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米国食品医薬品局(FDA)は、新しいアルツハイマー病治療薬「レカネマブ(Lecanemab)」について、迅速承認をしたと発表した。この治療薬は、病気の初期段階における認知機能低下の進行をわずかに遅らせる可能性があるとされているが、脳出血や脳腫脹発生のリスクも指摘されている。

この治療薬レカネマブは、日本の製薬大手エーザイと米・Biogenが共同開発した。アルツハイマー病患者の脳に蓄積するプラーク中のアミロイドβ蛋白質を標的とするモノクローナル抗体の点滴静注用治療薬となっている。ただし、アミロイドβが沈着して形成されるアミロイド斑がアルツハイマー病の根本的な原因であるかどうか、また、アミロイド斑を除去することで認知機能の低下を大幅に遅らせたり、停止させたりできるかどうかについては、まだ研究者らによって決定的な判断はなされていない

今回のFDAによる承認は「患者への臨床的有用性を予測する合理的な可能性を持つ代用エンドポイント」を使用する加速経路によるものとのことだ。この場合、代用エンドポイントは、アルツハイマー病患者の脳内のアミロイドβプラークを減少させるレカネマブの能力を示す。

しかし、その意義や薬剤の有効性はまだ不明である。『New England Journal of Medicine』誌に発表された第III相臨床試験では、レカネマブによる18カ月間の治療で、初期アルツハイマー病患者の認知機能の低下がわずかに遅くなっただけであった。この試験には1,795人の参加者があり、898人がレカネマブを投与され、897人がプラセボを投与された。認知能力は、認知症の臨床試験で確立された18点満点で評価された。試験開始時、両群(治療群、プラセボ群)ともベースラインのスコアは約3.2点であった。 18ヶ月の試験後、レカネマブ治療群のスコアは1.21ポイント低下し、プラセボ群は1.66ポイント低下した。この0.45ポイントの差は、治療群の方が27パーセント遅く低下したことに相当する。

この臨床試験を担当した研究者は、結論として、「早期アルツハイマー病におけるlecanemabの有効性と安全性を明らかにするために、より長期間の試験が必要である」と指摘している。

この変化が有意であるかどうかは不明である。The New York Times紙の取材に応じた国立老化研究所の神経科医で上級研究員のMadhav Thambisetty博士は、アミロイド斑を除去するこの薬の能力は、科学者の立場からは「刺激的」であると述べた。しかし、「アルツハイマー病患者をケアする医師の立場からは、レカネマブとプラセボの差は、臨床的に意味のある治療効果と考えられる値よりかなり低い。」 と述べている。

一方、この治療薬の安全性については、特に、この薬を投与された3人の患者が脳腫脹と出血で死亡したという報告があることから、懸念が持たれている。その中には、大量の脳出血で死亡した初期段階の認知機能低下の65歳女性も含まれている。アルツハイマー病を研究しているノースウェスタン医学部の神経病理学者で、夫の依頼でこの女性の検死を行ったRudolph Castellani氏は、昨年11月にScience誌に、この女性が脳卒中を起こした後、血栓を治すためによく行われる治療法でこの薬が血管を弱め、それが破裂したと考えている、と語っている。

Castellani氏はScience誌の取材に対し、「これはワンツーパンチです。これは治療が原因の病死であることに疑いの余地はない。もし、患者がレカネマブを投与されていなければ、彼女は今日も生きていたでしょう。」と語っている。

実際に、レカネマブの処方情報には、脳出血や脳腫脹、血液希釈剤の使用に関する警告や注意事項が記載されている

今回のFDAの承認は、類似のアルツハイマー病治療薬であるアドヘルムに対するFDAの承認について、18カ月にわたる議会での調査結果を議員が公表したわずか1週間後に行われたものである。そのアミロイド標的抗体療法に関するデータは、レカネマブよりもさらに決定的なものではなかったが、FDAは外部の諮問委員会と内部の専門家の反対を押し切って認可を下した。

更に、議会の調査では、FDAの承認プロセスが「不正だらけ」であり、FDAとアドヘルムの製造元であるBiogen社の間で「不適切な」コミュニケーションが行われていたことが判明している。また、報告書はBiogen社がアドヘルムを年間56,000ドルという「不当に高い価格」に設定したことを非難している。

エネルギー・商業委員会の次期ランキングメンバーであるFrank Pallone, Jr(民主党)は当時、「この報告書は、FDAがアドヘルムに早期承認を与えるという物議を醸す決定に先立ち、非定型のFDA審査過程と企業の強欲さを記録している」と述べている。

レカネマブの承認後、Pallone氏は次のような声明を発表した。「私は、レカネマブがアルツハイマー病の患者さんとそのご家族のために、進行を遅らせるという期待に応えてくれることを期待しています。また、エーザイとBiogenが過去の失敗から学び、患者さんがこの薬に公平にアクセスできるよう、レカネマブの価格を公平に設定してくれることを期待しています」と述べている。

発表されたプレスリリースで、エーザイはレカネマブの価格を1年分で26,500ドルとすると発表した。これは、Institute for Clinical and Economic Reviewが試算した、本剤の費用対効果を示す範囲(分析グループは1年間の治療で8,500ドルから20,600ドルの間とした)を上回るものだ。

メディケアがレカネマブを保険適用するかどうかは不明であり、これは市場性に大きな影響を与えることになる。アドヘルムについては、価格の高さ、有用性の証拠の欠如、リスクなどを理由に、メディケアは適用を厳しく制限している。臨床試験に参加したメディケア受給者のみがアドヘルムの価格を補償しており、その後、1年分28,200ドルに引き下げられた。

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