NASA、1600万kmの超長距離間レーザー通信に成功

masapoco
投稿日
2023年11月21日 14:40
laser beam m

NASAのプシケ(Psyche)探査機は、2023年10月14日に打ち上げられ、火星と木星の間を浮遊する小惑星プシケの探査に挑んでいるが、NASAは今回プシケ探査機に搭載されたDeep Space Optical Communications(DSOC)ツールと呼ばれるレーザー通信機の試験を実行し、これまでにない距離から地球に向けてレーザービームによるメッセージの送信に成功した事を発表した。この実験は、宇宙船の通信方法を変革する可能性をはらんだ画期的なものである。

DSOCは、地球から約1600万キロメートル離れた宇宙空間に位置するプシケ探査機から、近赤外線レーザーを使ってテストデータをエンコードし、カリフォルニアのカリフォルニア工科大学パロマー天文台のヘール望遠鏡に送信を実行した。これは、地球から月までの距離の約40倍に相当する長大なものだ。

DSOCは、プシケ探査機が主要な目標である小惑星プシケへ向かう途中で、2年間の技術実証を行っている。NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、DSOCは11月14日に「ファーストライト」を達成した。これは、そのレーザートランシーバーがJPLのテーブルマウンテン天文台の強力なアップリンクレーザービーコンにロックオンし、DSOCのトランシーバーがカリフォルニア州の天文台にダウンリンクレーザーを照準するための“信じられないほどの”極めて精密な操作によるものだ。

「ファーストライトの達成は、今後数ヶ月のDSOCの重要なマイルストーンのひとつであり、人類の次の大きな飛躍である火星への有人飛行をサポートする科学情報、高解像度画像、ストリーミングビデオを送信できる、より高速なデータレート通信への道を開くものです」と、NASA本部の技術実証担当ディレクター、Trudy Kortes氏は声明で述べた。

光通信は以前から地球軌道からのメッセージ送信に使用されていたが、レーザービームによるこれほどの遠距離通信の成功は初めての事だ。レーザー通信では、光の波の振動にデータを詰め込むことで、大量のデータを前例のない速度で伝送し、赤外線(人間には見えない)ビームを介してメッセージを受信機に伝達することが出来る。

NASAは通常、月より遠いミッションとの通信には無線波を使用しているが、レーザービームの利点は、はるかに多くのデータをはるかに狭い波に詰め込むことができることだ。NASAによると、DSOCの技術実証は、現在の最高の無線通信システムよりも10〜100倍の伝送速度を示すことを目指しているという。

より多くのデータを伝送することにより、将来のミッションはより高解像度の科学機器を搭載することができ、深宇宙ミッションでのより高速な通信が可能になる。例えば、火星の表面からのライブストリーミングなどが可能になるかも知れない。

NASAの宇宙通信・航法プログラムの先進通信・航法技術部門の責任者であるJason Mitchell博士は、「光通信は、宇宙ミッションに常に多くのものを求める科学者や研究者にとっての恩恵であり、人類による深宇宙探査を可能にします。より多くのデータは、より多くの発見を意味します」と、述べている。

しかし、まずはいくつかの課題をテストする必要もある。レーザー通信では、移動する距離が長くなるほど、レーザービームを正確に指向することが難しくなる。また、光子の信号は弱くなり、目的地に到達するまでに時間がかかり、最終的には通信に遅延が生じることにもなるからだ。

11月14日のテストでは、光子はプシケ探査機から地球まで約50秒かかった。プシケ探査機が目標となる小惑星プシケに到達すると、この時間は約20分を要することになる。これだけ離れていれば、レーザーを発射してから後も、地球と宇宙船の両方が移動する事も考慮しなければならず、両方のレーザーはこの位置の変化に対応する必要がある。

これまでのところ、この画期的な技術実証は非常に成功している。JPLのDSOCオペレーションリードであるMeera Srinivasan氏は、「このテストは、地上資産と飛行トランシーバーを完全に組み込んだ最初のものであり、DSOCとPsycheのオペレーションチームが連携して作業する必要がありました。これは大きな挑戦であり、まだ多くの作業が残っていますが、短時間ですが、データの送受信とデコードに成功しました」と述べている。

JPLのDSOCプロジェクトテクノロジストであるAbi Biswas氏は、「深宇宙から光のビットを交換することができました」と述べています。これは宇宙探査における通信の将来を変えるかもしれないゲームチェンジャーとなるだろう。


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