Intelは、最新の量子チップである12量子ビットチップ「Tunnel Falls」のリリースを発表した。このチップは、量子研究コミュニティに提供されるとしている。
この新しいチップを発売する以外にも、同社はメリーランド大学カレッジパークの物理科学研究所(LPS)と提携し、量子コンピューティングの分野の研究を進めるためにQubit Collaboratory(LQC)を設立することを発表した。本日の発表について、Intelの量子ハードウェア担当ディレクターであるJim Clarke氏は、次のように語っている:
「Tunnel Fallsは、Intelがこれまでに開発した最も先進的なシリコンスピン量子ビットチップで、Intelの数十年にわたるトランジスタ設計と製造の専門知識が活かされています。この新しいチップのリリースは、フルスタックの商用量子コンピューティングシステムを構築するというIntelの長期戦略の次のステップとなります。フォールトトレラント量子コンピュータの実現に向けては、まだ根本的な疑問や解決しなければならない課題がありますが、学術界はこの技術を探求し、研究開発を加速させることができるようになりました」。
シリコン量子ドット技術は、実は単電子トランジスタをベースにしているだけなので、半導体メーカーが得意とするところだ。トランジスタのゲートの下に1個の電子が閉じ込められ、その電子はスピンと呼ばれる量子特性を持ち、それが上か下かで量子ビットの0か1を表現するのに使われる。
また、チップ上の個々のゲートの近くにはセンサーデバイスがあり、電子がスピンアップの状態にあるか、スピンダウンの状態にあるかを示している。
Tunnel Fallsはテストチップとして、さまざまな構造を実装し、量子ビット設計のさまざまなスキューを表現している。これらはすべて、1.6ケルビン(摂氏マイナス271度、華氏マイナス456度)に冷やされた冷蔵庫の中で動作する必要がある。
Clarke氏は、Intel社はウェハー全体で95%の歩留まり率を達成し、さらに「非常に低い温度でこれらのデバイスがオンになる際の電圧の均一性は、実際にはCMOSロジックプロセスと非常に似ている」と主張している。また、量子性能はまだ特性評価中だが、「歩留まりと均一性は先進的な(CMOS)プロセスと一致している」と述べている。
Intelは、米陸軍研究局を通じてLQCと協力し、研究所にチップを提供するという。Intelと協力する研究所には、LPS、サンディア国立研究所、ロチェスター大学、ウィスコンシン大学マディソン校が含まれる予定だ。
学術機関にはTunnel Fallsチップを作製する能力がないため、研究者がすぐに実験や研究に取り掛かれるように、Intelが作製する。このチップは300ミリウェハーで製造され、極端紫外線リソグラフィー(EUV)、ゲートおよびコンタクト処理技術などの先進的な機能を活用している。
同社は、Tunnel Fallsの性能を向上させ、Intel Quantum SDKで完全な量子スタックに統合することを検討しているという。次世代量子チップの開発も始まっており、来年にはリリースしたいとしている。また、コラボレーション・パートナーの拡大も計画している。
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