中国の「独身の日(11月11日)」にちなんだ大規模セールが土曜日深夜に終了したが、これまで大々的にこのセールの売り上げ規模が報じられてきた中で、今年は少し様相が違ってきているようだ。ついに世界第二位の経済大国にまで成長した中国だが、不動産バブルの崩壊など、その経済の落ち込みが大きく報じられ、成長に陰りが見える中、かつてのような派手な動きはなりを潜めている。
独身の日セールは、テクノロジー大手のAlibabaによって考案され、2009年に始まった。以来、例年中国小売りにとっては一大イベントに成長している。昨年の独身の日の売上は1.1兆元(23兆円)に達したが、調査会社Bainの調査によると、今年は消費者の77%がセール中に通常以上の支出を計画していないと述べている。
「最近は人々が消費を控えていて、たくさんのものを買いたいという欲求もあまりない」と、23歳の卒業生であるZhang Chuwen氏はAFPに語っている。加えて、彼女の友人たちも、セールを利用して「日常必需品」を購入しているとしており、これまで中国人のイメージとして見られた“爆買い”は少なくなっているようだ。
また、そもそも今年の独身の日セール自体も過去のセールと比べて条件が良くないと言い、一部のウェブサイトはセール前に価格を上げ、セール当日に割引を行っており、実質的に割引きされていないともされている。「価格は他の日とそれほど変わらない。だから何も買いませんでした。私たちは収入が減ったので、少し節約します」と、21歳のGuan Yonghao氏はAFPに語っている。
デジタル経済を専門とするコンサルタント会社VO2 Asia Pacificの共同創設者であるVincent Marion氏によると、今年で2年連続で独身の日の売上は1兆元を超える見込みであるが、「中国の消費者の習慣の変化により、販売は停滞している。消費者は節約を好むようになり、より教育を受け、要求が厳しく、支出においてより慎重になっている」と、今年の消費の傾向を分析する。彼の会社によると、独身の日セールの売り上げは、セール開始10月24日以来の集計で、前年比で7.5%減少している。特に支出の傾向が大きく変化しており、消費者はより保守的な傾向を強め、42%が日常の消費財を注文し、高級セクターの購入が減少している事を指摘している。
北京に拠点を置く電子商取引コンサルティング会社WPIC Marketing + Technologiesの共同創設者兼CEOであるJacob Cooke氏は、AFPに対し、独身の日が「輝きを失った」と述べた。Cooke氏は「ライブストリーミングの普及と二次ショッピングフェスティバルの組み合わせにより、割引商品を大量に購入する時期としての独身の日の相対的な魅力が減少したため」であると述べている。
ライブストリーマーたちも、このショッピングイベントの前年までと比較して、売上が減少していることに気づいており、ライブストリーマーのLiu Kai氏は「今年の独身の日のオンラインセールは、昨年や2年前ほど良くない」と、AFPに語っている。
11月11日の1並びの数字にちなみ、独り者(独身者)を皮肉った祝賀会から始まった独身の日セールは、今年は10月下旬から始まっている。
Alibabaは昨年から完全な売上高を公表せず、前年と同じくらいの売上だったと述べるに留めている。
JD.comは「取引量、注文量、ユーザーエンゲージメントが過去最高を記録した」と報告したが、どの程度の飛躍かは述べていない。
またAlibabaは、独身の日セール期間中およびその準備のためにAIツールを使用した15億件の注文があったと述べており、また事例を強調、独身の日セール成功の指標として、中国国家郵政局の記録的な荷物の動きに関するデータも引用した。
同局によると、独身の日セール関連の10日間で、宅配便の荷物は52.6億個(前年同期比23.22%増)となり、11日の土曜日だけで6.39億個が配達された。これは前年比15.76%増である。
同局は新華社通信に対し、「宅配便の急増は消費市場の回復と拡大に寄与しており、中国経済の回復力と活力を十分に示している」と述べた。
だがこの言葉は、中国経済がこのところ低迷していることを物語っている。荷物の出荷を根拠にその経済の強さを大胆に宣言するのは、実際の売上高に関する目くらまし以外の何物でもないだろう。中国の消費者が実際に大な金額を消費しているのか、それとも代わりに小さな商品をたくさん買っているのかを教えてくれるような売上高の数字をAlibabaなどの販売者が明らかにしたがらないことを考えると、実態は思ったよりも悪いのかも知れない。
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