昨今の急激な暗号通貨の下落と、それに伴うGPU需要の激減、相場の下落の影響もあり、世界第一位のチップ受託生産メーカーであるTSMCへの発注を減らしている顧客が出てきたようだ。
NVIDIAは次世代グラフィックスカードの発売時期にも影響か
ほんの数ヶ月前までは、グラフィックスカードが2倍近い価格でも手に入らなかった状況だったが、まさかこのような状況になるとは誰が想像できただろうか。
DigiTimesによると、これまでのところ、Apple、AMD、Nvidiaの3社が注文を減らしているか、減らす予定であるとのことだ。特に、AMDはN7/N6ノードを使用した製品の注文を減らしており、一方、NVIDIAは次期GPUであるAda GeForce RTX 40シリーズに影響を与える可能性のある注文の削減を検討しているとのことだ。
レポートによると、AMDは、TSMCのN6およびN7ノードで製造された製品について、2022年第4四半期と2023年第1四半期の受注を2万枚減らした。AMDは、TSMCのN5ノードを使った次世代デスクトップCPU(Ryzen 7000シリーズ「Raphael」)とGPU(RDNA 3アーキテクチャベースのRadeon RX 7000シリーズ)をリリースしようとしているので、前世代の製造技術で作られたチップの受注を減らすのは理にかなった選択だろう。しかし、AMDの現行世代「Rembrandt」プロセッサは、TSMCのN6ノードで製造されている。さらに、次世代RaphaelでもN6ノードで製造されたI/Oダイを使っているため、N6の受注を減らすことで、AMDの将来のRyzen 7000シリーズCPUの供給と入手にも影響が出るかもしれない。
また、NVIDIAは、TSMCのN5(あるいは4N)生産の受注を減らすようだ。同社の次世代GPU「Ada Lovelace」は、同社のN5ノードの1つを使ってTSMCで製造されることになっている(おそらく4N。NVIDIA向けにカスタマイズされた「4nm for NVIDIA」と見られる)。少し前の暗号通貨ブームの影響で、NVIDIAのグラフィックスカードは市場に多く出回っていたが、現在の暗号通貨の下落によって、需要は減退し、暗号通貨マイナーたちはグラフィックスカードを中古市場で投げ売りしている状況だ。そこに全く新しいGeForce RTX 40シリーズが加われば、GPU市場はさらに供給過剰になる可能性がある。
NVIDIA(とAMD)はTSMCに容量の前払いを行い、一定の条件に合意したため、TSMCはNVIDIA向けのチップの生産を減らす気はないようだが、最初の納入を、おそらく2023年第1四半期まで遅らせることに合意し、NVIDIAがGeForce RTX 40シリーズの発売を実質的に遅らせられることになる。これにより、NVIDIAとそのパートナーは既存のカードを売り払うことができるが、NVIDIAが次世代製品を発売する前に、AMDがRadeon RX 7000シリーズGPUをリリースする機会を提供する可能性も出てくる。
より可能性が高いのは、NVIDIAが新しいGeForce RTX 40シリーズ「Ada Lovelace」GPUを発売するが、パートナーに既存のGeForce RTX 30シリーズの在庫を売却させるために、最初はそれほど多くのモデルを出荷しないことも考えられる。ともあれ、RDNA 3やAda Lovelaceグラフィックスカードが登場したところで、旧世代製品への需要が十分にあるかどうかは不明だ。
世界最大の家電メーカーの1つであるAppleでさえ、iPhone 14のコンポーネントの注文を初期の9000万個から10%減らしているとDigiTimesは指摘している。明確な理由は示されていないが、需要が軟化していることと、ユーザーがアップグレードする必要性をあまり感じていないことが要因のようだ。(実際13シリーズからほとんどアップグレードがないので当然と言えば当然だが)
ただし、クライアントCPU、GPU、SoCの一時的な供給過剰はあるが、業界は長期的な需要については楽観視しているようだ。現在、AMD、Apple、Broadcom、Intel、MediaTek、NVIDIA、Qualcommが、TSMCの次世代N3(3nmクラス)プロセスを求めて列をなしているとDigiTimesは報じている。TSMCには現在、次の1〜2年の間に登場する予定の5種類のプロセスが存在する。N3、N3E、N3P、N3S、N3Xだ。N3はTSMCにとって長期的なノードになると見られている。
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