AMDは5月24日からオンライン及び対面形式で開催される「COMPUTEX 2022」に先駆けて行われた基調講演において、同社の新製品などに関する発表を実施。その中で、最新CPU「Ryzen 7000」シリーズを発表した。
- AMDが次世代CPU「Ryzen 7000」シリーズを発表。
- L2キャッシュが従来比2倍、最高クロック5GHz超になり、シングルスレッド性能が15%向上。
- DDR5 SDRAMやPCIe 5.0に対応。TDP最大170W。
- Ryzen 7000シリーズのリリースは2022年秋を予定している。
新プラットフォーム「AM5」と共に登場するRyzen 7000
Ryzen 7000シリーズの概要
Ryzen 7000シリーズ(コードネーム:Raphael)は、AMDの全く新しい「Zen 4コア・アーキテクチャ」に基づいて、チップレットテクノロジーで構成される。CCD(Core Complex Die)はTSMCの5nmプロセスで、IOD(I/O Die)は6nmプロセスで製造されるとのことだ。
CCD(Core Complex Die)について
AMDのZenマイクロアーキテクチャーにおけるCPUダイの事。CPU Compute Dieとも。Zen 2コア・アーキテクチャからは、CPUとI/Oのチップを必要に応じて組み合わせる「チップレット」と呼ばれるマルチモジュール設計(MCM)が取り入れられており、CPUコアを内蔵したダイを「CCD」、入出力回路を搭載したダイを「IOD(I/O Die)」と呼んでいる。
チップレット設計により、CCDの数を変えることで性能を柔軟に変えることが出来るようになり、例えば上位クラスでは2つのCCDに1つのIOD、エントリークラスは1つのCCDに1つのIODと言った形で、組み合わせを変えることが出来るのが特徴。
CPU周りの特徴は以下の通りだ。
- 5nmで製造されるCCDは最大2基搭載される
- CPUのL2キャッシュ容量は1コア当たり1MBに増加(従来比で2倍)
- CPUのシングルスレッドは15%以上のパフォーマンス向上が見られる
- CPUコアは最高クロック周波数が5GHz以上も
- ML(機械学習)ベースのAI処理を高速化する命令セットを追加
I/O周りの特徴は以下の通り。
- 6nmで製造されるIODが1基搭載
- I/OダイにRDNA 2アーキテクチャのGPUを統合
- 映像出力を最大4系統まで搭載可能(DisplayPort 2.0とHDMI 2.1をサポート)
- デュアルチャネルDDR5 SDRAMをサポート
- USB 3.2 Gen 2×2ポートを最大14基搭載可能
- PCI Express 5.0バスを最大24レーン搭載可能
- Wi-Fi 6/6E(IEEE 802.11ax規格の無線LAN)とBluetooth 5.2を搭載可能
今回の発表では、詳細が明らかにされなかった部分もある。例えば、CPUコアが最大いくつになるのか、新しい命令セットの詳細についてなどだ。これは、リリースされるタイミングまでに明らかにされるとのことだ。
なお、シングルスレッドで15%以上の性能向上とのことだが、これはRyzen 9 5950Xとの、Cinebench R23シングルスレッドでのテストによる比較での数字とのことだ。
Socket AM5対応となりCPUがLGAパッケージに変更される
CPUパッケージが、Zen 3コア・アーキテクチャまで採用されていた、PGA1331から、今回LGA1718へと変更された。これにより、これまでの製品とは互換性がなくなっている。マザーボード側のスロットも「Socket AM4」から「Socket AM5」へと変更されている。
また、信号伝送用のピンが、AM4では1,331ピンだったのが、AM5では1,718ピンと数が増えており、多くの信号線をCPUとマザーボードの間に通せるようになっている。これにより、PCI Expressのレーン数、USBのポート数、ディスプレイ出力のポート数が増えるといったメリットがもたらされている。
また、LGA化に伴い、ピンがマザーボード側に配置されたことも地味に大きな変化だ。これまではCPU側にピンがあり、配置する際に折れてしまうと言う事故が起きやすかったが、CPU側のピンがなくなったため、それも少し改善されるのではないだろうか。
Socket AM5の特徴は以下の通りだ。
- 170Wの最大消費電力をネイティブサポート
- DDR5メモリとPCI Express 5.0バスに対応
- Socket AM4用のクーラーを装着できるような物理的配慮を実施
新型チップセット「AMD 600シリーズ」も登場
Socket AM5に対応するチップセットとして「AMD 600シリーズ」も登場する。今回発表されたラインアップは以下の通り。詳細は明らかになっていない。
AMD X670E(「E」はExtremeの意)
- 「並ぶものなき機能」を備えるチップセット
- 「究極のオーバークロック」に対応
- PCI Express 5.0バスをフル活用可能
AMD X670
- 「エンスージアスト向けのオーバークロック」に対応(X670Eから機能を削減)
- PCI Express 5.0接続のストレージとGPUを接続可能(GPU用バスはオプション)
AMD B650
- メインストリームモデル向けの手頃なチップセット
- PCI Express 5.0接続のストレージを接続可能
これらのチップセットを搭載するマザーボードはパートナー企業を通して発売される。
Core i9-12900Kに圧勝のデモンストレーション
AMDは発表の中で、Ryzen 7000シリーズの試作品(16コアであること以外の詳細は不明)の動作デモンストレーションを披露した。
この試作CPUで「GHOSTWIRE: Tokyo」を動作させており、5.5GHzを超えるクロック周波数を記録している。また、このCPUとIntelのCore i9-12900K(Pコア8基16スレッド+Eコア8コア8スレッド)の性能を比較する「Blender」のタイムラプスデモでは、試作CPUの方が最大31%高速に処理を終えることができたとのことだ。
発売は今年の秋になるとのことで、今後徐々に詳細が明らかにされてくることだろう。IntelもRaptor Lakeを同時期にリリースする予定と見られており、両社の戦いが楽しみだ。
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