TSMCは今週、アリゾナ工場の開設式典を開催し、同社として米国初の工場を祝うと同時に、生産施設の大規模な拡張計画を発表した。同時に、世界最大のファウンドリは、アリゾナ州フェニックス近郊のFab 21の次のフェーズに数百億ドルを投資し、生産能力を大幅に拡大し、2026年までにN3プロセス技術によるチップの生産を開始する予定であることを明らかにした。
アリゾナ州にあるTSMCのFab 21第1期建設は今年初めに完了し、今週、同社は同施設への生産ツールの設置を開始した。
このファブには、ASML、Applied Materials、KLA、Lam Research、東京エレクトロンなどの企業のツールが今後数四半期で導入され、2024年初頭にオンラインになる予定である。このファブでは、TSMCのN5ファミリ(現在、N5、N5P、N4、N4P、N4Xノードを含む)に属するさまざまなプロセス技術を使ってチップを生産する予定だ。このファブの生産能力は、月産約30,000枚の予定だが、正確な数は実際の技術や設計に依存することになる。
AMD、Apple、NVIDIAなどの企業は、数年ぶりに米国で先端チップを生産するために、Fab 21フェーズ1に注文を出すことになっている。
しかし、TSMCがFab21に用意しているのはそれだけではない。同社は現在、同地に第2工場を建設し、米国の生産能力をさらに拡大し、さらに新しい生産ラインを設置する意向であることを発表している。
アリゾナ工場は、TSMCの生産能力を月産約5万ウェハーに拡大し、同工場への投資総額は400億ドルに達する見込みだ。これは、TSMCが最初のアリゾナ工場に行った120億ドルの投資と比べると、280億ドルも跳ね上がり、新しい工場のコストが上がり続けていること、そしてTSMCが米国内でより大きなインフラ投資をすることに抵抗がなくなってきていることを明確に示している。Reutersの報道によると、TSMCはアリゾナ工場からの年間収益は100億ドル規模になると予想している。一方、この工場を利用するTSMCの顧客は、ファウンドリで製造した製品を米国内で販売することで、約400億ドルの収益を上げることになる。
2026年に稼働予定のアリゾナ第2工場は、最初の工場よりも1世代先に稼働を開始し、TSMCのN3ファミリーの生産ノード(N3、N3E、N3P、N3S、N3Xなど)のチップを生産する。TSMCは2023年初頭に最初のN3チップを顧客に納品する予定なので、このファブは設立時点ではまだ最先端技術を提供するが、オンラインになる頃には技術的には最先端ではなくなる。TSMCは以前から、最先端の生産は台湾内で行うことを示唆しており、それは実際の研究開発が台湾で行われていることが大きな理由であり、今回のアリゾナ工場の計画はその姿勢と一致している。
生産能力に関しては、新アリゾナ工場は、既存の兄弟工場と同様に、TSMCでいうところの「メガファブ」になる予定である。つまり、月産25,000枚程度のウェハーを生産するミッドレンジファブということになる。TSMCは新ファブだけの具体的な生産量を明らかにしていないが、Fab 21が2万枚/月の予定であることから、このファブはもう少し大きく、3万枚/月近くになるようである。それでも、TSMCのアリゾナ工場は、月産5万枚とTSMCの中でも小規模な部類に入り、5万枚はTSMCのクラス最高レベルのギガファブ1基の生産能力の半分に過ぎない。このため、2つ目の製造ラインを設置しても、TSMCの米国での事業は、同社全体のチップ製造能力のうち、比較的小さな割合を占めるに過ぎない。
今後、TSMCはすでにアリゾナ第2工場の建設に着手しており、通常の工場建設のスケジュールを考えると、2024年初頭にはシェルが完成すると予想される。その後、TSMCはさらに2年程度かけて設備を整えることになる。
一方、TSMCは2025年後半に台湾のN2ノードを使ったチップの生産を開始する予定である。このノードでは、TSMCのナノシート・ベースのゲート・オールラウンド電界効果トランジスタ(GAAFET)を使用する最初のノードとなり、時間の経過とともにバックサイド・パワー・デリバリー(BPD)も採用される予定である。しかし、すべての製品が最先端ノードを必要とするわけではないので、TSMCはN3の米国内生産能力を確保するのに苦労することはないだろう。
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