米・コロラド州に本社を置くWilson Aerospace社が航空宇宙大手Boeing社を相手取り、企業秘密の盗用に関して訴訟を起こしたことがReutersの報道により明らかとなった。
Wilson AerospaceとBoeingは、昨年11月に初飛行を果たしたNASAの宇宙船打ち上げシステム(SLS)の開発を共同で行っていたが、その後決別。この件について、Wilson AerospaceはBoeingが自社の知的財産を不正に使用したと主張している。
さらに、Wilson AerospaceはBoeingがその知的財産を悪用し、将来の宇宙飛行士を危険にさらす可能性のある「重大な」安全上の欠陥がある部品を製造したと非難した。
シアトルの連邦裁判所に提出された訴訟書によると、Wilson Aerospaceは2014年から2016年までBoeingと協力関係にあったと述べている。Boeingは、NASAのSLSロケットにエンジンを安全に取り付けるためにWilson Aerospaceと契約を結んでいた。その契約はBoeingによって終了されたが、BoeingはWilsonの知的財産を「完全な指示」を求めることなく使用し続けていたとされている。
問題となった知的財産は「Fluid Fitting Torque Device-3」というツールで、Wilson Aerospace社によれば、Boeing社はこれがSLSロケットの大型コアステージに4つのメインRS-25エンジンを取り付けるために必要だったという。BoeingはWilson Aerospaceの工具の”品質と性能に決定的な欠陥がある“バージョンを製造したとされている。
Wilson Aerospaceは、Boeingがそのソリューションを盗用し、NASAのSLS契約から得られる数十億ドルの収益を保持しようとしたと主張している。「BoeingはWilsonの企業秘密を侵害して数十億ドルの収益を得た」と主張し、Wilson Aerospaceは、Boeingに対して”その結果として得たすべての収益と利益”を引き渡すよう要求している。
Boeingは訴訟の「不正確さ」に対して「精力的に防御」するとしている。Boeingは声明の中で、「訴訟は不正確な情報や脱落が多い」と主張し、「法廷でこれに対して精力的に防御する」と付け加えている。
Wilson Aerospaceは、陪審員裁判を要求している。Wilson社の創業者であるDavid Wilson氏は「Boeingの品質が劣る不揃いの工具がSLSプロジェクトで経験した漏れの原因であり、Boeingのジョイントベンチャーパートナーやライセンシーの機器でも漏れを起こした可能性が高く、ディスカバリーで明らかになる」と主張している。
昨年11月に行われた無人のアルテミスIミッションのデビュー打ち上げではSLSロケットが良好な成績を収めた。しかし、このロケット計画は、予算を大幅に超過するなどの理由で遅延が相次ぎ、批判を受けている。
現在運用中のロケットとしてはSLSロケットが最も強力だが、間もなくSpaceX社の再利用可能な打ち上げシステム「Starship」に追い抜かれるかもしれない。これは、2024年11月に予定されている来年のアルテミスIIミッションから、宇宙飛行士を月へ送り届けるために設計されたロケットである。
さらに、2025年または2026年のArtemis IIIミッションのための宇宙飛行士もこのロケットで打ち上げられる予定である。そのクルーは、改良型月着陸船「Starship」に乗り換え、1972年のアポロ17号以来、人類初の月面に着陸することになるだろう。
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