バックアップとクラウドストレージ企業のBackblazeが、2022年の最新ストレージドライブ統計レポートを公開した。先月同社は、2022年に運用していたハードディスクドライブ(HDD)の故障率について報告したが、今回は、クラウドストレージシステム内のソリッドステートドライブ(SSD)についての報告となる。
Backblazeの前回のレポートでは、同社のプラットフォーム上で顧客データを維持するHDDについての統計が報告されている。同社は2018年の最終四半期にブートドライブ目的でSSDの利用を開始しており、それ以降統計をとり続けている。同社においてはその後、徐々にHDDの利用は減少しており、ブートドライブへのSSD使用率は上昇傾向にあるとのことだ。Backblazeでは、ストレージサーバーの起動以外では、SSDがサーバーからログファイルや一時ファイルを「読み書き、削除」しながら生成すると述べている。
Backblazeがまとめたデータは、昨年と3年分のデータ、および組み込んだSSDのライフタイム統計をカバーしたものとなる。また、最新のレポートでは、過去1年間の温度レベルも紹介している。この分野は以前のレポートでは紹介されておらず、HDDとSSDの温度の違いを見て、現在同じ機能で使用されているHDDよりも、使用されているSSDの方が低い温度で動作しているかどうかを確認することが出来る。よく知られているように、温度はシステム・ストレージや、プロセッサー、グラフィックス・カード、マザーボードなどのコンポーネントの寿命にかなり影響するものだ。
2022年のSSD年間故障率
2022年末、Backblazeは、13の異なるモデルを持つデータストレージサーバーに、起動ドライブ用に2,906台のSSDを組み込んだ。このドライブは、サーバー用途に明示的に利用されるものや “エンタープライズグレード”とされるものと比較すると、一般的には”コンシューマーグレード”と見なされる物だという。コンシューマーグレードSSDの導入は、企業にとっては導入コスト削減を可能とし、また、はるかに高価なドライブよりも頻繁に交換することが容易になると言うメリットがある。
BackblazeのPrincipal Cloud Storageの現アナリストであるAndy Klien氏は、同社が収集したデータについて調査を実施し、その見解を加えている。現在進行中の調査では、過去1年間、3年間、およびドライブの寿命における管理対象SSDモデルの年率故障率(AFR)を調べ、どのSSDが他のSSDよりも長寿命であるか、消費者が判断する材料を提供している。
2022年、Backblazeは13のSSDモデルのうち7つが、1年間故障しなかったことを発見した。しかし、総使用時間についてはまちまちである為、故障に関する定量的な推定は複雑なものになる。DellのSSD(モデルDELLBOSS VD)は、2022年に100K以上の駆動日数で、損失がなかった。モデル名の「BOSS」は、”Boot Optimized Storage Solution”の略だ。PCIe対応のカードに搭載されるM.2 SSDモデルで、Backblazeはそのデザインについて「半分の長さと半分の高さ」と言及している。このカードはサーバーの展開で使用されるもので、ほとんどの人が利用できるものではない。
Seagate BarraCuda 120 SSDとして知られるSeagateの残りの3つのドライブ(モデルZA250CM10003)は、0.73%の最も低い故障率を記録した。しかし、もう1つのモデルであるSeagate BarraCuda SSD(モデルZA250CM10002)は、2022年に1.98%で3つの中で最も高い故障率を示した。最後のドライブはCrucial(モデルCT250MX500SSD1)で、Seagateの2つのドライブの間にあり、AFRは1.04%だった。
2020年から2022年のSSD故障率
分析した3年間(2020年から2022年)で、上記のCrucialブランドのドライブは、2021年にいくつかの故障があったが、2022年には順調に回復している。Backblazeでは、2022年に、サーバーに4つの新モデルを導入したが、今回の分析で紹介できるほどのデータはなかったとのことだ。稼働中の250GBのSeagate SSDは、モデルによって異なる方向に変動している。例えば、モデルZA250CM10003は、使用中のZA250CM10002よりも若いもので、両者の間では、新しいドライブは、後者のドライブよりも約69mW少ない消費電力となっている。これは、アイドル時の電力を最適化する機能を備えているためだ。
SSDの温度と故障率
Klien氏による次の考察では、BackblazeのSSD向けSMART統計の一部として、ドライブの温度に関して述べている。BackblazeのSSD Smart統計は、ドライブの摩耗度、寿命、経年変化によるハンドリングの良さ、経年変化によるドライブの寿命、温度など、様々な属性を調べる。
ドライブの温度は、使用中や時間が経過しても、ある程度一定に保たれることがあるため、彼らが選んだ焦点の1つだ。SMART 194は、ドライブの内部温度を生の値で追跡する。DELLBOSS VD SSDのDellのように、「SMART 194の生値または正規化値」を公表していない企業もあるため、この詳細な分析は完全ではない。そのため、同社が2022年中に情報を収集できた他のSSDドライブをテストした。
各月には、年初の57,015件から2022年末の77,174件まで、平均67,764件の観測を行った。その結果、平均温度は1度だけ変化した(34.4℃から35.4℃、年間の平均温度は34.9℃)。これはBackblazeのHDDとは異なり、同じ期間に評価されたそれらのHDDの平均は29.1℃だった。SSDがHDDよりも低い温度で動作しているように見える理由の1つは、起動ドライブがデータドライブがあるエリアから長い距離離れており、涼しい通路の近くにあるため、データドライブが最初に冷気を受けるからとのことだ。
レポートでは、2022年の全ドライブ(HDDとSSD)の温度変化について考察を続け、20℃から61℃までの変動が計測され、折れ線グラフを作製した。グラフではその形状から「釣鐘曲線」と呼ばれる形が得られた。ハードディスクの温度観測をプロットした際も同様の形状が現れたとのことだ。このデータは故障数が少ないため算出できなかったDell製ドライブを除く、すべてのSSDを対象としている。
SSDの生涯故障率
最後に、同社のSSDの生涯故障率について紹介された。明らかになったのは、2018年から、2022年の生涯故障率は0.89%で終わり、たまたま前年の1.04%よりも低い割合になったということだ。また、まだ限られたデータしかないが、非常に大きな信頼区間がいくつかある事が分かった。それは、それらのドライブモデルのデータ量(ドライブ日数)が限られていることに起因している。例えば、WDCモデル「WD Blue SA510 2.5」のドライブ日数は104日しかない。より多くのデータを蓄積することで、信頼区間はより正確になっていくはずだ。
Source
- Backblaze: The SSD Edition: 2022 Drive Stats Review
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