ISRUとは何か、有人宇宙探査にどう貢献するのか?

masapoco
投稿日 2022年9月2日 14:55
artemis astronaut on moon

アルテミス計画は、今後数年のうちに宇宙飛行士を月面に戻すことを目標にし、様々な機関が協力して進められている。そんな中、水や食料など必要な物資を常に地球から送るのか、それとも宇宙飛行士が自力で生き延びる術を身につけるのか。このような疑問に答えようとするのが、ISRUと呼ばれる学問分野だ。では、ISRUとは何なのだろうか。また、私たちがこれまで知っていた唯一の故郷から徐々に遠ざかりつつある中で、人類の宇宙探査をどのように進展させるのだろうか。

「ISRUは、“In Sitsu Resource Utilization”の略で、“in situ” は基本的に“その場でまたは元の場所から”という意味です」と、パラゴン宇宙開発社のシステムエンジニアで、コロラド鉱山大学で宇宙資源学の修士号を取得したBailey Burns氏は言う。「これは基本的に、現地にある資源を使うという話です。なぜなら、宇宙へ行くときに、地球からすべてを持ち込むことはできないからです。その最大の理由の1つは、地球の『重力の井戸』です。地球の重力から逃れるためには、ロケットのパワーが必要です。1kgを宇宙に出すのに1万円くらいかかると試算されています。要するに、ISRUとは、宇宙にあるものを利用して生活することで、人間が宇宙に恒久的かつ持続的に存在できるようにすることなのです。」

デラウェア大学で化学工学のユニデル・ロバート・L・ピッグフォード講座を担当するNorman Wagner博士は、アルテミス有人ミッションが最初に月に到達する際に最も重視すべき点は、着陸パッドと居住地の両方であると考えている。これは、ロケットの排気ガスが「投射物を作る」ことが出来るからだという。また、放射線や熱の遮蔽も必要であり、さもなければ「地下で生活することになる」と言うのだ。

このように、「アルテミス」の宇宙飛行士が月で生きていくためには、食料と水の両方が必要だが、地球からの常時補給なしにどのように、この両方を確保すれば良いのだろうか。最近の研究では、月の塵をセメントに変えて着陸パッドなどの構造物を作る方法が研究されているが、水と食料についてはどうだろうか?アポロ計画で採取された月のレゴリスを使って実験したところ、わずかながら成功した。水に関しては、月の南極、シャクルトン・クレーターなどのクレーターの奥に水の氷があることから、「アルテミス3号」の着陸地点に指定されている。

月には大気が存在しないが、太陽光が届かないため、これらのクレーターの深部には水の氷が存在する可能性があると考えられている。これは、月の公転軌道に対する軸の傾きが約5度しかないためで、両極には常に太陽光が当たる場所と、全く当たらない場所があるのだ。人間にとって水は最も大切なものだが、月にある水の氷は、飲料や入浴に利用できるだけでなく、現在国際宇宙ステーションで行われているように、電気分解して酸素を作ることもできる。

「アルテミスに関しては、今やっていることがベストなアプローチだと信じています。私たちは、水をどのように利用するのがベストなのか、本当に考えなければなりません。人間は水なしで3日しか生きられないのです。そのため、宇宙で生活する人間にとって、これは最大の関心事の1つです。次の大きな分野は、月のレゴリスを地球のコンクリートのような建築材料として使う方法を見つけ出すことと、クリーンなエネルギー源としてヘリウム3を活用することだと思います。」と、Burns氏は語る。

アルテミスの宇宙飛行士は、何か問題が起きたときに備えて、地球から数日しか離れていないが、将来火星に行く宇宙飛行士は、それほど幸運ではない。地球と火星の位置関係にもよるが、片道6ヶ月の旅になることから、ISRUは月よりもさらに大きな役割を果たすことになるだろう。

「ISRUは、月や火星にとって本当に有益なものになるでしょう。そこで見つけられるいくつかのリソースについてはすでに話しました。もうひとつ、火星に特有なのは、大気中の豊富な二酸化炭素です。地球のように酸素があればもっといいのですが、二酸化炭素が大量にあるというのは、その次善の策なのです。つまり、地球から火星に酸素を輸送する必要がなく、高価ですが、二酸化炭素を酸素に戻すMOXIEのような技術に取り組めば、私たちは呼吸できるようになるのです。もちろん、炭素も副産物として得られます。これらの技術が非常に有益である理由は、先ほど申し上げたように、これらのものを地球から持ってくる必要がなく、月や火星に真に持続可能な宇宙文明を築くことができるからです。」とBurns氏は述べている。

いつも通り、サイエンスを続け、上を向いていこう!

この記事は、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。



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