Elon Musk氏は、同氏の脳マシンインプラント企業Neuralink社が、初の脳インプラント手術を行ったことをXへのポストで明らかにした。
Musk氏は「昨日、最初の人間がNeuralink社からインプラントを受け、順調に回復している」と述べており、Neuralink社の画期的な成果を強調した。
4年半前、Musk氏は、Neuralink社が2020年末までに最初のインプラントを人間に機械インストールする計画を明らかにしていた。同氏のスケジュールに対する楽観的なアプローチは有名だが、それでもNeuralinkはほぼ予定通りの成果を上げていた。
ただし、Reutersの報道によると、同社では1,500匹以上の動物が死亡しており、不必要で過剰な残酷行為が行われていたようだ。これはリークされた内部文書や現従業員、元従業員の証言から明らかになった。
そうした中ではあったが、同社は無事FDAから認可を受け、今回の最初の実験を行うことに成功した。患者の身元は明らかにされていないが、この”Prime”研究の参加者は、22歳以上で、脊髄損傷またはALSによる四肢麻痺があり、発作の既往歴がなく、ペースメーカーのような他の活動的なインプラントがなく、継続的なMRIスキャンの予定がないことが条件である。
N1インプラントはコイン型で、25セント硬貨ほどの大きさである。このインプラントは、患者の頭蓋骨の一部を置換するもので、皮膚の下にある周囲の骨と同じ高さに位置し、64本の極小で柔軟なワイヤーが、R1と呼ばれる高精度の手術用ロボットによって、脳の丈夫で保護的な硬膜層を通って、その下の大脳皮質に押し込まれる。
これらのワイヤープローブは、脳とインプラントの間に1,024の双方向通信チャンネルを開き、インプラントはコンピューターや機器とワイヤレスで通信する。少し訓練すれば、患者は自分の頭で直接これらの装置を操作できるようになる。初期の動物実験で、猿が脳波でタイピングしている姿で有名にもなった。
Neuralinkは、Brain Computer Interface(BCI)にさまざまなアプローチをとる他の多くの神経インプラント企業とともに、無反応で麻痺した身体に閉じ込められた人々に電子通信を開放するという目標から始めている。しかし、ひとたびデバイスとその設置、トレーニングのプロセスが理解されれば、この種の技術はあらゆる方向に進む可能性がある。
例えば、四肢麻痺患者が電動車椅子を操作できるようにしたり、あるいはロボット義肢を使用して、以前は不可能だった方法で世界と相互作用できるようになったりする可能性もある。更に、これらのインプラントは、神経系の損傷を回避して下半身の手足と再接続し、運動制御だけでなく感覚も回復させるために、メッセージをルーティングできる可能性がある。視覚皮質とのインターフェイスにより、目の見えない人に視力をもたらすことも可能になるかも知れない。
そしてこの技術の最終的な目標は、それ以外の多くの人々にもそうした機能を開放することだ。人間の脳は現在、キーボード、タッチスクリーン、音声認識ソフト、画面ベースの読み上げといった、“前時代的”なインターフェースを通じてコンピューターとコミュニケーションしている。Musk氏は、この障害を取り除き、人間と機械の間での広帯域、超高速データ転送を可能にし、未来のAIシステムに追いつく可能性のあるサイボーグ・ハイブリッドへの人類の進化を加速させることだ。
そうなれば、SFで使い古された様な内容の未来が現実になるかも知れない。最終的には他人の心を読んだり、身体を乗っ取ったり、脳に技術をアップロードし、スキルを身につけることが出来る様な世界が訪れるかも知れない。
BCIに取り組む企業はもちろんNeuralinkだけではない。Blackrock Neurotech社、Synchron社、Braingate社など、他の企業はNeuralinkよりも早く最初の患者の脳に埋め込んでいる。ClinicalTrials.gov(公的・私的臨床試験のデータベース)で検索すると、世界中で完了した、あるいは進行中のBCI関連の研究が数多くヒットするのを見ることが出来る。
最近はAIに傾倒しつつあるMusk氏だが、この方面での熱意をまだ失っていないことを願いたい。
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