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公衆トイレで小便器を使う男性なら恐らく誰もが気にすることは、小便器の周りにどれだけ小便が飛び散っているかだろう。「一歩前進してお願いします」という注意書きがあっても、実情は足下に飛び散った小便を避けながら(時には避けられずに踏みながら)小便をせざるを得ない。また、小便器での立ちションは、実際には自分でも気付かないくらいに小便が飛び散っており、靴や衣服に大いに付着している可能性もある。では、どうすれば小便が飛び散らずに済むだろうか。その問題にデザイン面から挑んだのが、今回ご紹介するウォータールー大学の科学者達だ。

今回、ウォータールー大学の研究グループは実験結果を元に、尿はねの圧倒的に少ない小便器のデザインを考案した。オウム貝に着想を得たデザインが特徴的な、背の高い細長い磁器製の構造で、遊び心から「Nauti-loo」と名づけられた。小便がズボンや靴にかかることにうんざりしている男性や、飛び散った小便を定期的に掃除しなければならない方々にとって素晴らしい結果をもたらす。

「発想の原点は、まさにあなたが考えているところにあります。私たちのほとんどは、持ち場で少し不注意になり、下を見ると斑点のあるパンツをはいていたことがあると思います。おしっこがそこらじゅうに飛び散るのが好きな人はいませんから、飛び散る可能性が極めて低い小便器を作ればいいじゃないですか。」と、ウォータールー大学のZhao Pan(ザオ・パン)氏はNew Scientist誌に述べている。

ちなみに、この手の研究は実は古くから行われている。日本でも、TOTOやLIXILと言った大手の水洗用具を開発しているメーカーは小便が飛び散らないようにあれこれ工夫を凝らしている。それはデザイン面であったり、機能面であったり様々だ。面白いのは、TOTOの小便器で、デザイン面での工夫に加えて、「ここにおしっこをかけるようにすれば飛び散りにくい」というポイントをLEDで照射して表示する最先端技術の無駄遣いのような機能のあるものもある。尿はねへの挑戦は今も続いているのだ。

toto urinal 2019
TOTO小便器。LEDで小便をかけるポイントを示してくれる (Credit: 日刊工業新聞)

今回のウォータールー大学の研究に話を戻すと、尿はねの少ない小便器設計の鍵は、小便の流れが磁器の表面に当たる角度にあるそうだ。十分な角度があれば、小便が飛び散ることはなく、表面をスムーズに流れるようになる。研究の結果、犬は、足を上げておしっこをするときに最適な角度をすでに見つけていることがわかった。パンらがコンピューターでモデル化したところ、人間に最適な角度は30度であることが判明した。

Pan氏とその研究チームは、エポキシ樹脂で覆われた高密度の発泡体でできたさまざまなデザインの擬似便器に、さまざまな速度で染料を噴射する実験も行った。その中には、標準的な市販品の形状や、マルセル・デュシャンが1917年に制作した有名な美術作品「泉」で使用したものに似た便器も含まれていた。

Marcel Duchamp%2C 1917%2C Fountain%2C photograph by Alfred Stieglitz
マルセル・デュシャン「泉」

どれも程度の差はあれ、尿はねがあり、科学者たちはそれをペーパータオルで拭き取りました。濡れたタオルの重さを測り、乾いた時の重さと比較することで、飛散量を定量化したのだ。濡れたタオルの重さが大きければ大きいほど、尿はねの量も大きいということになる。

次のステップは、さまざまな身長の男性に最適な尿の流れる角度を提供するデザインを考えることだった。そこで、長方形の浅い箱ではなく、オウムガイの殻のような湾曲した構造に注目した。そして、その試作品で尿流実験を繰り返したところ、見事に成功。なんと、ほとんど尿はねがなかったのだ。デザインとしては、本稿トップ画像の右から2番目のデザインがそれに当たる。それに対して、他のデザインでは実に50倍もの飛沫が跳ね返っていた。三角形の開口部を持つ丸いデザインで、「Nauti-loo」よりもさらに性能の良いものもあったが、Pan氏らは「高さや幅が実用的ではない」という理由で却下している。

Pan氏は、一般的な小便器をこの「Nauti-loo」タイプに置き換えることで、トイレをより衛生的にし、企業の清掃コストを削減できると考えているが、大量生産にどれだけのコストがかかるかは未定である。

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