)露光装置は世界で唯一製造に成功していることから、独占状態となっている。
ASMLは元々最先端のEUV露光装置については、外交的な配慮もあってオランダ政府とASMLは中国への販売は行っていない。それに加えて、今回米国の政治家は、ASMLが現在主流の深紫外線(DUV)露光装置を中国の顧客にもを販売できないような制限を提案しているという。DUVは、クライアントPC、サーバ、モバイル電子機器、自律走行車、ロボットを動かす広く使われているチップの大部分を作るために使われている。
オランダ政府を説得し、中国の顧客へのほぼすべての露光装置の販売を禁止させることは容易ではないだろう。Hua Hong、Semiconductor Manufacturing International Co.(SMIC)、YMTCなどの中国地元企業、あるいはTSMC、Samsung、SK Hynixなどのグローバルプレイヤーが運営する中国のファブは、2021年のASMLの収益の約16%を占めており(186億ドル)、これは決して少なくない額だ。
ASMLは、DUV露光装置のメーカーとしては(最大手とはいえ)世界唯一ではなく、同様の機械はCANONやNIKONからも発売されていると主張している。しかし、もし米国の要求通りにASMLが中国市場から撤退した場合、他社はすぐに取って代わることが出来るかというとそう単純な話でもないとのことだ。さらに、米国の政治家は、現代のチップパッケージング技術の進歩により、中国企業はかなり高度なチップを設計・生産できるようになり、中国のスーパーコンピューティングや、ひいては軍事技術を進歩させることができると主張している。
米国は、いくつかの中国企業が米国企業が開発した技術にアクセスすることを禁止し、Huawei社のチップ部門であるHiSilicon社をほぼ廃業に追い込んでいる。今回、ASMLの露光装置の中国への販売を禁止すれば、現地の半導体産業は壊滅的な打撃を受けるだろう。
一方、ASMLのスキャナーを中国企業に販売禁止にすることは、米国が現地のチップ産業を妨害する唯一の方法ではない。半導体工場では、Applied Materials、KLA、Lam Researchなど多数の米国企業が生産する数百のツールを使用している。中国との協業を禁じれば、天津市の半導体の取り組みに壊滅的な影響を与えるだろう。さらに、彼らのツールの中には、国家安全保障上の問題から、中国に販売できないものもある。
しかし、中国の企業が半導体製造装置を持てないままでは、世界中に影響を及ぼすことにもなる。例えば、DRAMや3D NANDメモリの生産のかなりの部分が中国にある。Samsung、SK Hynix、YMTCなどの企業が中国の工場を失うことは、世界のチップと電子機器のサプライチェーンに影響を与える。さらに、TSMC、SMIC、Hua Hongは、海外の顧客向けに大量のチップを生産しており、もし生産が縮小されれば、米国のチップ設計者にも影響を与えることになるだろう。
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