Qualcommは先日、最新のArmベースOryonコアを搭載した新しい4nmプロセッサ「Snapdragon X Elite」を発表した。これと共にQualcomm、プレス関係者やアナリストを招いてプライベートイベントを開催し、Snapdragon X Eliteのパワーと、Intel、AMD、Appleの現行チップとの比較についてプレビューを行った。
デモのために、Qualcommは2つのSnapdragon X Eliteリファレンスデザインを用意している。システム構成は、2024年半ばにSnapdragon X Eliteが小売市場に投入される際に、消費者がどのようなシステムでSnapdragon X Eliteを使用するかを想定したものだ。構成Aは、高性能ノートPCに期待されるスペックを備えており、構成Bは、薄型軽量のシステムを想定した物だ。
構成A | 構成B | |
---|---|---|
2コア最大クロック | 4.3GHz | 4.0GHz |
オールコア最大クロック | 3.8GHz | 3.4GHz |
RAM | LPDDR5X-8533 | LPDDR5X-8533 |
ディスプレイ | 16.5インチLCD 3840×2160 | 14.5インチ OLED 2880×1800 |
厚さ | 16.8mm | 15mm |
デバイスのTDP | 80W | 23W |
冷却機構 | アクティブ | アクティブ |
バッテリー | 87Wh | 58Wh |
構成Aは、デュアルコアのブーストクロックが4.3GHz、オールコアのブーストクロックが3.8GHzのSnapdragon X Eliteを搭載している。厚さ16.8mmのテスト機は、解像度3840×2160の16.5インチLCDスクリーンを搭載している。TDPは80W、バッテリーは87Whだ。
一方、構成Bは、デュアルコアとオールコアのブーストクロックがそれぞれ4GHzと3.4GHzにわずかに低下したSnapdragon X Eliteを搭載している。解像度は2880×1800で、14.5インチのOLEDスクリーンを搭載している。このシステムのTDPは23Wで、バッテリーは58Whだ。TDPが低いため、Qualcommは構成Bでパッシブ冷却システムを使用することもできた。
Qualcommは、Snapdragon X Eliteを、TDPが無制限の2023年製Razer Blade 15に搭載されたCore i7-13800H、80Wの2023年製Asus ROG Zephyrus G14に搭載されたRyzen 9 7940HS、および2022年製13インチMacBook Proに搭載されたApple M2と比較した。Qualcommは、モバイルRaptor Lake-Hのフラッグシップ・パーツであるCore i9-13900Hとの比較は行っていない。また、QualcommはSnapdragon 8cx Gen 3のデータも共有しなかった。
Qualcommのテストシステムで特筆すべき点の1つは、LPDDR5X-8533を搭載していることだ。これは、一部のベンチマークでSnapdragon X Eliteがライバルよりも優れていることを意味する。比較のため、Core i7-13800HとApple M2はLPDDR5x-6400をサポートし、Ryzen 9 7940HSはネイティブでLPDDR5x-7500を採用している。したがって、Snapdragon X Eliteは、Core i7-13800HとApple M2よりも33%、Ryzen 9 7940HSよりも14%高いメモリ帯域幅を利用できる。
シングルスレッド性能から見ていくと、Snapdragon X Elite(構成A)はGeekbench 6.2でCore i7-13800H、Ryzen 9 7940HS、Apple M2をそれぞれ7%、9%、11%上回った。
しかし、Cinebench 2024ではより高い向上が見られた。Snapdragon X Eliteのシングルスレッド性能は、Core i7-13800H、Ryzen 9 7940HS、Apple M2よりもそれぞれ最大15%、21%、9%高かった。
Snapdragon X Elite(構成A)は、マルチスレッドベンチマークで競合製品を引き続き上回っている。Geekbench 6.2では、Snapdragon X EliteはCore i7-13800H、Ryzen 9 7940HS、Apple M2よりもそれぞれ5%、24%、50%高いスコアを記録した。
Cinebench 2024では、Snapdragon X EliteはCore i7-13800Hを22%、Ryzen 9 7940HSを25%、Apple M2を113%上回った。
Qualcommは、UL Procyon AIベンチマークを使用してAI性能の結果をいくつか示している。Snapdragon X EliteのHexagon NPUは、TDPに関係なく最大45TOPSの性能を約束しているため、どちらの構成でも同じAI性能を示した。Hexagon NPUが、IntelやAMDのチップよりも最大10倍高いAI性能を発揮するのは、後者がこれに特化した開発を行っていなかったことからも特段驚くべきものではないだろう。
Qualcommは、GFXBench Aztec Ruinsと3DMark Wildlife Extremeを利用して、Snapdragon X Eliteの統合グラフィック性能を競合他社と比較した。GFXBenchと3DMark Wildlifeは、どちらかと言えばスマートフォン向けのテストであるため、Qualcommが選択したグラフィックベンチマークは好ましくない。しかし、これがベンダーが提供するベンチマークの注意点です:メーカーは通常、自社製品が優れているベンチマークを選択する。そのため、これらの結果はすべて、そのまま鵜呑みにしないことも必要だ。
Snapdragon X Eliteは、Intel、AMD、Appleのチップを大きく引き離している。構成Aは、Aztec Ruinsにおいて、Core i7-13800H、Ryzen 9 7940HS、Apple M2をそれぞれ98%、151%、19%上回るフレームレートを叩き出した。一方、構成BはApple M2と同率だった。Wildlife Extremeに関しては、Snapdragon X EliteがCore i7-13800H、Ryzen 9 7940HS、Apple M2を上回り、性能差はそれぞれ67%、54%、9%だった。
Snapdragon X Eliteを搭載したノートパソコンが市場に出回るのは2024年半ばになる。Snapdragon X Eliteが現時点では印象的な性能を示しているとは言え、小売店に並ぶ頃には、モバイルRaptor Lake Refresh、Strix Point、M3など、Intel、AMD、Appleの新世代のチップと戦わなければならなくなるだろう。
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