生成AIの莫大な消費電力はGoogleだけでアイルランドの全体の消費量に並ぶ

masapoco
投稿日
2023年10月11日 12:22
ai chip image

人工知能(AI)を搭載したシステムは、学習のために膨大な量のデータを消費するだけでなく、稼働させるために莫大な電力を必要とする。今回、最近のいくつかの大規模言語モデルのエネルギー使用量とカーボンフットプリントを計算した新たな研究が発表された。それによると、例えばChatGPTは、10,000個のNVIDIA GPUで動作しており、1,287MWh(メガワット毎時)の電力を消費していることが判明した。

生成AI開発が加速している、改めてこの技術によってもたらされる弊害と、その解決策にも目を向ける必要があるかも知れない。学術誌『Joule』に掲載された論評の中で、著者のAlex de Vries氏は、将来、AIツールに電力を供給するためのエネルギー需要は、いくつかの小国の電力需要を上回るかもしれないと主張している。

「2021年、Googleの総電力消費量は18.3TWh(テラワット毎時)で、このうちAIが占める割合は10~15%です。最悪のシナリオでは、GoogleのAIだけでアイルランドのような国(年間29.3TWh)と同程度の電力を消費する可能性があり、これは過去のAI関連のエネルギー消費量と比較して大幅な増加です」とde Vries氏は述べた。

時間の経過とともに、AIはより多くのエネルギーを使用するようになるだろう
AI企業のOpenAIが2022年後半にChatGPTを世に送り出して以来、生成AIのブームが起きている。その結果、AIチップの需要が高まっている。ハイエンドチップ供給の最前線に立つNVIDIAは、2023年7月期の四半期決算で160億ドルという過去最高の収益を計上した。つまり、AIチップの需要は高まる一方なのだ。

また最近では、AIの重い要求に応えるため、独自のチップを開発する企業が増えている。GoogleとAmazonはすでに独自のAIチップを保有しているが、Microsoftは来月、自社製チップのハードウェアを発表するという噂が流れている。Microsoftが多額の投資を行っているOpenAIも自社チップを開発するか、それを行う半導体企業を買収するかを検討していると報じられている

これが意味するのは、AI産業のエネルギーフットプリントが大幅に増加するということだ。「例えば、(Alphabetの)Googleのような企業は、生成AIがすべてのGoogle検索に統合された場合、電力需要が大幅に増加する可能性があります」と、de Vries氏は説明する。

AIツールには最初のトレーニング段階とそれに続く推論段階がある。トレーニング段階は最もエネルギーを消費し、これまで行われてきたAIの持続可能性研究の中心であった。推論段階は、これらのツールが訓練されたデータに基づいて出力を生成する段階である。著者は科学コミュニティに、この段階にもっと注意を払うよう呼びかけている。

半導体とAIの大手ブログSemiAnalysisによると、ChatGPTのトレーニングに、OpenAIはNVIDIAのHGX A100サーバー3,617台、合計28,936個のGPUを必要とした。これは、1日あたり564MWhのエネルギー需要を意味する。そしてこのエネルギー消費は消費者が使い始める前にチャットボットを起動させるためのものだ。そして今後、ChatGPTなどの生成AIは検索に統合されていくことが計画されている。その場合の消費電力はこれを遙かに上回る。

例えばGoogleは、同社の生成AI「Bard」をGoogleの様々なサービスに組み込む事を計画しており、検索エンジンにAIを搭載する事や、Googleアシスタントに生成AIを統合する事も発表している。Googleは現在、1日に90億件もの検索を処理している。このデータから、もしGoogleのすべての検索にAIが使われた場合、年間約29.2TWhの電力が必要になるとde Vries氏は試算している。これはアイルランドの年間電力消費量に相当する。

ただし、AIサーバーの増設に伴う高コストとAIサーバーのサプライチェーンにおけるボトルネックのため、これは短期的には実現しそうにないとde Vries氏は言う。しかし、AIサーバーの生産は近い将来、急速に伸びると予測されている。2027年までに、AIサーバーの生産予測に基づくと、世界のAI関連の電力消費量は年間85〜134TWh増加する可能性がある。この電力消費量は、オランダ、アルゼンチン、スウェーデンといった国々の年間電力消費量に匹敵する

著者は最後に、ハードウェアとソフトウェアの効率改善によって、AI関連の電力消費の長期的な変化が完全に相殺されると期待するのは楽観的すぎると指摘した。しかし、努力は続けられている。

「潜在的な成長は、AIを何に使うかについて細心の注意を払う必要があることを浮き彫りにしている。AIはエネルギーを大量に消費するため、実際に必要としないあらゆるものにAIを搭載することは避けたい」とde Vries氏は言う。


論文

参考文献



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