強力な磁力によって、医療廃棄物を水素やグラファイトに分解する技術が開発された

masapoco
投稿日 2022年7月6日 12:18
magnetic field

新型コロナウイルスのパンデミックによって、大量の医療廃棄物が発生したが、ワクチン接種を急ぐあまり、その廃棄方法についてはこれまであまり注意が払われてこなかった。しかし、その量や環境や生物に与える影響は無視できない物になってきている。そんな中、今回中国の科学者によって、少ないエネルギーで環境に優しく医療廃棄物を処理高速でできるという新たな方法が発表され、大きな反響を呼んでいる。

磁気温熱療法を応用した医療廃棄物の分解

世界保健機関(WHO)によると、2020年3月から2021年11月の間に、国連はマスクやガウンなどの個人防護具(PPE)8万7000トンを世界各国に輸送した。しかし、これは国連が手配した物である事から、各国政府や一般市民が各々購入したものはその何倍もの量になるだろう。また、1億4,000万個以上の検査キットが出荷され、世界中で80億回以上投与されたワクチンにより、注射器、針、シャープスビンなどの廃棄物が1億4,400万トン分発生しているという。

WHOの最近の報告書によると、プラスチックやバイオハザードの医療廃棄物は、人間と環境の健康を脅かしているとのことだ。そんな中、中国の研究者たちが、使い捨て注射器のプラスチックを急速に分解する新しい触媒技術を開発したと発表している。

現在、プラスチック廃棄物の多くは焼却によって処理されている。焼却は手軽で簡単な反面、二酸化炭素やその他の有毒ガスが大量に発生するという問題がある。有用な副産物は熱だけである。医療廃棄物に含まれるプラスチックは水素を豊富に含んでおり、最近では研究者が高温熱分解の後に触媒分解を行い、水素、エタノール、メタンなどの水素を多く含むガスに変える2段階の技術を開発した。しかし、中国科学技術大学のXifeng Zhu教授らによると、このプロセスは非常にエネルギーを消費するという。

そこで Zhu教授は、医療廃棄物を効率よく水素を多く含むガスに変換するために、磁気温熱療法(磁気ハイパーサーミア)に着目した。磁気温熱療法は、磁性ナノ粒子に高周波の交流磁場をかけることで、局所的に高熱を発生させる技術である。これまで医療分野では、主にがん細胞を加熱・破壊するために利用されてきた

研究チームは、曲げた注射器の針10本を鎖状につなぎ合わせて、磁界に反応する触媒をつくった。さらに、ポリプロピレン製の使い捨て注射器を粉砕し、バイオオイルを開始剤として大量に添加した。

この混合物に高周波の交流磁場をかけると、鎖状の針が加熱されることがわかった。これがバイオオイルを加熱し、さらにバイオオイルが加熱された。温度が上がると、バイオオイルとプラスチック製注射器が分解され、水素やメタンなどのガスが発生した。さらに炭化鉄が生成され、高周波・電磁波吸収性の高い黒鉛が鎖状の針の表面に付着した。この黒鉛によって、システム全体がさらに加熱され、1200℃という高温に達した。

さらにバイオオイルを加えずに、粉砕したプラスチック製注射器をどんどん反応させると、グラファイトの生成と水素の収量が増加した。研究者らは、このプロセスにより、注射器内の水素の75%以上を水素ガスに、炭素の約68%をグラファイトにすることができたと報告している。

シリンジを追加して10回繰り返した後、電子顕微鏡で多量の薄片状炭素の成長を確認した。鎖状の針に7層のグラファイトシートが堆積しており、欠陥の少ない格子構造になっていることがわかった。

研究者によると、この技術により、医療廃棄物をたった1回の工程で水素と高価な黒鉛に変換し、処理を簡素化することができるという。また、高周波交流磁場の使用により、反応器全体を同時に加熱する必要がないため、他の触媒プロセスと比べてエネルギー使用量を最小に抑えることができるとのことだ。



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