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ハッブル宇宙望遠鏡は、その輝かしい後継機であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の最近の話題に隠れてしまっているが、それでも未だ現役であり、素晴らしい成果を上げ続けている素晴らしい望遠鏡だ。だが、そんな名選手も、近年はご近所さんによる光害に悩まされ、思ったような成果が上げられないようになっているらしい。

近年、人類文明の進歩に伴い夜が明るくなり、地上の望遠鏡による天体観測が難しくなっている事は以前お伝えしたが、ハッブル望遠鏡が撮影した画像も、1990年の打ち上げ以来、急激に増加した軌道上の衛星によって汚染されていることが、『Nature Astronomy』誌に掲載された新しい研究によって明らかになったのだ。

「我々はこの問題と共に生きていくことになる」と、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者で、この研究には参加していないJonathan McDowell氏はThe New York Times紙に語っている。

「できない科学もあるでしょう。実現するために著しくコストがかかる科学もあるでしょう。私たちが見逃してしまうこともあるでしょう」

大きな原因

天体観測に影響を与える衛星の多くは、民間企業によって打ち上げられる。中でも、最も怒りを買っているのはSpaceXのもので、同社のStarlink衛星は、空に明るく直線的な形を描くことで有名だ。

2009年から2020年まで、ハッブルの画像に衛星が写る確率は3.7パーセントにとどまっていた。しかし、わずか1年後の2021年には、その数字が5.9%に劇的に上昇した。その原因は、当然ながら、その間に打ち上げられた多くのStarlink衛星にある。 調査の切り口となった2021年以降、軌道上にあるStarlink衛星の量は2倍以上の3,500基以上に増えている。

天文学者がStarlink衛星が地上の望遠鏡を妨害していると非難したとき、SpaceXの創業者でCEOのElon Musk氏は、「望遠鏡を軌道に移せばいい」と提案した

しかし、Musk氏の提案自体も問題の解決にはならないことが明らかになったわけだ。ハッブルは、明らかに、常に地球上550kmを超える軌道上にあり、そこですら影響を受けているとしたら、世界中の天文学者は、Starlinkの衛星に対応するために、どこまで行かなければならないのか。

「望遠鏡を宇宙に置くだけでなく、混雑地帯よりも上に置く必要がある」と、McDowell氏は述べている。

NASAの広報担当者はThe New York Times紙に、「現在、干渉はわずかで、ほとんどの場合、標準的なデータ削減技術を使って容易に除去でき、影響を受けた画像の大部分はまだ使用可能です」と述べている。

しかし、今後数年のうちに、この状況はほぼ確実に変化していくだろう。本研究では、2030年代には地球を取り囲む衛星が最大で10万個になると推定している。Starlinkは、軌道上で42,000個に達することを目標としているのだ。

「ハッブル望遠鏡が役に立たなくなるのはいつなのでしょうか」と、研究の共著者である欧州宇宙機関の天文学者、Mark McCaughrean氏は尋ねた。「10年、20年先の話かもしれませんが、“これ以上悩まないでおこう”という時期が来ることは、想像に難くありません」


論文

参考文献

研究の要旨

近年、地球周回低軌道衛星群の打ち上げにより、地上望遠鏡による天体観測に対する脅威が高まっており、天文学界は警戒を強めている。人工衛星の影響を受けた観測は、科学研究に使えなくなる可能性があり、高価なインフラや緩和努力に研究予算の何割かを浪費している。今回、ハッブル宇宙望遠鏡による地球低軌道からの観測において、人工衛星の影響を初めて測定したことを報告する。市民科学プロジェクト(www.asteroidhunter.org)のボランティアと深層学習アルゴリズムの助けを借りて、2002年から2021年にかけて撮影されたハッブル宇宙望遠鏡の画像のアーカイブをスキャンした。我々は、典型的な露光時間11分の個々の露光の2.7%の割合で衛星が横切っていること、画像内の衛星トレイルの割合が時間と共に増加することを発見した。この割合は、視野の大きさ、露光時間、使用するフィルター、ポインティングに依存する。現在計画されている人工衛星の数が増えているため、ハッブル宇宙望遠鏡の画像に衛星が横切る割合は今後10年間で増加すると考えられ、さらに綿密な調査と監視が必要だ。

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