メモリー・チップ大手Samsungは、まったく新しいタイプのDRAMフォーム・ファクターである、「LPCAMM(Low Power Compression Attached Memory Module)」フォームファクターのDRAMチップを世界で初めて発表した。これらのDRAMモジュールは、より小さなサイズでより高速な性能を提供する。
LPCAMMメモリー・モジュール、高速化と省スペース化でノートパソコン業界に旋風を巻き起こすか
LPDDR(Low Power DDR)メモリは、PCノートPCの消費電力を削減する上で極めて重要な役割を果たしてきたものの、モバイルに特化したこのメモリの欠点は、常にその厳しいシグナリングと電力供給要件だった。電力消費を最小限に抑え、クロックスピードを最大化するために、ホストCPUの近くに配置されるように設計されたLPDDRメモリは、従来のDIMMやSO-DIMMでの使用には適しておらず、その代わりに、あらかじめデバイスにはんだ付けしておく必要があった。しかし、はんだ付けされたLPDDRメモリの時代は間もなく終わりを告げそうだ。
LPCAMMは、リムーバブル・モバイル・メモリー向けに近々発表されるCAMM(Compression Attached Memory Module)規格のLPDDRバージョンと位置づけられており、SamsungはLPDDRメモリーに同じスタイルの圧縮コネクター・インターフェースを採用することにした。その結果、CAMMスタイルのコネクターで使用される、より厳密な仕様と短いトレース長のおかげで、Samsungによれば、ついにモジュール式でスワップ可能なLPDDR5メモリーを実現することが可能になった。しかも、従来のSO-DIMMセットアップが占有するスペースの何分の一かに収まるという。
CAMMフォーマットは、JEDECがまだ標準規格を承認していないため、まだほとんど軌道に乗っていないが、SamsungはLPDDRメモリに焦点を当てることで、CAMMとは異なることを行うというアイデアを実行に移そうとしている。しかし、LPCAMMのフォーム・ファクターはCAMMと物理的にも電気的にも互換性がないため、名称や圧縮コネクターの使用は似ているが、両者に互換性はない。しかし、両者はそれぞれのメモリ・タイプで同じアイデアを追求している。
LPCAMMはすでにSamsungで2024年の商用リリースに向けて開発が進められているようだ。
LPCAMM | CAMM | SO-DIMM | はんだ付け | |
---|---|---|---|---|
メモリの種類 | LPDDR5 | DDR5 | DDR5 | LPDDR5 |
最大公式データレート | 7500MT/秒 | 6400MT/秒? | 6400MT/秒 | 8533MT/秒 |
現在の最大容量 | 128GB(予定) | 128GB | 192GB (48GB×4) | 32GB (64ビットバスあたり) |
バス幅 | 128ビット | 128ビット | 64ビット | 可変 |
寸法 | 78mm×23mm | ? | 67.6mm×30mm | 可変 |
LPCAMMでは、Samsungは4つのx32 LPDDR5Xメモリ・パッケージを圧縮コネクタの上に直接配置し、1つのメモリ・モジュールで128ビットのメモリ・バスを実現している。Samsungは反対側の写真やレンダリング画像を提供してくれなかったが、基本的に反対側にはすべての信号パッドがあり、フルサイズのCAMMモジュールのコネクタ部分に似ていると聞いている。
重要なのは、LPDDR5Xチップがコネクタの真上にあるため、ホスト・メモリ・コントローラとメモリ・チップ間の信号の移動距離が最小限に抑えられることだ。この距離を短縮したCAMMでさえ、コネクタから遠くのメモリチップまで、信号がモジュールに沿って移動するのにある程度の距離が必要だった。言い換えれば、Samsungは実質的にLPDDRメモリ用のソケット・フォーム・ファクタを作り、チップとマザーボードの間に必要最小限のトランスの長さとPCBだけを配置したのである。
モジュール自体のサイズは78mm x 23mmだ。LPCAMMモジュールに搭載される電子回路は、DRAMパッケージの他にSPDとパワーマネージメントIC(PMIC)のみである。CAMM規格のように、モジュールは独自の電圧レギュレーションと識別を行うことが出来る。これらの部品はシグナル・インテグリティにそれほど敏感ではなく、それなりにスペースを取るため、LPCAMMのコネクタ部分からオフセットされている。
第一世代のLPCAMMモジュールについて、Samsungは容量32GB、64GB、128GB、データレート最大LPDDR5X-7500を検討している。Samsungのカタログには現在、256Gbit LPDDR5Xメモリ・モジュールが掲載されていないため、同社がLPCAMMに8枚のモジュールを搭載する方法を持っているか、あるいはLPCAMMが来年出荷されるまでに、より大きなメモリ・モジュールを導入するつもりである可能性が高い。
Samsungによると、LPCAMMはすでに無名のIntelプラットフォーム(発表のタイミングからして、ほぼ間違いなくRaptor Lakeモバイル)で検証済みだという。LPCAMMはベンダーに依存するものではなく、もしこのフォームファクターが成功すれば、ノートPCメーカーがAMDの設計にLPCAMMを採用しても不思議ではない。
今のところSamsungは、LPCAMMがサイズや性能に関してはんだ付けLPDDR5Xメモリと比較してどうなのかについては言及していない。それ以外では、SO-DIMMの代替品として、SamsungはLPDDR5X LPCAMMがDDR5 SO-DIMMの40%のスペースしか占有せず、電力効率を最大70%改善し、LPDDR5XのLPDDR5に対する一般的な利点とほぼ一致するとしている。
しかし、この新しい柔軟性をもってしても、LPCAMMがはんだ付けLPDDRメモリに取って代わるとは考えない方が良いだろう。はんだ付けソリューションの認定速度が高いことに加え、LPCAMMははんだ付けソリューションのフットプリントの小ささにはかなわない。実装コストによっては、LPCAMMはマザーボード上のはんだ付けメモリに取って代わるかもしれないが、ウルトラポータブル機器はスペースと効率を最大化するために、パッケージ上のはんだ付けメモリを採用する傾向が強まるだろう。
標準化に関しては、Samsungはパートナーと協力してLPCAMMのJEDEC標準化を目指しているという。一方、JEDECは3月に、DDR5とLPDDR5の両方に同じコネクターを使用し、LPDDRメモリーをカバーするためにCAMM規格の拡張にも取り組んでいると発表した。現時点では、このグループからこれ以上の情報は得られておらず、CAMM規格が批准されない限り、JEDECがLPDDRの提案をまだ進めているかどうかは不明だ。最終的には、標準化がどのように進むかによって、LPDDRメモリにCAMMスタイルのライバル規格が登場するかもしれない。
最後に、LPCAMM(およびCAMM)については、今後数カ月、特にLPCAMMが最終的に標準化されるにつれて、さらに多くの情報が得られると思われる。すべてが計画通りに進めば、Samsungは2024年にLPCAMMを製品化し、Intelの次世代プラットフォーム「Meteor Lake」ベースのシステムに搭載する予定だ。
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