NASAは、ILLUMA-T(統合レーザー通信リレー実証低軌道ユーザー・モデム・アンプ端末)により、宇宙ミッションにおけるレーザー通信の可能性を実証する準備を進めている。
11月初旬にSpaceX社のFalcon 9ロケットで打ち上げられる予定のILLUMA-Tプロジェクトは、国際宇宙ステーション(ISS)でNASA初の双方向エンド・ツー・エンドのレーザー通信リレーを完成させる。
NASAの宇宙通信・航法(SCaN)プログラムによって管理されるこのプロジェクトは、2021年12月に打ち上げられるレーザー通信リレー実証(LCRD)と並行して運用される。
LCRDは静止軌道にあり、レーザー信号に対する大気条件の影響を研究し、ネットワーク能力をテストし、ナビゲーション能力を向上させる実験を行う。
ILLUMA-Tの最も注目すべき点のひとつは、望遠鏡と2軸ジンバルを含む光学モジュールで、地軸軌道上のLCRD衛星を正確に追跡する。その高度な能力にもかかわらず、光学モジュールは電子レンジほどの大きさしかなく、ILLUMA-Tのペイロード全体は標準的な冷蔵庫に似ている。
ILLUMA-Tは、毎秒1.2ギガビットという驚異的な速度で宇宙ステーションからLCRDにデータを中継し、その後、カリフォルニアまたはハワイの光学地上局に送られる。その後、データはニューメキシコ州のLCRDミッションオペレーションセンターに送られ、メリーランド州のNASAゴダード宇宙飛行センターのILLUMA-T地上運用チームに送られ、送信後の正確さと品質が評価される。
ILLUMA-Tの副プロジェクトマネージャーであるMatt Magsamen氏は声明の中で、「LCRDはレーザーシステムをテストし改良する実験を積極的に行っており、我々は宇宙通信能力を次のステップに進め、この2つのペイロード間のコラボレーションの成功を見守ることを楽しみにしています」と、述べている。
通信のための大きな飛躍
ILLUMA-Tが成功すれば、ISSの運用の一部となり、NASAが宇宙からデータを送信する方法に革命をもたらす可能性がある。従来、宇宙ステーションは、地球との通信を維持するために無線周波数の中継衛星に頼ってきたが、レーザー通信は、映画1本分を1分以内に転送できるほど、はるかに高速な伝送速度を提供する。
軌道を周回するISSは、1998年に完成して以来、宇宙ステーションと地上アンテナとの回線を同時に維持する中継衛星に頼らざるを得なかった。ILLUMA-Tが提供する強化されたデータ転送速度は、宇宙実験室での実験や調査を行う地上の研究者にとって、画期的なものとなるだろう。
これらの実証実験により、NASAは、Near Space NetworkとDeep Space Networkを含む宇宙通信ネットワークにレーザー通信を統合するつもりである。これにより、従来の無線周波数通信に比べ、ビデオや画像の高速伝送など、レーザーが提供するいくつかの利点を活用することができる。
さらに、無線周波数に比べ、光スペクトルは規制が少ないため、ライセンスを取得する手間が少なくて済むとSpace.comは報じている。NASAは、技術の成熟に伴い、レーザー通信を太陽系全域のユーザーが低リスクで利用できるようにしたいと考えている。
ILLUMA-Tと共にFalcon 9に搭載される他のペイロードには、大気の重力波を分析する赤外線イメージング装置を含むNASAの大気波実験(AWE)と、呼吸器系を覆う粘液が少量の注射液で運ばれる薬物の送達にどのような影響を与えるかを研究するGaucho Lungがある。
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