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カメラやプリンタで有名な日本の精密機器メーカーキヤノン(Canon)は、昨年新たな画期的な半導体製造機器であるナノインプリント・リソグラフィ装置(NIL)を発表した。これは、5nm世代の半導体の製造に用いることが可能であり、長らくオランダのASMLが独占してきたリソグラフィ装置市場に挑むものと言われている。

Financial Timesによると、今年、遅くとも来年には最初のNIL製品が顧客の元に届けられるとのことで、キヤノンとしては、市場の熱量が高まっている時期に投入したいと考えているようだ。

このナノインプリント・リソグラフィ技術は15年以上開発が続けられてきたもので、やっと商業化にこぎつけたようだ。ASMLが販売している装置で一般的なリソグラフィ技術で特徴をエッチングするのではなく、ウェハーに刻印を押すことで動作し、ASML製のEUV装置よりも消費電力が90%少ないとされている。また、ASML製のEUV装置よりも“一桁”安く購入出来る点も大きな魅力だ。

ASMLの装置は現代の先端半導体の製造には不可欠なものであり、同社が独占している分野でもあるが、特に最先端のEUV装置などでは1億5000万ドル以上(220億円)と超高額であり、納品までのリードタイムも長い。ただし、キヤノンはこうした最先端のEUV装置を置き換える事は意図していない。

「我々の目的は、EUVからシェアを奪うことではありません。我々のナノインプリント技術は、EUVや他の技術と共存し、業界全体の成長に貢献できると信じています」とキヤノンのオプティカルプロダクツ事業部長の武石洋明氏は語る。

キヤノンは、まずはマイクロプロセッサーよりは単純な3D NANDメモリーチップに注力することで、ニッチを切り開くことができると見込んでいるようだ。ただし、アナリストは懐疑的でもある。

「もしナノインプリント技術が優れた技術であれば、今頃は立ち上がって大量に市場に出回っていると思います」と、調査会社Radio Free Mobileの創設者Richard Windsor氏は指摘する。これはもっともな意見だろう。

こうした懸念の声に対し、こまでの欠陥についてはほぼ解決出来たと、武石氏は述べている。だが、EUVやDUVと競合するためには歩留まりも重要であるとの指摘もある中、武石氏はその点については言及しなかった。

また、NILはDUVとEUVの両方と互換性がないため、新たな技術を顧客に納得させることは中々困難であることもキヤノンは認識している。そのため、最初の納入は控えめなもので試験的なものとなる。同社によれば、レイアウトの大幅な変更は必要ないが、洗浄機やマスク製造用設備などの追加設備が必要になるという。「既存のチップ製造プロセスはEUVに最適化されているため、新しい技術を導入するという点では、さまざまな困難があることは明らかです」と、武石は述べている。

ASMLの製品が輸出規制されている中国に輸出すると言う選択肢も以前はあっただろうが、現在の輸出規制は米国と歩調を合わせるものであり、それも難しいだろう。

キヤノンがこの技術を今後成功させていくためには微細化の成功率を高めることも必要であり、現在の回路幅5nmを超え、最終的には2nmを目指しているようだ。


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