ここ最近のビットコイン価格の値下がりは、高値づかみした人にとっては噴飯物だろうが、地球環境にとっては良い傾向なのかも知れない。ある調査によると、ビットコインマイニングのためのエネルギー消費が大きく減っていると言うことだ。
Digiconomist : Bitcoin Energy Consumption Index
ビットコインの価格がマイニングの損益分岐点を下回って推移している
2021年11月には1BTCが68,500ドル(およそ770万円)を記録したビットコイン価格だが、ここ最近は価格の下落が続いており、直近では20,000ドルを割る場面も出るなど、低迷が続いている。採算の取れなくなったマイニング業者がグラフィックスカードを投げ売りして、市場の崩壊が始まっているなど伝えられているが、それに伴い、エネルギー消費量もピーク時の3分の2になっているとのことだ。
ビットコインの年換算エネルギー消費量は、6月11日の年間約204テラワット毎時(TWh)から、6月26日の年間約132TWhに減少している。だが、この132TWhと言う数値は、それでもなお、アルゼンチンの1年間の電力使用量にほぼ匹敵するほど莫大な物だ。
ビットコインネットワークのエネルギー消費量は、ビットコイン価格と関係している。ビットコインの価値が高ければ高いほど、マイナーは新しいマシンを購入し、より効率的に、そして多くのビットコインを獲得するために、マイニング能力を強化しようとするインセンティブが働いてくる。ビットコインの価格が最高値を迎えた2021年11月には、ブロックチェーンの年間電力消費量はおよそ180~200TWhに上っていた。これは、世界中のデータセンターが毎年使用する電力量とほぼ同じ量となる。
ただ、ビットコインの価値は何ヶ月も下がっていたものの、グラフをご覧頂ければ分かるように、エネルギー使用量もそれに伴ってすぐに下がるというわけではなかった。これは、マイニングコストに対して価格がまだ上回っていたため、ある程度は価格が下がっても利益が出ていればマイニングをやめる必要がなかったわけだ。ResearchdeVriesによると、価格が25,200ドルを上回っていれば、マイナーはマシン導入のための投資をし、購入費用を回収できている場合は、マシンを稼働させるだけで良いので、電気代を上回ればまだマシンを稼働させる可能性があった。
今回、その損益分岐点である25,000ドルを下回り、直近では20,000ドルすら割る場面すらあり、これではマイニングをすればするほど逆に電気代の分だけ損をしてしまうことになってしまう。そのため、収益性が低下している古い、効率の低いマシンを一時停止または廃止する可能性が出てくるというわけだ。
今回グラフに現れているエネルギー消費量の急落は、これが実際に起こったことを物語っている。6月13日以降、ビットコインの価値は24,000ドルを下回っており、マイニング業者は効率の悪いマシンを使っていた場合、掘れば掘るほど赤字になってしまうのだ。
そして、それはビットコインだけではなく、イーサリアムにも当てはまる。現在のイーサリアムも同じようにエネルギーを大量に消費するプロセスを用いて台帳を維持している。その価格も同様に今月急落したが、この1週間で多少は回復している。イーサリアムの直近の推定電力使用量は、5月下旬のほぼ半分だった。
暗号通貨に対する環境負荷へのイメージを払拭しようとする動きも活発になっている。ブロックチェーンの中には、ビットコイン(と今のところイーサリアム)と違って、取引の検証にパズル解きを使わないので、エネルギー消費がずっと少ないものがあるのだ。イーサリアムも、現在のPoW(Proof-of-Work)から、PoS(Proof-of-Stake)への移行が発表されており、そうなればエネルギー消費量も現在よりもずっと少なくなる。だが、暗号通貨の代表格であるビットコインのような一部のブロックチェーンが膨大な電力を消費し続ける限り、人々が抱く暗号通貨への環境への懸念は大きく変わらないかも知れない。
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