OpenAIの絶大な人気を誇るChatGPTが、初めてユーザー数の減少を観測したと、Washington Post紙が報じている。
データ調査会社のSimilarwebによると、ChatGPTの世界中のモバイルとデスクトップのトラフィックは、5月から6月にかけて10%近く減少したという。別のデータ会社Sensor Towerによると、ChatGPTのiPhoneアプリのダウンロード数は6月上旬をピークに減少の一途をたどっているという(via CNBC)。
これは、テック企業がAI製品開発に多額の投資を行い、半ば過熱化している中、チャットボットやその他のAIツールに対する消費者の関心が薄れていることの表れではないか、とWashington Post紙は指摘している。
今年初め、ChatGPTは史上最も急速にユーザー数を増やしたという記録を打ち立てた。GoogleはChatGPTの台頭による検索ビジネスの衰退を懸念し、ChatGPTの成功を再現しようとしているが、そもそものChatGPTの成功は、チャットボットやAIへの幅広い関心というよりも、その目新しさにあったのかもしれない。また、そもそものインターネット環境の普及による利用人口の増加もその一因だったのではないだろうか。
それを物語る直近の例が、7月6日にMetaがリリースしたばかりの「Threads」と呼ばれるTwitterのライバルとなるテキストベースのSNSだ。Threadsは、そのデザインに大きな欠点があり、プライバシーに関して大きな懸念があるにもかかわらず、ChatGPTが保持していた最も急成長した消費者向けアプリとしての記録を簡単に打ち破った。ChatGPTが2ヶ月で1億ユーザーに達したのに対し、Threadsは2日足らずで7000万ユーザーに達した。そしてMetaは、派手なAI新機能に頼ることなくそれを達成した(実際、TwitterはThreadsがTwitterの模倣に過ぎないとして訴訟を起こしている)。
今回のChatGPTのユーザー数が10%も減少したことに関して、チャットボットに全力投球するテック企業にどのような影響を与えるのかは不透明だ。
Washington Post紙は、ChatGPTの人気がチャットボットを維持するためのコストを押し上げ、OpenAIが経費削減のための調整を試みたため、チャットボットの品質が低下したなど、様々な理由があることも示唆している。また、夏の間、学術論文を書く必要のある学生が減っていることも一因なのではないかと分析している。
しかし、ChatGPTは、プライバシーに関連した最近の訴訟や、AppleやSamsungを含め、プライバシーへの懸念から従業員にChatGPTのようなツールを使用しないよう促す企業の増加など、ユーザーのドラマにも対処してきた。OpenAIはまた、有害なChatGPTの回答を検閲することで、ユーザーの反発や規制の圧力に対応し始めた。そのため、一部のユーザーはツールを放棄し、おそらく有用性が低い、信頼性が低い、あるいは単に面白くないと見なしたのかもしれない。
ChatGPTのガードレールに苛立つユーザー
OpenAIやGoogleのようなチャットボットメーカーに対する規制圧力が高まっていることは否定できない。世界中の法律家がAI企業に対して、新しいテクノロジーの害を抑制するためにもっと努力するよう警告している。このような圧力のため、ChatGPTのようなAIツールは現在、チャットボットが誤った情報、有害な指示、偏った視点、憎悪に満ちた内容など、問題のある内容のプロンプトに応答することを制限するガードレールを設けている。
これらのガードレールが、チャットボットが正当な回答を提供するのをブロックしている可能性があると、New York Timesは報じている。したがって、不満を抱くユーザーをChatGPTのような制約の多い大企業のツールから遠ざけ、オンライン上で利用可能になってきているオープンソースの無修正チャットボットに向かわせることになっている可能性もあるという。
New York Times紙によると、現在、数十の無修正チャットボットが存在し、それらはしばしば独立プログラマーやボランティアによって安価に開発され、ゼロからモデルを構築する必要もほとんどないという。これらの無修正チャットボットには限界があるかもしれないが、ChatGPTが反応しないようなプロンプトにしばしば関与する。それこそ、以前報じたようにMetaのオープンソース大規模言語モデル「LLaMA」を用いて、卑猥な会話を楽しむためのセックスボットを開発するような例も出てきているように。
そして、他のユーザー特典もある。無修正チャットボットは、ユーザーの特定の視点を支持するようにカスタマイズすることができる。おそらく、一部のユーザーにとっては最大の魅力だろう:これらのチャットボットが収集するデータは、明らかにビッグテック企業によって監視されていないからだ。
しかし、検閲されていないチャットボットには、ChatGPTのような人気ツールが法律家の監視を受けるのと同じリスクもある。専門家はNew YorkTimes紙に、検閲されていないチャットボットは、広く拡散する可能性のある誤った情報や、児童の性的搾取に関する記述のような有害なコンテンツを吹き込む可能性があるとも語っている。
ChatGPTの終わりの始まりなのか?
今回のChatGPTのユーザ−数の減少は、その終わりの始まりなのだろうか?確かに生成AIは初めて触れる人には新しい刺激を与えてくれる物ではあるが、日常的に使うには正しいプロンプトを学ぶ必要があるのが現状の問題でもある。そのためのプロンプト・エンジニアリングという手法も生まれている。だが、これは生成AIの始まりに過ぎないとも言える。
以前OpenAIのSam Altman氏は、今後の目標として、こうした生成AIを使いこなすためのコツである「プロンプト・エンジニアリング」が不要になる未来を語っていた。これが実現した暁には、よりユーザーにとって扱いやすく、適切な答えを得やすくなるだろう。
また結局のところ、ChatGPTのようなテクノロジーは、既存のアプリやサービスに付属の機能として機能している面も大きい。アプリのインストールやWebサイトのヒット数だけでは、その利用範囲は推し量れない。究極的な未来は、生成AIが様々なサービスの基盤となり、人々がChatGPTや生成AIといった機能やその意味を理解する必要がなくなり、まさに日常に溶け込むことだろう。
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