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コンピューターの性能が100万倍に?驚異的な処理速度の実現に繋がる新たな光論理ゲートが開発

これまでのクロック周波数の記録は、AMDのCPUをオーバークロックした事で達成した8.429GHzが世界記録となっているが、今回、米国のロチェスター大学とドイツのエアランゲン=ニュルンベルク大学(FAU)の研究者グループは、フェムト秒(1000兆分の1)レベルという驚くべき短い時間で動作する初の論理ゲートを開発したことを発表した。これは、PHz(ペタヘルツ)レベルの周波数で情報処理を行う時代の到来を告げるもので、現在のGHz(ギガヘルツ)スケールコンピュータの100万倍もの速さを実現する可能性があるという。

光波エレクトロニクスを用いた、全く新しい論理ゲート

今回発表された論理ゲートは、光波エレクトロニクス(基本的には、光フィールドで電子をシャッフルする)の応用であり、現実と仮想の両方の電荷キャリアを利用するものとのことだ。光波エレクトロニクスでは、レーザー光を用いて物質中の電子の動きを誘導し、この制御を利用して電子回路素子を作成する。FAUのPeter Hommelhoff教授の研究室に所属するレーザー物理学者で、『Nature』誌にこの新しいゲートに関する論文を発表したTobias Boolakee氏は、以下のように語っている。

光は非常に速く振動するので(1秒間におよそ数億回)、光を使えば、コンピューターチップと比較して、電子機器の速度をおよそ1万分の1まで高めることができます。今回の研究によって、私たちは、光電界駆動型論理ゲート(あらゆるコンピュータ・アーキテクチャの基本的構成要素)のアイデアを初めて提案し、その動作原理を実験的に実証することができました。

この研究で、Boolakee氏らは、2つの金電極に接続されたグラフェンベースの極小ワイヤーを用意し、数十フェムト秒(10-15秒)のレーザーパルスを照射させた。このレーザーパルスは、グラフェン中の電子を励起(運動)させ、特定の方向に伝搬させるため、正味電流を発生させることができるという。

仮想電荷キャリアと実電荷キャリア

FAUとロチェスター大学の研究者たちは、過去10年にわたって光波エレクトロニクスの研究を行っており、今回の研究では、金とグラフェンの接合部を励起すると、仮想電荷キャリアおよび実電荷キャリアという2種類の電子電荷キャリアが励起されるという最近の発見を利用した。研究者らは、仮想キャリアはレーザーパルスが照射されている間だけ純方向の動きをするため、一過性のものであると説明している。したがって、正味電流に対する仮想キャリアの寄与は、光励起中に測定する必要がある。

研究者らは、グラフェンに取り付けられた金電極の仮想キャリアによって引き起こされる正味の分極を調べることによって、この測定を実行した。一方、実電荷キャリアは、レーザーパルスを消した後も望ましい方向に伝搬し続けるため、光励起が終了した後も、正味電流への寄与を測定することができる。

研究者らは、レーザーパルスの形状を変えることで、実電荷キャリアのみ、または仮想電荷キャリアのみが関与する電流を生成できることを発見し、その測定結果は「驚くべきもの」であったという。このように2種類の電荷キャリアを制御することで、フェムト秒というのごく短い時間スケールで動作する論理ゲートを初めて作ることができたのだ。

論理ゲートの動作

新しい論理ゲートの基本的な考え方は、2つのバイナリ信号(コンピューターロジックで標準的に用いられる0と1)を、2つの数サイクルのレーザーパルスの形、すなわち「キャリアエンベロープ」位相で符号化することだと、Hommelhoff教授は説明する。この2つのレーザーパルスが金-グラフェンヘテロ構造と相互作用すると、それぞれのレーザーパルスが超高速電流パルスを発生させる。つまり、2つのレーザーパルスから、加算または相殺される2つの電流パルスを発生させることができるのである。

Hommelhoff教授は、「金電極の1つで測定された電流のレベルから、バイナリ信号(0または1)が得られます」とPhysics World誌に語っている。「論理演算のタイムスケールは、基本的に、2つの電流パルスのターンオン時間によって制限されます。これは、レーザーパルスの周波数によって駆動される根本的な量子力学的メカニズムによって本質的に与えられます。」

彼らの実験で使われたパラメーターで、ロチェスター-FAUチームは、駆動光周波数での彼らの論理ゲートのバンド幅の上限を、0.36PHz、等価で2.8fs(フェムト秒)と予想している。

研究者たちは、少なくとも現時点では、この新しいゲートの直接的な応用については躊躇しているが、次のステップは、従来の電子機器よりもはるかに高速な時間スケールで動作することを証明することだという。 「我々は、これが事実であることに自信を持っていますが、複雑な論理を形成するために、より多くのゲートに我々のシステムをスケールアップすることは、はるかに困難な課題となるでしょう。まずは、高速性を維持する方法を見つける必要があります。」とBlolakee氏は語っている。

このゲートを実際の機器に組み込むには、システムを現在よりはるかに小型化する必要があるとのことだ。これは、レーザーの焦点を実際の駆動レーザーパルスの波長(約800 nm)よりも小さくすることができないという事実を回避するために、近接場光学方式を利用することを意味する。

「最後に、今回使用したレーザーパルスは非常に強力である必要があり、これもスケールアップを困難にするポイントです」とHommelhoff教授は語っている。「この原理実証を新しい技術に発展させるためには、基礎研究だけでなく応用研究も必要です。しかし、少なくとも、新しい論理ゲートの実証という最初の一歩を踏み出すことができたのです」

まだまだ基礎研究の段階ではあるが、新たな光コンピューティングの幕開けとなる大きな研究の成果だと言えるだろう。

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