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初代iPhoneが登場した際、前面に大きくガラスのディスプレイを採用したそのデザインに、まずは傷の心配をした物だが、それと同時に大きく取り上げられたのがCorning社のGorilla Glassの採用であり、これによって、傷に強く割れにくいガラスの存在が広く世間に認知されたのも確かだろう。

だが、現代のスマートフォンに採用されているガラスももちろん無敵というわけではなく、裸運用ではいつの間にか細かな傷が付いてしまうのは否めない。最強のガラスを追い求め、研究者らは日々努力を続けているが、ドイツのバイロイト大学が開発した新たなガラス素材はこれまでの強化ガラスを大きく上回る耐久性を備えているようだ。

科学誌『Nature Materials』誌に掲載されたこの研究によると、研究者たちはまず一般的な酸化物ガラスから始めた。これを、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、酸素を含むアルミノケイ酸塩と組み合わせた。高圧力と高温を用いて、研究チームはガラスに準結晶化に基づく新しい構造を与えることに成功した。

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Hu Tang氏とプレス機 (Credit: University Of Bayreuth / Hu Tang)

ガラスは10~15ギガパスカルの圧力下で摂氏1,000度まで加熱された。このような条件下で、アルミノケイ酸塩は結晶のような構造に変化する。一般的なガラスよりも秩序があるが、本当の結晶構造ほど規則的ではないため、準結晶と呼ばれている。アモルファスと結晶の中間みたいなものだ。

ガラスを極度の熱と圧力から解放すると、なんと、準結晶構造がそのまま残ったという。研究者らが測定したところ、このガラスの破壊強度は1.99メガパスカルとのことだ。これは現在市販されている化学強化ガラスを大幅に上回るものである。例えば、Corningの最新の強化ガラスであるGorilla Glass Victusの破壊靱性は0.76メガパスカルである。

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(左)アモルファスガラス、(右)準結晶ガラス。明るい領域はより秩序がある。 (Credit: University Of Bayreuth / Hu Tang)

他のガラスでは、外力によって微細な破損や内部亀裂が生じる。このような応力は、直近の衝撃が比較的弱かったとしても、最終的には破壊につながる。実験用のアルミノケイ酸塩ガラスでは、これらの力は準結晶構造によって吸収される。この構造はガラスをアモルファスで無秩序な状態に戻すために溶解する。しかし、割れることはない。

現在、この材料は同大学のバイエルン実験地球化学・地球物理学研究所の研究室にある小さなサンプルとしてしか存在しない。この製造工程を商業用ガラス製品に必要なレベルまでスケールアップできるかどうかは不明だが、研究チームは挑戦しようとしている。


論文

参考文献

研究の要旨

ガラスは結晶とは異なり、微細構造を制御した強靭化ができないため本質的に脆く、その技術的応用には基本的な制約が生じる。そのため、ガラスが持つ他の有利な特性を損なうことなく強靭化する戦略は、長い間求められてきたが、なかなか実現しなかった。ここでは、アルミノケイ酸塩ガラスを例として、準結晶化を介した酸化物ガラスの卓越した強靭化について報告する。実験と計算モデリングを組み合わせることで、高温高圧条件下での準結晶化の結果として、ガラス構造を貫く結晶様の中距離秩序クラスターが均一に形成されることを実証した。パラ結晶酸化物ガラスは優れた靭性を示し、1.99±0.06MPa m1/2まで達し、我々の知る限り、報告されている他のバルク酸化物ガラスを凌駕している。この卓越した強靭性は、応力によって誘起された準結晶状態から非晶質状態への逆変態により、複数のせん断バンドが励起され、塑性変形特性が明らかになったためと考えられる。この発見は、耐損傷性の高いガラス材料を設計するための有力な戦略を提示するとともに、酸化物ガラスの特性に原子レベルの構造変化が大きく影響していることを強調するものである。

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