台湾積体電路製造(TSMC)は、2022年第3四半期の収益がアナリスト予想を上回り、前年同期比48%増の194億ドルに達したと発表した。
Bloombergの報道によると、7月(1867億6000万台湾ドル)、8月(2181億3000万台湾ドル)、9月(2082億5000万台湾ドル)のTSMCの収益は合計6131億4000万台湾ドル(2兆8,000億円)で、これは2021年第3四半期より約48%増加している。TSMCの業績は、他の半導体企業とは異なっているようだ。ちょうど、AMDが11億米ドル(1,600億円)の収益悪化を発表し、Kioxiaは先週、3D NANDウェーハの減産を決定したように、業界全体としては低調な中、TSMCは増収を発表している。
インフレ率の上昇や地政学的緊張のためにパートナー企業の製品の売上が落ちている中で、TSMCの業績が改善している理由はいくつかある。まず、TSMCはここ数年、特に最先端ノードに関してはシェアを拡大することに成功している。第二に、同社は他の受託チップメーカーをリードしているため、価格を上げることができ、収益を上げることが出来る。
2022年第3四半期は、チップの受託メーカーであるTSMCが上位顧客の複数の注目製品の生産を増強したこともあり、好調であった。特に、TSMCはAMDのデスクトップおよびサーバー向けZen 4ベースの最新プロセッサーの生産を増強し、RDNA 3アーキテクチャを採用した同社の次世代GPUの生産を開始したと推定される。また、AppleのPC向けM2システムオンチップ、スマートフォン向けA15 BionicおよびA16 Bionic SoCの生産も増強している。最後に、TSMCはNVIDIAのAda Lovelaceグラフィックス・プロセッサとHopper GH100コンピュートGPUの製造を開始した。これらの製品はすべて、かなり高価な最先端ノード(N4、N5、4Nなど)を使用しており、消費者向けチップの需要が低下している中で、TSMCが収益を伸ばすことができた理由はここにあるのだろう。
しかし、TSMCがシェアを伸ばしており、2、3年前に比べて市場の大きな部分を支配しているものの、投資家は、需要の低下によりAMDなどのファブレスチップ設計者が注文を削減するため、今後数ヶ月で収益低下の可能性を懸念しており、同社の資本金は今年29%下落したとBloombergは報じている。
TSMCに対する投資家の懸念を高めるもう1つの要因は、同社が台湾と海外(米国と日本)で行っている新規設備への投資だ。モルガン・スタンレーのアナリストは、チップの需要は2023年後半に再び増加すると考えている。これはTSMCの新しい生産能力が稼働する前だが、投資家は依然として同社のマージンを懸念している。
「TSMCは顧客の多様化する要求に応え、SamsungやIntelとの競争激化に立ち向かうため、当面は米国と日本を中心に海外の生産能力拡大が前面に押し出されるだろう。減価償却費や材料費の急激な上昇と、スマートフォン需要の不確実性の高まりが相まって、同社の売上総利益率に上限を設けている。」とBloomberg Intelligenceのアナリスト、チャールズ・シャム(Charles Shum)氏は顧客向けメモに記している。
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