世界で最もパワフルなスーパーコンピューターのひとつである「Jupiter」スーパーコンピューターが、まもなくヨーロッパで稼働を開始する。ヨーロッパ初のエクサスケール・スーパーコンピュータであるJupiterは、他のトップ500スーパーコンピュータとは異なり、x86の代わりにArmアーキテクチャを採用している。
エクサスケール・スーパーコンピューターとは、1エクサFLOPS以上の計算が可能なマシンのことだ。FLOP(1秒あたりの浮動小数点演算数)は、スーパーコンピューターの速度をランク付けするための一般的に合意された方法である。トップ500の最新版では、世界で最もパワフルなスーパーコンピューターはすべて1ペタFLOPS以上で動作している。エクサFLOPSは1,000ペタFLOPS(または1018FLOPS)であるが、このような速度を実現したシステムはわずかである。
JupiterはEuropean High-Performance Computing Joint Undertaking (EuroHPC JU)のプロジェクトで、コンピューティング企業のEvidenとParTecと協力してマシンを組み立てている。ヨーロッパ初のエクサスケール・スーパーコンピュータは、ミュンヘンのJülich Supercomputing Centreに設置され、早ければ2024年初頭にも組み立てが開始される予定だ。JUPITERプロジェクトの総事業費は5億ユーロ。コンピュータ本体は2億7,300万ユーロとされている。
JUPITERは、1秒間に10億回の計算を行うヨーロッパ初のシステムとなる。その目的は、複雑なシステムの高精度モデルの開発をサポートすることであり、気候変動、パンデミック、核融合エネルギーなどの分野の問題解決に役立つ可能性がある。もちろん、AIの集中的な利用や大量データの分析も可能になるだろう。
EuroHPCは、ArmアーキテクチャをベースとするSiPearl社のRheaプロセッサを採用することを選択した。世界のトップ10スパコンのほとんどはx86チップを搭載しており、Armを搭載しているのは1台だけである。Arm設計は当初モバイル機器に人気があったが、コンパクトで効率的なコアは、より強力なシステムで使用されるようになった。Appleは最近、すべてのデスクトップとラップトップコンピュータをARMプラットフォームに移行し終え、Qualcommは新しいデスクトップクラスのチップをロードマップに載せている。
Rheaは、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)アプリケーション向けに特別に開発されたArmのNeoverse V1 CPU設計に基づき、72コアを搭載している。DDR5と同様にHBM2e高帯域幅メモリをサポートし、キャッシュは最大160MBという驚異的な性能を誇る。Intelが最近、ドイツで大規模な製造事業を開始し、ヨーロッパでの取り組みを強化したにもかかわらず、このプロジェクトに関われなかったのは興味深い。
このJupiterプロジェクトには、意外な勝者がいる。それがNVIDIAだ。このシステムには、GPUとMellanoxの超高帯域インターコネクトを含むNVIDIAのブースター・モジュールが搭載される。同グループは、どのNVIDIAチップがJupiterに搭載されるかを発表していないが、現行世代のH100はが最もあり得そうだ。
完成すれば、Jupiterはトップ500ランキングの上位にランクインするだろうが、トップを取るのは難しそうだ。現在のトップは、米オークリッジ国立研究所のシステム「Frontier」だ。このAMDベースのシステムは1.1エクサFLOPSの性能を持つ。現在計画中の、カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所に設置される「El Capitan」は、2024年半ばにオンラインになると、2エクサFLOPS以上を実現すると見積もられている。
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