NVIDIAはすでにPC向けディスクリート・グラフィックス・プロセッサーの約80%を占め、AIやHPC向けGPU市場も独占状態だ。しかし、同社の野望はそれに留まらない。Reutersの新たな報道によると、NVIDIAが、早ければ2025年にもWindowsに対応するクライアントPC用プロセッサ市場に参入するようだ。
この動きは、ArmベースのWindows PC用プロセッサでAppleに挑戦するという、Microsoftの広範な目標の一環である。調査会社IDCの第3四半期速報データによると、iPhoneメーカーは3年前にArmベースのAppleシリコンを発表して以来、市場シェアをほぼ倍増させている。同社の自社製Mac用チップは、性能(オンチップのAIタスクを含む)とバッテリー駆動時間のバランスが優れているのだ。
AMDもまた、早ければ2025年にもArmベースのPCチップを発売する準備を進めていると報じられている。この2社は、2016年からWindowsノートPC用プロセッサを製造しているQualcommに加わることになる。Reutersの報道によると、クQualcommとMicrosoftのArmベースのWindowsチップ設計に関する独占契約が2024年に終了することで、新たな挑戦者に門戸が開かれることになるのだ。そしてこれまでArmベースのWindowsは、大成功を収めてきたわけではない。
AMDとNVIDIAがArmベースのCPUを提供するという決定は、AppleがMacコンピュータで使用しているArmベースのシステムオンチップに対してより効果的に競争することを目指し、Windows PC向けにArmベースのプロセッサを強化するというMicrosoftの広範なイニシアチブと協力する戦略的な動きとなるだろう。
Microsoftの関与は極めて重要で、PC業界におけるArmベースのプロセッサーの開発と採用を奨励し、促進することを目的としている。この奨励は、主にIntelが所有する確立されたx86アーキテクチャーを超えて、プロセッサーのエコシステムを多様化するという戦略的ビジョンから生じている。また、Microsoftの計画は、AppleのArmベースのカスタムチップによって実証された効率性とパフォーマンスによって、Macコンピュータのバッテリー寿命と全体的なパフォーマンスが大幅に改善されたことも動機となっているようだ。
D2D AdvisoryのCEO Jay Goldberg氏はReutersとのインタビューで、「Microsoftは90年代から、再びIntelに依存したくない、単一のベンダーに依存したくないということを学んだ。ArmがPC(チップ)分野で本格的に軌道に乗れば、Qualcommを単独サプライヤーにすることはないだろう」と語っている。
NVIDIAはすでに2010年代半ばにTegra製品でタブレットやスマートフォンへの対応を試みている(しかし、ほとんど失敗している)ため、NVIDIAがPC向けCPUの分野に参入することは、予想外というわけではないが、NVIDIAにとって重要な拡大である。一方、NVIDIAがデータセンター向けArmベースSoCに精通していることから、同社が一般的なデスクトップやラップトップからワークステーションまで、幅広いコンピューターに対応すると期待するのは妥当だろう。
ArmベースのPC向けCPU市場への再参入は、競争上・技術上の課題がないわけではない。AMDとNVIDIAは、それぞれ2016年と2020年からノートパソコン向けにArmベースのチップを生産しているAppleやQualcommといった既存のプレーヤーと競合することになる。
一方、この取り組みで成功するには、かなりの技術的障壁を克服する必要がある。重要な課題は、PC向けソフトウェア開発の定番となっているx86コンピューティング・アーキテクチャへの既存の多額の投資にある。ArmベースのCPUに移行するには、互換性の問題に対処する必要がある。x86チップ用に開発されたコードはArm ISAでは直接動作しないため、x86からArmにソフトウェアを移植する必要がある。
また、MicrosoftとQualcommの関係も終わったわけではない、火曜日には、Qualcommはハワイで年次技術サミットを開催する。Qualcommはすでに、このサミットでArmベースの次期Windows PC向けCPU「Snapdragon X Series」の詳細を正式に発表することを明らかにしており、既に新たな「Snapdragon X Elite」チップの情報もリークされ、Appleシリコンに対抗しうる新たなSoCの登場を予感させる。Reutersによると、Microsoft社のWindowsおよびデバイス担当バイスプレジデントであるPavan Davuluri氏もQualcomm のSnapdragon Summitに出席する予定だ。
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