SonyとHondaの電気自動車分野における合弁会社である「ソニー・ホンダ・モビリティ」は、成長するEV市場で後発企業が競争していくためにある計画を持っている。それは、Sonyが得意とするエンターテインメントを中心に据えて、TeslaなどのトップEVメーカーに挑戦する方法のようだ。
Sonyは数年前からEVコンセプト「Vision S」を予告し、市販に近づけていた。同社は、自律走行などの技術の基盤となる優れたエンターテインメントとソフトウェアを搭載することにこだわっていた。
だが、その後、同社が自ら「バッテリーや自動車を作る」ことはないと述べた所から、少し状況は変わっていたようだ。その代わり、既存の自動車メーカーとのパートナーシップの確立に水面下で力を注いでいた。
そして3月、SonyとHondaは、世界が驚く提携を発表した。そして、10月にはソニー・ホンダ・モビリティという電気自動車製造のための合弁会社を設立し、2026年の米国での販売を目指すことを発表している。
そして今回、ソニー・ホンダモビリティの幹部が、Financial Times紙の新しいインタビューで、今後同社が強力な技術を活用して、TeslaなどのEVの競合他社に挑戦する方法を説明している。その中で語られたのが、タイトルでもご紹介した興味深い内容だ。
SonyのAIロボティクス事業のシニアバイスプレジデントであり、新規事業ベンチャーのCOOである川西泉氏は、EVにコンテンツやエンターテインメントサービスを追加することで競争に勝てることを説明し、次のように述べている。
Sonyは、人を動かすコンテンツやサービス、エンタテインメントの技術を持っています。これらの資産をモビリティに適応させていく、これがTeslaに対する強みです。
また、「Teslaはコンテンツサービスを提供していない」とし、ソニー・ホンダモビリティのEVにPlayStation 5を搭載することは、“技術的に可能”であるとしている。
新しく設立された合弁会社のリーダーたちは、新CEOの水野泰秀氏が説明するように、同社の電気自動車はエンターテインメントに特化したものになると主張している。
私たちが提供したいエンターテインメントやネットワークに対応したハードウェアとしてのクルマを開発します。
ただし、これらを実現するためにはソニー・ホンダ・モビリティが解決すべきもうひとつの課題がある。それが、実際のモビリティの部分である。それについて、川西氏は以下のように、開発の困難さを認めている。
車内空間を楽しむには、運転しなくてもいい空間にする必要があります。そのためのソリューションが自律走行です。そこまで行くには、自律走行は現状から相当な進化が必要で、それには時間がかかります。
SonyとHondaは、この自律走行型エンターテインメントEVが自動車業界における差別化要因になることに賭けているようだ。2019年からNetflixを搭載し、現在はTikTokを搭載したTesla、ムードフレグランスを放出できるLincolnのコンセプトなど、車内でより長く過ごしてもらおうとする他の自動車メーカーのトレンドに追随するものだ。
ソニー・ホンダモビリティは、EV市場で優位に立つために、エンターテインメントの選択肢を増やすことも一つの方法だと考えている。ただし、実用化にはまだまだ時間がかかりそうだ。
好きなゲームができるようになったとしても、自走しないのであれば、同乗者や停車中にしか機能しない。それは彼らが望むものではないだろう。
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