市場分析会社TrendForceは、2022年第3四半期のNAND価格予想を修正した。NANDの供給過剰がこれまでの同社予想を上回っており、クライアント向けNAND搭載製品の価格は、従来予想の3~8%から8~13%まで低下する見通しだ。この需給バランスの悪化は、TrendForceによると、ノートPC、テレビ、スマートフォンなどの家電製品の22年下期のピークシーズンが異常に遅いことが原因だという。
景気後退・メーカー間の競争激化が価格下落の要因か
TrendForceは、NANDフラッシュの出力とプロセス設計の革新が進む一方で、より厳しい価格下落の原因は需要が引き続き低迷した第2四半期にあると見ている。また、176層の顧客向けQLC SSDの製造が本格化したことや、YMTCの市場規模拡大計画により、メーカー間の価格競争が激化し、顧客の発注量増加のインセンティブとして価格譲歩を余儀なくされたことも要因として挙げられる。
また、広範な景気後退、数十年にわたる高インフレ、継続的な金利上昇により、消費者はスマートフォンやテレビのアップグレードといった「消耗品」への支出を抑えるを得ず、一般向けPC市場も2022年にかけて8.2%縮小が見込まれていることも一因にあるだろう。
ノートPCに関しては、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるロックダウンをきっかけに、需要が急増したが、それらデバイスはまだまだ寿命、性能面で健在であり、早期の買い換えの必要もないだろう。
NAND型製品の材料在庫は、需要の減少により増加し続け、サプライチェーンのリスク要素となっている(倉庫が満杯になると損失が発生する)。流通業者の在庫処分の遅れや顧客の保守的な仕入れ姿勢により、在庫問題は製造現場にも波及している。
今回修正予想 | 予想 | |
---|---|---|
3D NAND Wafers (TLC & QLC) | – 15-20% | – 5~10% |
Client SSD | – 8~13% | – 3~8% |
Enterprise SSD | – 5~10% | – 0~5% |
eMMC, UFS | – 8~13% | – 3~8% |
Total NAND Flash | – 8~13% | – 3~8% |
その結果、システムインテグレーターは第3四半期の受注を減らし、第1四半期に購入した部材の売れ残りによる在庫増を消化しなければならなくなった。
全体的な景気後退により、最も強力なハイ・パフォーマンス・コンピューティング (HPC) 環境を除けば、デバイス全体の購入が鈍化しているため、エンタープライズ向け SSD も需要が減少している。このことから、TrendForce は、エンタープライズ SSD 市場の価格は第 3 四半期に 5~10% 下落すると予測している。
IoT機器や低価格家電の主流であるeMMC製品は、クライアントレベルの供給過剰の傾向を受け、最終的に8~13%の価格下落につながる可能性があると思われる。スマートフォン、メモリーカード、USBドライブなどのUFSベースの製品も同様である。
NANDを搭載した製品が縮小している一方で、HDDは前年比33%減となるなど、ストレージ全般が逼迫しているようだ。
パソコン用、外付けストレージ用、PS5向け拡張SSDなど、最高のSSDを検討している場合は、今後更に安くなる可能性が高そうだ。(ただし円安がこれ以上進まなければの話だが)
コメントを残す