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インターネット上の全トラフィックを余裕で転送することが可能な驚異的なフォトニックチップが開発

コペンハーゲンにあるデンマーク工科大学(TDU)の科学者たちが、1本の光ファイバーケーブルで接続された1つのフォトニックチップを用いて、7.9km離れた2点間で1.84Pbit/s(ペタビット/秒)のデータ転送を行う事に成功した。現在の全世界のインターネットの平均帯域は、常時1Pbit/sと推定されており、この新たな技術は、世界のインターネットでのデータ転送量を上回るデータ量の転送を可能としている。

1.84Pbit/sがどれほどのスピードであるかは、恐らく想像を絶するものだろう。現在一般的に普及している家庭向けインターネットでは、おそらく毎秒数百Mbitか、1Gbit、最近は10Gbitと言うものも登場しているが、1Pbitは100万GBitだ。これは、NASAなどで使用されている科学ネットワークのアップグレード版であるESnet6(46Tbit/s)の20倍以上の速さとなる。そして、前述したとおり、世界中のインターネット上の通信を一手に引き受けてもまだ余裕のある帯域幅だ。

フォトニックチップ技術は、プロセッサと転送媒体の両方が光波で動作するため、光データ転送の目的で大きな可能性を秘めている。

まず、実験に使用したデータストリームは37本のラインに分割され、それぞれがケーブル内の異なる光ファイバーを経由して送信される。37本のデータラインは、それぞれ光スペクトルのゾーンに対応する223個のデータチャンクに分割されている。これにより、他のストリームと干渉することなく、同時に異なる色でデータを伝送する「周波数コム」が実現されたのだ。つまり、「超並列空間・波長多重データ伝送」システムが完成したのである。もちろん、この分割、再分割により、光ファイバーケーブルがサポートするデータのスループットは大幅に向上した。

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モデル化された通信システム(Credit: TDU)

しかし、1.84Pbit/sの帯域幅を検証するのは容易ではなかった。なぜなら、そんな膨大な量のデータを送受信したり、保存したりすることは、コンピュータにはできないからだ。そこで研究チームは、個々のチャンネルでダミーデータを使って、実際の帯域幅を検証した。各チャンネルを個別にテストし、受信したデータと送信したデータが一致していることを確認した。

このフォトニックチップは、1つのレーザーを多数の周波数に分割し、37本の光ファイバーストリームごとに光データをエンコードする処理が必要である。研究チームの1人であるデンマーク工科大学のAsbjørn Arvad Jørgensen氏によると、洗練された完全な機能を持つ光処理装置を、マッチ箱程度の大きさで作ることができるはずだという。これは、通信業界で使用されている現在の単色レーザー伝送装置と同じようなサイズだ。

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実現したデータ転送速度(赤い三角形)と理論上のスループットの比較 (Credit: TDU)

光ファイバーケーブルのインフラはそのままに、マッチ箱サイズの光データエンコーダ/デコーダを同サイズのフォトニックチップ搭載デバイスに置き換えることで、データ帯域幅を現在の8,251倍に拡大できる可能性があることのは驚くべき成果だ。研究者らは、「将来の通信システム設計の転換を促すのに十分な可能性がある」と述べている。

また、この新しいチップの可能性はこれに留まらず、研究者らは、計算モデルを使ってこのシステムのデータ伝送能力を測定したところ、最終的には最大100Pbit/sという目を見張るような速度に到達する可能性があるとのことだ。

研究の要旨

光ファイバー通信は、インターネットの基幹通信だ。そのコア技術は、サイズ、速度、エネルギー効率において限界に近づいており、データ伝送容量のさらなる拡大を実現する新技術が求められている。本発表では、窒化ケイ素リング共振器を用いた単一の光周波数コム光源が、ペタビット毎秒領域のデータ伝送をサポートすることを明らかにする。実験的には、37コア、7.9km長のファイバーにおいて、単一のマイクロコームリング共振器から得られる223波長チャネルを用いて、1.84Pbit/sの伝送を実証した。また、超並列空間波長多重データ伝送システムにおいて、単一のチップスケール光源で100 Pbit sをサポートできることを示す理論解析も行っている。この成果は、デバイス効率の高い送受信機を目指した将来の通信システム設計に大きな変化をもたらす可能性がある。

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