気候変動によって世界の海の色が変わってきている

masapoco
投稿日
2023年7月17日 16:28
ocean color

気候変動によって世界の海は劇的な変化を遂げつつあるが、変化は水位だけではなく、海の色そのものも変わりつつある事が新たな研究から明らかになった。

人工衛星は長年にわたって地球の海の色を監視し、水に反射する光のデータを収集してきた。特に、中分解能撮像分光放射計(MODIS)センサーを搭載したAqua衛星は、過去20年間にわたり高品質の全球海洋色データを収集し、この取り組みに貢献してきた。

マサチューセッツ工科大学(MIT)と英国国立海洋学センターの研究者チームがこのデータを精査したところ、過去20年間における海洋の色の変化が、自然変動だけでは説明できないことを発見した。これらの変化は、人為的な気候変動の影響と一致している。

海の色は、その上層に生息する生物の色を反映している。青く深い海には一般的にほとんど生命は生息していないが、緑色の海は主に植物プランクトンで構成される生態系が繁栄していることを示している。緑色の色素クロロフィルを含むこれらの小さな植物のような微生物は、海の生態系にとって極めて重要である。栄養分を供給するだけでなく、光合成によって酸素を作り出し、二酸化炭素を吸収するため、海洋が気候変動にどのように対応しているかを示す重要な指標となっている。

研究者らは、このような変化によって、地域によっては海がより青く、あるいは緑色に見えるようになると予想しているのだ。

研究者たちは、このような色の変化が今後100年の間にどのように起こるかを予測するモデルを開発した。彼らの予測によると、2100年までに世界の海の半分以上が気候変動によって色が変わるという。

この色の変化は、単なる見た目の変化ではない。水面下で起きている重大な変化の警告サインなのだ。今回の研究結果は、クロロフィル以外の海の色をモニタリングすることで、気候変動が海洋生態系にどのような影響を与えているかを、より迅速かつ高感度に検出できる可能性があることを示唆している。。研究者たちは、色の変化はプランクトン群集の変化を反映しており、プランクトンを餌とするあらゆるものに影響を与え、海洋の炭素吸収能力を変化させると警告している。

この研究は、気候変動に対する緊急対策の必要性を強調している。海の色の変化は、地球温暖化の影響が広範囲に及んでいること、そして地球の健康を守るために温室効果ガスの排出を削減する必要があることを明確に示している。


論文

参考文献

研究の要旨

強い自然変動は、地球観測衛星から得られる植物プランクトン個体群の、気候変動に起因する可能性のある傾向を覆い隠してしまうと考えられてきた。気候変動によるトレンドを検出するには、30年以上の連続データが必要と考えられていた。ここでは、海洋色(リモートセンシング反射率、Rrs)は多変量であり、いくつかの波長帯は経年変動が小さいため、気候変動トレンドは海洋色(リモートセンシング反射率、Rrs)においてより迅速に現れることを示す。我々は、Aqua衛星に搭載された中分解能画像分光放射計(MODIS)から得られた20年間のRrs時系列を解析し、主に赤道40°以南の世界の表層海洋の56%について、Rrsの有意な傾向を発見した。Rrsの気候変動シグナルは、最新の生態系モデルにおいて、海洋の同程度の割合を占める同じような地域で20年後に現れている。このことは、今回観測された傾向は、気候変動によって引き起こされる海洋の色の変化、ひいては海洋表層の生態系の変化を示していることを示唆している。全体として、低緯度の海は過去20年間で緑が濃くなった。



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