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先日発表された、QualcommSnapdragon 8 Gen 2や、MediaTekDimensity 9200は、搭載されたGPUによって、モバイルハードウェアレイトレーシングに対応する事が明らかになっており、これによってモバイルプラットフォームにおけるゲームグラフィックの更なる飛躍が期待されている。だが、肝心のiPhoneにおいてはその手の話題はなく、同社はいつもの通り保守的に他社の出方をうかがってから、満を持して優れた物を出そうと考えているのかと思われたが、実態はそうではなかった。

The Informationによる独占的なレポートでは、同社の「致命的なエンジニアリング上の失敗」により、ハードウェアレイトレーシング機能を搭載する革新的なGPUの採用が中止されたとのことだ。

A16 Bionic GPU は、AnTuTu において A15 Bionic に搭載されているユニットと比較して約 28% の性能向上を示しているが、The Information によれば、初期のバージョンはもっと優れていたかもしれないとのことだ。本来この新しいGPUは、ハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングなどの高度な機能をサポートしていたはずだという。

レポートによると、エンジニアは「新しい機能を追加することに野心的過ぎた」ようで、A16のプロトタイプはエンジニアリング設計のミスにより、シミュレーションで予想されたよりもはるかに高い消費電力になってしまい、バッテリー消費に大きな影響を与えること、発熱が多すぎて処理しきれなくなってしまった。そしてこの欠陥が判明したのは開発の後半の時点とのことで、結果として、iPhone 14 Proのラインアップには採用されなかったという。

それもあって、9月のiPhone発表の席で、これまで例年行っていた新しいチップの性能向上を高らかに宣伝する事を珍しくせず、GPUのメモリ帯域幅が50%向上したことに簡単に言及しただけに留まっていたようだ。これについて当時は、Appleは路線を変更したのでは?などの意見も聞かれたが、蓋を開けてみれば、開発に失敗したのであまり触れたくなかっただけという恥ずかしい舞台裏があったようだ。

この事件は、Appleのチップ設計の歴史において前例のないもので、iPhone 14 Proが、前世代のiPhoneによる飛躍と比較して、グラフィックス性能でわずかな改善しか見られない理由の原因であると伝えられている。このミスにより、Appleはグラフィックプロセッサチームを再編し、一部のマネージャーをプロジェクトから離脱させることになったという。

なぜこういった事態が行ったのかについて、The Informationではより大きな問題を指摘している。それは、Appleのチップ開発部門内部における相次ぐ人材流出だ。同誌は、ここ数年、Appleのトップチップエンジニアの多くが同社を去っていることを指摘している。

例えば、CPUのトップデザイナーであるGerard Williams III氏は、2019年に退社し、他社のエンジニアと共に、チップ設計のスタートアップNuviaを設立した。(Nuviaはその後Qualcommに買収され、打倒Appleシリコンに向けて作業を行っている)Appleは彼の後任にMike Filippo氏を据えたが、そのFilippo氏も今年初めに退社してMicrosoftに入社したと言われている。それ以来、Appleは後任を指名していない。

なぜ彼らがAppleを去ったのかは不明だが、The Informationのレポートの中では、Appleのチップ部門における従業員定着率の問題について、非常に長い労働時間と多すぎる仕事量によるストレスを挙げている。

加えて、Appleは上記のNuviaやRivosと言ったスタートアップとの間で係争の真っ最中だという。Appleは、これらスタートアップが同社から数十人のエンジニアを引き抜き、Appleからチップ設計に関する極秘情報を盗み出したとしている。NuviaとRivosとの間で進行中の訴訟について深く掘り下げたThe Informationのレポート全文はこちらからお読み頂ける(有料)。


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