Adobeは、欧州、英国、米国の規制当局からの「規制上の懸念」を払拭する道筋が見出せないとして、200億ドルを投じてFigmaを買収する計画を断念すると発表した。
AdobeはPhotoshopやIllustrator、Premiere Proなどのクリエイティブスイートで知られており、Figmanは、主にグラフィックデザインを計画し、他の人と共同でスケッチするためのオンラインプラットフォームで急速に成長を遂げている。
Figmaの共同設立者兼CEOであるDylan Field氏は声明の中で、「我々が望んでいた結果ではありませんが、世界中の規制当局と何千時間もの時間をかけて、両社の事業、製品、提供する市場の違いを詳細に説明したにもかかわらず、もはや規制当局による買収承認への道筋は見えません」と述べた。
Adobe会長兼CEOであるShantanu Narayen氏も「AdobeとFigmaは、最近の規制当局の調査結果に強く同意しないが、我々は、独立して前進することがそれぞれの最善の利益であると信じています。AdobeとFigmaは、クリエイティビティと生産性の未来を共同で再定義するというビジョンを共有していましたが、私たちは、パーソナライズされたデジタル体験を通じて世界を変えるという大きな市場機会と使命を生かすために、引き続き有利な立場にあります」と、述べている。
この結果、AdobeはFigma社に契約解除料10億ドル(1,410億円)を支払うことになった。この契約解除料は、買収が規制当局の承認を得られなかった場合、あるいは昨年9月の買収発表から18ヵ月以内に買収が完了しなかった場合に支払われることになっていた。
この買収は、昨年9月に初めて発表された時から製品デザイン、画像編集、イラスト市場に影響を与えるのではないかとの懸念から、常に規制当局の監視の目を集めることになった。
実際の破綻は先月からその兆候が始まっていた。EUの執行機関である欧州委員会は先月、この買収は 「世界市場における競争を著しく低下させる 可能性がある」として、この買収に反対する声明を発表し、英国は11月下旬に、提案されている買収は「技術革新に害を及ぼす」と結論づけ、そのため競争当局(CMA)は詳細な調査を開始することになった。
規制当局は、Adobeがデザイン・ソフトウェア市場をほぼ独占していることを理由に、この買収に反対した。急成長している製品デザイン・プラットフォームであり、現在ではAdobeのライバルであるXDアプリケーションよりも人気があるFigmaを買収することで、規制当局は、Figmaが独立して繁栄することが許されるのであれば今後起こりえる可能性があったイノベーションをAdobeが害することを懸念した。2022年9月に合併が発表されて以来、デザイナーたちは同様の懸念を表明してきたが、Adobeは現在進行中のさまざまな調査を通じて、こうした主張に対して反発してきた。
Adobeは12月14日付の書簡で、綿密な独占禁止法調査の結果、英国の競争市場庁(CMA)が合併を承認するために提案した救済策を拒否した。同局はAdobeに対し、”競争条件を回復する”ために資産、ソースコード、エンジニアの大幅な売却を求めていた。すべての関係者は、12月21日に買収を阻止するCMAの仮決定について協議し、買収を承認するか阻止するかの最終期限は2月25日に設定される予定だった。
今回のAdobeの発表を受けて、欧州委員会もこの合併に関する独占禁止法の調査を取り下げた。
世界中の規制当局は最近、大手ハイテク企業の買収案をより厳しくチェックしている。EUの反トラスト法監視委員会は、Amazonが提案したRoombaメーカーのiRobot社の17億ドルの買収に対して正式に異議を申し立てた。MicrosoftのActivision Blizzardの買収については、Microsoftが『Call of Duty』をXbox独占にしようとしているのではないかと強く懸念し、Xboxと競合するPlayStationの能力に深刻なダメージを与えるのではないかと規制当局と苦戦を強いられた。Microsoftは英国の規制当局に譲歩して買収提案を修正し、買収を成功させている。
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