QualcommのSnapdragon 8 Gen 1は散々な評価だったが、製造をTSMCに乗り換えてから評価は大きく変わり、昨年のSnapdragon 8 Gen 2では、印象的なパフォーマンスとエネルギー効率の高さから高い評価を受け、フラッグシップAndroidスマートフォンにおけるQualcommの地位を独占的な物にした。とはいえそれはAndroidでの話であり、Appleがスマートフォン向けSoCで全面的にリードしていることはまだ厳然たる事実だ。しかしQualcommの新型SoC「Snapdragon 8 Gen 3」は、その差を決定的に縮める物になるかも知れない。
Armの最新のTCS23プラットフォームをベースとするQualcommのSnapdragon 8 Gen 3は、AppleがすでにA17 Proチップで利用している3nmノードではなく、TSMCの4nmノードにこだわることが明らかになった。これは最新技術にこだわる一部の人々の眉をひそめるだろうが、Qualcommが取り得る最も賢明な決断でもあるだろう。
Qualcommが本日発表した、スマートフォン向け最新フラグシップSoC「Snapdragon 8 Gen 3」は、前世代からの堅実なアップデートが図られ、カメラ機能、ゲーム性能の向上が期待できる。だがそれ以上に同社が誇るのは、生成AI機能の飛躍だ。
CPUは30%、GPUは25%の性能向上
Snapdragon 8 Gen 3は、これまでの、1つのプライムコア、3つのパフォーマンスコア、4つの高効率コアという「1:3:4」コア構成ではなく、新しく「1:5:2」コア構成が取り入れられている。プライムコアは3.3GHzのArm Cortex-X4だが、その他のCPUコアの型番は確認できなかった。恐らく、5つのパフォーマンスコアはCortex-A720、高効率コアはCortex-A520になると見られる。これら5つのパフォーマンスコアはすべて同じ周波数で動作するわけではなく、3つは3.2GHz、2つは3.0GHzで動作する。CPUの性能は、30%高速化、20%効率化されているという。このチップは4nmプロセスで作られている。RAMについては、最大容量が24GBとなった。
Qualcommは、GPUの詳細については触れておらず、単に「Adreno GPU」とだけ発表し、モデル番号も明らかにしなかった。しかし、25%高速化し、25%効率化するとされている。Qualcommは、これらのCPUとGPUの向上により、このプラットフォームは最大240FPSのゲームと外部モニターでの最大8Kアップスケーリングを実現するとしている。さらに、Snapdragon 8 Gen 3は、より高品質なシーンのフレームを生成し、消費電力を急増させることなくフレームレートを2倍にすることができるとのことだ。また、Unreal Engine 5 Lumenグローバルイルミネーションと反射をサポートする初のモバイルプラットフォームでもある。
生成AIへの取り組みを本格化
だがこれらの性能はQualcommとしてはメインテーマではないようだ。同社が2024年に向けて注力しているのは生成AIであり、今回のSnapdragon 8 Gen 3もAIが主役だ。内蔵のニューラル・プロセッサ・ユニット(NPU)は、性能が最大98%向上し、ワットあたりの性能比が最大40%向上している。Qualcommによると、新しいAIエンジンは、特にオンデバイスの生成AIをサポートするために構築され、応答間の遅延を減らし、プライバシーを向上させるという。このツールがその宣伝文句に沿うものであれば、Tensor G3に大差をつけることができるだろう。
当然のことながら、AIは今年のコグニティブISPに拡張され、音声コマンドだけでAIを活用した写真・動画編集が可能になる。またナイトヴィジョン・ビデオ・キャプチャーもAI処理により、暗所撮影能力が大きく向上しているようだ。
これに加えて、Snapdragon SoundとQualcommが得意とするモデムの両方が改善されている。最新のX75 5Gモデムには、AIハードウェアアクセラレーションが統合されている。
このチップはまた、QualcommのモバイルSoCの中で初めてSnapdragon Seamlessをサポートする。Snapdragon Seamlessは、OEMやOSに関係なくデバイスを統一することを目的とした新しいクロスプラットフォーム・エコシステム・イニシアチブである。
Qualcommによると、Snapdragon 8 Gen 3は、今後数週間のうちにフラッグシップAndroid端末に搭載される予定で、年明け前の発売もあり得るようだ。どの企業が年内に新ハードウェアを発表するかは正確には不明だが、本日の発表ではAsus、OnePlus、Xiaomi、Oppoがパートナーとして挙げられており、2023年を締めくくる最後のガジェットの可能性がある。また、年明け早々にはSamsungのGalaxy S24シリーズに搭載される事が見込まれる。
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